「いつまでも、こんな傷、引き摺りたくない」 震える自分の身体を無視して、俺はヤマトに応えた。 躊躇いがちにヤマトの腕に触れていた手を広い背に回す。 これから先、ヤマトと関わっていく覚悟はとっくに決めた。 お互いの気持ちを確認しあって、ただの友達として付き合っていくことは無理だと分かった。 だから早く傷を治してしまいたい。 もう一度深く触れ合うことで、ヤマトとセックスすることで、 本当に記憶に刻まれた傷が癒えるのかは分からない。 でもきっと、この傷を癒せるのは傷を刻んだ本人だけだ。 それに興味もあった。貫かれた時の記憶、熱と痛みだけじゃない、 あの時に微かに感じた妙な痺れ、あれが何だったのか。 「…いいだろう。お前の傷は必ず癒す」 嬉しげなヤマトの声が耳朶を擽る。 途端に気恥ずかしくなって俺はヤマトの肩口に顔を埋めた。 俺は今、立ち尽くしている。 目の前にはキングサイズのベッドと側にナイトテーブル。 誰がどう見ても寝室だ。まるでホテルのように整えられたそこに生活感は無い。 ヤマトは俺をこの部屋へ案内した後、大人しく待っていろという言葉を残してどこかに消えた。 1人になった途端、居た堪れなくなった。 とんでもない選択をしてしまったんじゃないかと今更ながらに思う。 そう、今更だ。逃げることは出来ない。 深呼吸して心を落ち着かせて、とりあえずジャケットを脱ぐことにした。 学校帰りだったので制服のままだ、皺になったり汚れたりしたら困るだろう。 壁のフックにハンガーを見つけて脱いだジャケットをそれに掛けた。 全部脱いだ方がいいことは分かっていたが、流石に下着1枚で待つということには抵抗があって、 結局あとはネクタイを外して壁際にある小さなテーブルの上に置く。 やることが無くなって俺はテーブルに寄りかかって立ちながらヤマトが戻ってくるのを待った。 かち、かち、と時計の針が進む音が静かな部屋に響く。 さっきから心臓の音がばくばくとうるさい。何でこんなことになったんだろうか。 ヤマトの気持ちを知る事ができれば、それだけで良かったはずなのに。 「…ヤマトも物好きだよな、男の俺なんかに」 相手には困らないだろうにとそこまで考えて、 俺は他人のことをどうこう言えない事実に気付いて思わず苦笑いを零した。 結局、俺も他の誰でもなくヤマトのことを好きになったんだと。 あの夜のことが無ければ、まだ自分の気持ちに気付かないままだったのかもしれないけど。 ふ、と1つ吐息をついた所でドアが開く音が耳に届いた。 顔をドアの方へ向けると、部屋に入ってきたのは勿論ヤマトだ。 タオルと何が入っているのか分からないが円柱型の小さな容器を手に持っている。 俺の傍を通り過ぎ、ナイトテーブルへ持ってきていたものを置くと、 徐にジプスのコートを脱ぎ、もう1つあった壁のハンガーに掛けた。 次に無駄に長いネクタイ、手袋を外し、屈んでブーツの紐を緩める。 迷いの無いその動きをぼんやり眺めていると、ヤマトが立ち上がり俺と視線を合わせてきた。 「来い、コウキ」 強いヤマトの声。差し出された手のひら。 目を一度きつく閉じて、長く息を吐いて、俺はその手のひらへ自分の手を重ねた。 手袋越しでない素手の感触が新鮮だ。俺の手よりも少し冷たい。 重なった手をぐっと握りしめられて、そのまま勢いよく引かれる。 ろくな抵抗ができないまま、俺は目の前のベッドに沈んだ。 高級そうなベッドは俺の体重を柔らかく受け止める。 すぐに身体を引っ繰り返されて、仰向けになった俺にヤマトが覆い被さってきた。 「そう身構えるな」 ヤマトが小さく笑いながら俺の顔の輪郭を指でなぞってくる。 「…お前のせいだろ」 これからの行為を考えると、どうしたって緊張で硬くなる俺とは違って、 ヤマトは随分機嫌が良さそうで愉しそうにも見えて、 思わず眉を寄せて不平を零し、視線を逸らした。 すまない、と笑い混じりに軽く謝ってきたヤマトは、 確かめるように俺の額、目尻、頬、鼻先、顎、と順に指先で触れてくる。 