魔力供給の為の行為を見たい、と言ったら、 微妙に違う、だが、似た声音で同時に、悪趣味という言葉が二人から返ってきた。 確かに俺もそう思うが、気になってしまったのだから仕方がない。 どうしたって二人の間には入り込めない俺の、ささやかな願い。 叶えてくれてもいいだろう?減るものでもないのだし。 強引にでも押し通そうと思っていた。 だから、彼からの返答は正直、少し意外だった。 「…別に、見て面白いものでもないと思うけど…。」 溜息を吐きつつも、そう受け入れる風に言ったのは士郎。 正気か貴様、と至極真っ当にアーチャーの奴が吐き捨てて眉を寄せる。 それには、 「だってさ、こいつもエミヤシロウなら諦めの悪さは考えるまでもないだろ?」 そうばっさりと言ってきた。 俺だけでなく、アーチャーの奴も、ぐ、と息をつめる。 まあ確かにその通りなんだが。 「貴様にそういった嗜好があるとはな。」 「む。セイバーだからいいってだけの話だぞ。」 「そこが理解できんのだがな…」 しばらく二人は色々言い合っていたが、結局は、 「言っておくが、これが理由で失敗などするなよ。笑えん。」 そうアーチャーが折れることで話はついた。 士郎は、わかってると多少不安を滲ませながらも答えていた。 俺がずっと焦がれ想い続けているのはアーチャーだが、 こうして厳密には違う存在なのだろうが、 自分の過去である衛宮士郎に召喚され、 アーチャーの背中を追い、次第に自分と同じ想いをあの赤い弓兵に抱き始めていく、 そんな士郎の姿を、何故か嬉しく感じて。 俺はアーチャーとは別の意味で士郎を好ましく思っていた。 親愛の情に近いものかもしれない。 それにしては過度なスキンシップをしているという自覚はあるが。 俺の手で快楽に染まっていく士郎を見ることは好きだ。 相手があの弓兵であったなら、どんな顔を見せるのか、見てみたいと思った。 そこには、どんな顔で士郎を抱くのか、アーチャーへの興味もあって。 ああ、確かに悪趣味だなと俺は内心で苦笑する。 間近で見たいのだと、そんな理由にもならない理由で、 俺は士郎を背後から胸に抱いて座った。 初めは流石に落ち着かなかったようだが、 アーチャーが完全に意識を切り替えて士郎に触れ始めると、 士郎もそれに体を委ねて目を閉じた。 多分、俺のことは座椅子とでも思うことにしたんだろう。 対してアーチャーは、俺を意識の外に出しているわけでもないらしい。 時折視線が合う。 眇められた目。 その視線の意味に俺は肩を竦める。 アーチャーはきっと、思い違いをしている。 俺が気持ちを向ける相手を、士郎だと思っているんだろう。 そうとられても仕方がないとは思うが。 俺が好きなのはおまえだよ、と言えば、この男はどんな貌を見せてくれるだろうか。 腕に抱いた士郎の体温が上がっていく。 は、は、と息づかいは荒くなって。時折悦い声を零す。 腰に回していた腕を少し持ち上げて、悪戯心から胸の赤い尖りを片方、きゅ、と摘んでみた。 ん、と士郎の喉が可愛く鳴った。 途端にアーチャーが不機嫌そうに睨んでくる。 そんなこいつの解りやすい反応がちょっと楽しい。 ただ、アーチャーの不機嫌な矛先は、俺ではなく士郎に向かってしまうので、 内心で士郎に悪いと呟いてみた。 「う、あ…っ」 士郎が少し苦しげな声を上げる。 アーチャーが士郎の中心の熱に顔を寄せていた。 そして多分、後孔も一緒に弄られているんだろう。 ひく、と士郎の体が震えてアーチャーの髪をくしゃりと力なく掻き混ぜている。 その表情は完全に快楽に染まっていて。 こちらも熱に呑まれそうだ。 下肢からひっきりなしに濡れた音。 士郎の声はどんどん切ない響きを帯びて。 そして掠れた声をあげて、数度小さく跳ねた。 果てたらしい。 士郎の体から力が抜けて、俺に完全に寄りかかってくる。 苦しげに呼吸する士郎の頬を撫でてやれば、涙に濡れたその目が俺を捉えて、 かあっとその頬がさらに赤く染まる。 あ、と何かを言いかけて、はっと気付いたように意識を俺から再び正面の男へ、 アーチャーへと移した。 見ればアーチャーは士郎の両足を開き、抱えて腰を入れていて。 既にあてがわれているのか、士郎は何度か息を吐いた後、唇を噛み締めようとしたので、 俺は咄嗟に士郎の口の中へ右手の人差し指と中指を突っ込んだ。 「っ」 驚いたように俺を見る士郎に、 「噛んでも構わないからな。」 俺はそう告げて、士郎の舌を挿しいれた指でつついた。 戸惑うような震えの後。 「ん…っ!!」 士郎が苦鳴と共に指を噛んできた。 痛みに俺は小さく呻いたが、すぐに突き立てられた歯は俺の指から離れて。 その後、あ、あ、と縋るような喘ぎ声が士郎の唇から零れる。 アーチャーが士郎の腰を掴み、引き寄せて、内部を穿っていた。 その男の貌は情欲に染まり。 ぞく、と体に痺れが走る。 灼熱に貫かれる感覚が、まざまざと蘇る。 ああ、駄目だ。こんな、見ているだけで、目眩がするなんて。 それだけじゃない。 アーチャーに侵される士郎の姿にも、俺は確かに感じていた。 どうかしていると、自分のことながら呆れる。 士郎は、俺が触れる時よりもずっと、快楽に融けた目で、ただアーチャーだけを見ている。 自分の熱を誤魔化すように、士郎の体を背後から抱きしめて、 これぐらい許せと士郎の項に唇を寄せた。 あ、と声を上げたがそれだけ。 士郎はもう俺の行動に意識を割いてはいないだろう。 単純にそんな余裕が無いだけかもしれないが。 アーチャーも、ちらと一度だけ目を向けてきただけで、すぐに士郎の内に沈んでいく。 揺さぶり、突き上げて。 苦しげに身を捩る士郎を抱き寄せ口付ける。 士郎の喉の奥から一際高い声が上がって。 見れば中心の熱を掴まれて、扱かれている。 アーチャーの腕に縋って、息も絶え絶えになって。 そうしておそらくは、ほぼ同時に、達したのだろう。 士郎の放った白濁は、アーチャーが自身の手のひらに受けたのか。 がくんと再び俺に寄りかかる士郎を、俺は受け止めた。 アーチャーが一つ、は、と息を吐いて体を引く。 その表情から、どうやら供給はうまくいったように見えた。 続く