出来うる限りの準備を済ませて、風呂場から出る。 一度腹を括ってしまえば、あとはあの男に対するどうしようもない苛立ちだけが 気持ちを支配して、その下準備に対する抵抗は薄れた。 暫し迷って、結局浴衣だけを羽織って部屋に向かう。 居間を覗くと、アーチャーの姿があった。 洗い物を終えた所らしく、着けていたエプロンを外している。 「アーチャー。」 声をかける。いつもと変わらない声で。 顔を上げて俺を見たアーチャーに、 「話があるから、あとで部屋に来てくれ。」 それだけ告げて、返事を待たず俺は立ち去った。 さあ、勝負だアーチャー。 絶対に俺は、勝ってみせる。 自室に戻り、そうして待つこと数分。 「話とは何だ、衛宮士郎。」 アーチャーがやってきた。 俺は目線で自分の向かいに座るように促す。 訝しげにしながらもアーチャーは黙ってそれに従う。 すうと息を深く吸い込んで、真っ直ぐに男の目を見て、 「…アーチャー。お前、魔力足りてないだろ。なんで黙ってるんだ。」 俺は前置きもせずに本題に入った。 アーチャーは僅かに眉を動かし、俺を見返す。 否定はしなかった。 「よく、気付いたな。」 そして皮肉げに笑みを浮かべながらそう言った。 それに軽く首を振って、 「気付いたのは遠坂だ。遠坂に言われなければ……俺は気付けなかった。」 正直に伝えると、そうかとアーチャーのあっさりした相槌。 そこまでは予測済みかと一つ溜息を吐く。 「…何も言わずに、消えるつもりだったんだな。」 俺の問いかけにアーチャーは答えない。 それが答えなのだろう。 「還りたいのか、お前。」 重ねて問うと、アーチャーは軽く首を振り、 「いや…あえて言うならばどちらでもないか。 このまま魔力が枯渇して消えるのならば、それはそれで別に構わない。 お前に私を留めることが出来るのならば、残ることに異存もない。」 淡々と感情を込めずに言う。 「…なら、お前が現界するのに必要な魔力を、ちゃんと受け渡すことが出来たら、 自分の意思でお前は残ってくれるんだな。」 俺は最終確認をする。 アーチャー自身に残ろうとする意思がなければ無意味だから。 アーチャーはすっと目を細めると、 「ああ。なんだ、解決策を用意してきたのか?」 ふ、と口を笑みの形に歪めて言ってきた。 「その言葉、忘れるなよ。」 約束を違えるなと、俺は強く念を押した。 ここまで話を進めることが出来たのだから、あとは俺が行動を起こすだけ。 魔力供給の為に、俺はアーチャーをこの身に迎え入れる。 えろ部分 →