くすぐったくなって、ん、と喉を鳴らすと顎を掬い取られた。 親指が意味深に唇を撫でてくる。どうにでもなれと俺は目を閉じて薄く唇を開いた。 直後に柔らかい感触が唇を覆う。薄っすらと目を開けば至近距離にヤマトの顔。 長い睫毛も銀色で綺麗だと思っていると、ヤマトの瞼が開いた。 熱を孕んだヤマトの銀色の目に見つめられて、身体の奥がじんと痺れる。 ぎゅっと再び目を閉じるとヤマトの熱い舌が薄く開いた唇から歯列を割り、口内に潜り込んできた。 「んぁ…、ふ、ぅ…っ」 ぴちゃ、くちゅ、と濡れた音を立てながらヤマトの舌が俺の口内を撫で回す。 口の中の上側をなぞられると身体が小さく跳ねた。ぞくぞくする。 「ん…、口付けは、問題ないようだな」 「は、ぁ…」 唇を合わせたままヤマトが呟く。吐息が濡れた唇に触れてこそばゆい。 口内に溜まった唾液を飲み込むとヤマトの唇がまた重なってきた。 ヤマトの手は、片方は項を撫ぜて、もう片方は頬や耳を撫でてくる。 お互いの舌を擦りあわせて、絡めて。ヤマトの口内へと招きいれられたと思えば甘く噛まれる。 誤魔化せない、気持ちいい。強張っていた身体から力が抜けた。 それを見計らっていたかのように、頬を撫でていたヤマトの手が動いた。 片手で器用に俺のシャツのボタンを外していく。 あっという間にシャツが肌蹴られてヤマトの手のひらが素肌に直に触れた。 冷たさを感じたのは一瞬で、ヤマトと俺の肌の温度が混じって馴染んでいく。 そういえば、あの夜はこんな風に触れられなかったとヤマトに唇を貪られながら思う。 腹から腰、胸、とヤマトの手のひらが俺の肌の上を這い回る。 小さく主張する胸の先端を指先で擦られて、奇妙な感覚に俺は頭を振ってヤマトの唇から逃れて、 胸を弄るヤマトの手を咎めるように、その腕を両手で掴んだ。 「何だ」 「何だ、じゃなくて…、胸は、触らなくていい…っ」 行為を中断されたのが面白くないのか、ヤマトが眉間に皺を寄せて睨んでくる。 俺も負けじと睨んでいると、埒が明かないとでも思ったのか、 ヤマトは唇に意地の悪い笑みを浮かべた後、身体を下へずらして、 項を撫でていた手を俺の腰へと回し、べろりと胸の尖りを舐めてきた。 「っ!!」 息を呑んだ俺を胸元から満足気に見たヤマトは、硬く勃ちあがったそこを何度か舐った後、 唇で挟み、含んで、ちゅ、と吸い付いてきた。 もう片方は俺の手の拘束を無視するように摘んで刺激を与えてくる。 「――っあ、っ!」 軽く歯を立てられ、爪で引っ掻かれた瞬間、どくんと下腹部に熱が集まった。 信じられなくて、ヤマトの腕を掴んでいた両手を上げて、目元と口元を腕で隠した。 胸で感じたという現実に堪らなくなる。 あの夜、初めて他人に、ヤマトに達かされた時よりも恥ずかしい。 ヤマトの身体は俺の脚の間にあって密着している。 衣服越しでも気付かれているだろう、俺の中心が反応してきていることに。 ふと我に返って、俺は顔を隠したまま訴えた。 「ヤ、ヤマト…、服、汚れる…っ」 流石に脱がしてくれとは言えず、切羽詰った声を上げた俺を見てヤマトは軽く首を傾げた後、 「そうか、制服だったな」 そう言って手を止めてくれた。 ヤマトに促されて身体を浮かした俺から手際よくシャツを剥ぎ取り、 続けてズボンのボタンを外しファスナーを下げられる。 俺は身体を起こして靴を脱いでベッドの下に落とした。靴下もついでに脱ぎ捨てる。 それを見届けた後ヤマトは俺のズボンと下着を一緒に脚から引き抜いた。 これで俺は全裸だ。ヤマトの視線を感じて俺は昂った自身を隠すように膝を抱えて座る。 「ヤマトも、脱げよ」 自分だけが全てを晒しているのが落ち着かなくて、 俺の衣服を纏めてベッドの傍に置いてある椅子の背に引っ掛けたヤマトに言った。 ヤマトは頷くとシャツを脱いで俺の服の上に放り投げて、ブーツと靴下も手早く脱いだ。 露わになったヤマトの上半身が俺を釘付けにする。 服を着ている時には細身に見えたヤマトの身体はしっかりと鍛えられていて、 自分の身体が貧相に思えるぐらいで。