来訪者1





今、俺の目の前には神父服を纏った、とある人物が座っている。 数分前。突然訪れた遠坂が連れてきたのだ。 どうも何らかのトラブルがあったらしい。 詳しい説明など全く無く、解決策を考えるからその間預かっていて欲しいと 無理矢理押し付けられた。 同伴していたセイバーも、随分混乱しているようだった。 そりゃそうだろう。 現在俺のサーヴァントであるアーチャーなど、その人物と顔を合わせるなり ぐらりと目眩をおこし、頭を抱えながらふらふらと姿を消した。 実に、狡い。 結果、こうして俺だけが、向かい合う羽目になった。 それは、【俺】だった。 鏡に映る自分の姿とは微妙に違うので、俺には本当に瓜二つなのかどうかは判らない。 眼鏡をかけていて、自分よりも多少目つきが悪い気もする。 だが、あのアーチャーの反応を見る限りでは、やはりそっくりそのまま、同じなのだろう。 「…自己紹介でもするか。」 そいつが口を開いた。 「あ、ああ、そうだな。」 慌てて答える。声も同じなのだろうか。俺よりも低いような。 神父服の男は真っ直ぐに俺を見た。そして告げる。 「俺は言峰士郎。義父は言峰綺礼。……綺礼のことは、知ってるよな?」 がん、と頭を殴られたような衝撃。 よりにもよって、あの神父が俺の義父――いや、俺ではないが。 並行世界。 パラレルワールド。 そういうこと、らしい。 強引に納得した。するしかなかった。 現実逃避したくて、元凶である向こうの世界の遠坂のことを少し考える。 ああ……あっちの世界でも、遠坂は遠坂なんだなぁ。 そんなことを思った。