俺と同じ顔をしたその男は、衛宮士郎と名乗った。 ああ、こいつが、あのアーチャーが焦がれていた男か。 俺が初めに抱いた感想はそんなものだった。 俺はどうやら並行世界に紛れ込んでしまったらしい。 原因は遠坂。 だが、それに俺も一枚噛んでいる以上、彼女のせいばかりには出来ないが。 イリヤまで巻き込んで創り出した宝石剣ゼルレッチ。 それが暴発し、結果、俺は次元を越えてこうして他世界の遠坂の元に来てしまった。 そういうことらしい。 となると、手段としてはこちらの遠坂にも同じ様に宝石剣を使ってもらうしかないのだろう。 だが、元の世界に戻れる保証は無い。 時間が経てば強制的に戻れるかもしれない。 または、俺のいた世界の遠坂と何らかの方法でコンタクトをとってもらうか。 ……まあ、そのあたりのことは、こちらの遠坂に任せよう。 そんな風に俺は一度思考を止めて、改めて目の前の衛宮士郎と向き合った。 【衛宮】という名前。 俺にとっては複雑極まりない名前。 それから、俺を見た途端に姿を消した、こちらの世界のアーチャー。あいつは―――。 「なあ、えっと、衛宮。こっちの世界でも召喚したサーヴァントはアーチャーだったのか?」 俺は単刀直入に聞くことにした。 衛宮士郎はそれに対して、 「聖杯戦争の時に俺が召喚したのはセイバーだ。…というか、今が聖杯戦争後で良かったよ。 あ、今は色々あって、アーチャーが俺のサーヴァントなんだけど。」 そう答えた。それに俺はこくりと頷いて理解を示す。 「お前は、その、初めからアーチャーを喚んだのか?」 逆に質問されて、俺はああと返した。 そこでまた沈黙が落ちる。 俺は一つ息を吐いて、 「元の世界に戻れるまで、厄介になっても構わないか。」 座ったまま一度姿勢を正して頭を下げた。 「……ああ。空いてる部屋はあるから好きに使ってくれ。寧ろあまり出歩かないでもらえると助かる。」 衛宮士郎は苦笑いを零しながら、俺を受け入れたのだった。