肌は白くても女性的ということは無く。 一度静まりかけた心臓の音がうるさい位にまた騒ぎ出す。 そんな俺の心境なんて気にもせず、ヤマトが自身のズボンに手を掛けたのを目にして俺は思わず叫んだ。 「ズボンはまだ脱がなくていい!」 「…?脱げと言ったのはお前だろう」 「言ったけどっ、俺の心臓が持たない…!」 「……フフ、まぁ構わんが」 慌てる俺が可笑しいのかヤマトは不思議そうにしながらも笑みを浮かべて、 ベッドの上に座る俺へと膝を付いて近付いてきた。 「コウキ」 俺の名を呼んで、膝を抱える腕に優しく触れてくる。 宥めるように撫でられて、俺は膝から腕を外した。身体の横に手を付いてシーツを握りしめる。 ヤマトの手が両膝の上にのせられて、ゆっくりと脚を開かされた。 「――――っ」 勃ち上がった自分の中心をヤマトに見られている、それだけで、更に熱がそこに集まる。 「ここを弄られるのは悦かったか」 「ぅ、ぁ」 弄られて赤くなった胸の尖りへヤマトが息を吹きかけてきて、 過敏になったそこへの微かな刺激に堪えきれない声が零れた。 喉の奥でヤマトが笑う。膝にのせられていたヤマトの手が滑って、脹脛、踝、踵に触れる。 逆の脚も同じように触れられて、今度は下から上へ、踵から脹脛、膝裏、内腿へと這わされる。 脚の付け根、肝心な場所には触れずぎりぎりの所を指先でなぞられて、焦らされる感じに身体が震えた。 「ぁ…、や、まと…」 はっ、はっ、と熱い息を吐きながら、じわじわと追い詰めるようなヤマトの愛撫に耐える。 「どうして欲しい、コウキ」 欲の滲んだ声でヤマトが問い掛けてくる。俺に言わせたい、強請らせたいんだろう。 ぐっと唇を噛んで目を閉じる。張り詰めた先端から先走りが溢れて零れ落ちるのが分かった。 その雫を追うように、ヤマトの指先がなぞっていくのを感じて、あ、と情けない声が出てしまう。 「強情だな…だが、悪くない」 ヤマトの愉快そうな声が耳に届く。耐えようとすることが出来たのはここまでだった。 昂りが、熱く濡れたものに包まれて、驚いて見開いた目に映ったのは、 「あ……っ!!は、ぁ、あぁ…っ!!」 俺の中心を銜えるヤマトの姿だった。 堪えることも忘れて声を上げる。引き剥がそうと両手でヤマトの頭を掴んで、でも力は入らない。 ヤマトの熱い口内、舌の感触だったり、歯の感触だったり、 手以外で与えられるそこへの初めての刺激に変になりそうだ。 「ヤマト…っ!も、駄目だ…って……っく、あぁ…っ」 俺が抵抗すればするほどヤマトの愛撫は強くなる。 それだけは駄目だ、まずいと思うのに、ヤマトはまるで促すように、 裏筋を指で根元から撫で上げて、先端の窪みを尖らせた舌先で抉ってきた。 「―――――っっ!!!」 上半身を仰け反らせて、結局我慢できずに俺は吐きだしてしまった。 両手はヤマトの頭に力なく添えられたまま、身体を丸めて乱れた呼吸を必死に整える。 ごくん、と、聞きたくない音が耳に伝わって、体温が更に上がった気がした。 顔を上げたヤマトは、早いな、と呟いて唇にこびりついた白いものを舐めている。 見てはいけないものを見てしまった気分になって、 俺は自分の顔を両手で覆って背中からベッドに倒れこんだ。 すぐに身体を横に向けて膝を抱える。 「どうした、コウキ。悦かったのだろう」 「―――ぅう…飲むとか、お前、信じられない」 「確かに美味とは言わんが、お前の精と思えば、悪くはないぞ」 「感想聞いてない!!」 俺に圧し掛かりながら聞きたくも無いことを言ってくるヤマトに、 顔を覆う両手を外して叫ぶと、思っていたよりもヤマトの顔が近くて心臓が跳ねた。 更に近付く顔に嫌な予感がしたものの、結局拒めず目を閉じた俺の唇にヤマトの唇が重なる。 ちゅ、と音を立てて啄むだけですぐに離れていったが、味は分かってしまった。 独特のえぐみというか、こんなものを悪くないと零したヤマトの気が知れない。 「自分の味はどうだ?」 「……不味い」 ヤマトは俺の反応に機嫌良さそうに喉を鳴らした後、ナイトテーブルに置いていたタオルを手に取った。 何に使うのかと目で追えば、そのタオルで俺の下肢を拭う。 ほんのりと温かいそれは多分お湯で湿らせていたんだろう、 まるで介護を受けているような妙な気分になる。 横を向いて寝そべったままの俺の尻を割って、丁寧に拭き取っていく。 「私は気にしないが、お前は気にするのだろう?」 ふいに声を掛けられて反応が遅れた俺の返事を待たず、ヤマトは俺の両足を掴んで仰向けに転がすと、 そのまま膝を胸につけるように俺の身体を折り畳んだ。 尻が浮いて、全てがヤマトの眼前に曝け出される。俺が抗議の言葉を吐くよりも早く、ヤマトが動いた。 「―――っっ!!!い、やだ、ヤマト…っ!!」 完全に身体が押さえ込まれて動けない、ぞわりとなんともいえない感覚が襲ってくる。 ヤマトが、俺の尻の窪みを舐めている。いくらタオルで拭いたとはいえ綺麗とは言えないそこを。 入口の襞を丹念になぞって、尖らせた舌先で突かれる。 「ぁ、あ…っ、や、だっ、て…っ」 ヤマトの髪が前を擽る。もう本当に色んな意味で限界だ。身体への刺激よりも精神的に駄目だ。 俺にとっては長い時間だったが、実際にはほんの数分でヤマトは顔を上げた。 肩で息をしながら俺は顔を背けて目を閉じる。目尻に溜まっていた涙が零れたのが分かった。 ヤマトが身じろぐ気配を感じる。何かの音が聞こえて、再びヤマトが尻に触れてくる。 横向けに寝かされて、尻たぶを開かれ、 「っ!な、なに…」 冷たいものがそこに触れて、驚くままに声を上げた。 「人体に害は無い、軟膏のようなものだ」 ぬるぬるとヤマトの指が尻の狭間を行き来する。 シーツを握りしめて耐えていると、その指が後孔に触れた。 「挿入れるぞ、息を吐け」 言われるままに息をゆっくりと吐く。 「ぅ―――ぁ、あ」 身体から力が抜けた瞬間に、ずぶりと指が埋まったのが分かった。痛みは無い。 痛みは無いけど気持ち悪い。根元まで埋まったヤマトの指が内部で蠢く。 狭いそこを拡げるように、硬いそこを解すように。 「…っ、ふ、は、ぁ…っ」 ヤマトの指が引き抜かれていく、排泄感にぞわりと膚が粟立った。 すぐにまた挿入れられる、今度は多分、二本の指。滑りも足されているようだ。 途中で引っ掛かることなく体内に埋められる。 「辛いか」 ヤマトの声を拾って、俺はいつの間にか閉じていた瞼を開いて俯けていた顔を上げる。 間近にヤマトの顔、目尻のあたりに唇が落ちてきて再び瞼を閉じれば涙が零れるのが分かった。 馴染ませるためか挿入れられた二本の指の動きは止まっている。 「ん…、だいじょ、ぶ…っ」 不快感はまだあったが、耐えることはできる。ヤマトが気づかってくれているのが分かるから。 あの夜は、俺の気持ちを無視したヤマトの一方的な行為だった。 でも今は違う、ヤマトとの行為を受け入れると決めた以上、もう泣き言は零さない。 俺の言葉を強がりととったのか、ヤマトが目を細めて、 「もう暫く耐えていろ」 そう言って、再び俺の体内に埋めていた指を動かし始めた。 ぐぷ、くちゅ、と耳を塞ぎたくなるような濡れた音が部屋に響く。 指で丁寧に内部を擦られて、少しずつ不快感が薄れていく。 じわりと熱だけじゃない何かを感じて身体が震えた。 「ふ、ぁ…」 溜息のような声が零れる。なかの、腹側の浅い場所、記憶にある妙な痺れ。 コウキ、と甘く呼ばれ、俺は分からないまま頷いて、それが合図になった。 いつ増やされていたのか呑み込んでいた三本のヤマトの指が俺のなかから引き抜かれた。 出ていくそれが名残惜しいとでも言うように内部が収縮した後、弛緩する。 ゆっくり深呼吸していると、衣擦れの音が聞こえる。 確認しようと思った瞬間、身体を仰向けにされた。 すぐに覆い被さってくるヤマトの姿が俺の視界を埋める。 両脚を抱えられて尻が浮く、先程まで指で弄られていた場所へ、熱いものが押し付けられた。 身構えることを、ヤマトは許さなかった。 「うあ、あ、あ…っっ!!!!」 裂けてしまいそうなほど入口を拡げられながら、ヤマトの昂りが俺のなかに挿入ってくる。 張り出した部分を呑み込んだ後は早かった。ヤマトの下生えが膚に触れて動きが一度止まる。 「っ、コウキ、息を止めるな」 「―――は、はぁっ、あ、ァ、」 宥めるように胸を撫でられて、思い出したように呼吸する。 どくん、どくんと自分のなかに他人の、ヤマトの熱を感じる。 怖れる暇も無かった、ヤマトと繋がっている、その事実に嫌悪感は無い。 「コウキ、私が怖ろしいか?」 だから、二度目になるヤマトのその問い掛けに、 「…こわく、ない」 俺は小さく頭を振って、笑うことが出来た。ヤマトの表情が和らぐ。 「動くぞ」 「ん…っ、あっ」 ヤマトが試すように軽く揺さぶってくる、俺は両手を伸ばしてヤマトの身体に縋りついた。 首筋に顔を埋めて熱い息を吐く。ヤマトの動きに遠慮がなくなってくる。 「あっ、っ、く、ぅあ…っ!」 指で弄られている時に感じたそこをヤマトの先端で突かれて、 全身を走る甘い痺れに耐えられず声を上げる。 ヤマトはそこばかりを責めながら、僅かに勃ち上がっていた俺の中心に触れてきた。 手のひらで包まれ、強く扱かれる。縋るヤマトの身体に爪を立てながら熱い息を漏らす。 痛みなんてない、怖いぐらいの快感に眩暈がする。 「あ、もう…っ、無理……ぁ――――っっ!!!!」 ヤマトに限界を訴えた直後、容赦なく内部を抉られながら昂りの先端を擦られて、 俺は呆気なく吐精した。ヤマトが堪えるように喉の奥で呻く。 達した瞬間に内部が収縮したのが自分でも分かったので、そのせいだろう。 全力疾走した後のように忙しない呼吸を繰り返す。 暫くして、俺を貫くヤマトのものがまだ張り詰めたままだということに気付いた。 「…っ、やまと…?」 嫌な予感がして俺はヤマトの名を呼んだ。ヤマトは何も言わず、口角だけ上げる。 ゆっくりとヤマトのものが自分の中から抜けていく。 完全に引き抜いた後、ヤマトは俺の身体を俯せにして、腰を掴んできた。 尻の奥に再び熱く滑るものが宛がわれる。 さっと血の気が引いた。背後からのその行為に、あの夜の記憶が蘇る。 「い、いやだっ、や――――っっあ、あぁっっ!!!」 濡れた音を立てながら、ヤマトの昂りがまた俺のなかに潜り込んでくる。 現実と記憶が混ざる、ありもしない痛みが全身を駆け抜けて、身体が激しく震えた。 「コウキ、落ち着け。痛みなど無いだろう?」 背中に熱が重なる、自分のものではない鼓動を感じる。 首筋に濡れた感触、啄まれて、舐められる。優しく腹を撫でられて、もう一度名前を呼ばれた。 「ぁ―――――、ァ」 は、と大きく息を吐く。確かに痛みは無い、あるのは身体の奥で燻る熱だけだ。 「言っただろう、お前の傷は必ず癒すと。二度と怖れぬよう、記憶を塗り替えてやる。 ……この快楽だけを、憶えておけ」 そう耳元で囁いた後、ヤマトは俺の内部を突き上げた。 「あ、あっ、っ」 上体を支える力はもう無くて、尻だけを上げた格好で揺さぶられる。 痛みは麻痺してしまったのか、感じるのは快楽だけだった。 直接触られていないのに俺の中心からは先走りが滴ってシーツに染みを作っている。 入口近くも、奥も、擦られるのが気持ちよくて、怖い。 「ァ、やま、と…っ、ヤマト……っっ」 止めて欲しいのか強請っているのか自分でも分からないままヤマトの名前を呼びながら喘ぐ。 ヤマトも時折俺の名前を呼ぶ。呼びながら奥深くを侵してくる。 「ひ、あぁ………――――っ!!」 「く……っ」 唐突にそれは終わりを告げた。 一番感じる場所を強く抉られて、押し出されるように自分の先端から白濁が零れ落ちる。 なかのヤマトのものを締め上げながら達した俺に続いて、ヤマトも今度は達したようだ。 ヤマトの昂りが内部で何度か跳ねる、身体の奥に熱が注がれる。 「――ぁ、つい…」 うわ言のように呟いて、堪えきれず俺はそのまま意識を手放した。 <3B>―2へ