今、俺の目の前には神父服を纏った、とある人物が座っている。 数分前。突然訪れた遠坂が連れてきたのだ。 どうも何らかのトラブルがあったらしい。 詳しい説明など全く無く、解決策を考えるからその間預かっていて欲しいと 無理矢理押し付けられた。 同伴していたセイバーも、随分混乱しているようだった。 そりゃそうだろう。 現在俺のサーヴァントであるアーチャーなど、その人物と顔を合わせるなり ぐらりと目眩をおこし、頭を抱えながらふらふらと姿を消した。 実に、狡い。 結果、こうして俺だけが、向かい合う羽目になった。 それは、【俺】だった。 鏡に映る自分の姿とは微妙に違うので、俺には本当に瓜二つなのかどうかは判らない。 眼鏡をかけていて、自分よりも多少目つきが悪い気もする。 だが、あのアーチャーの反応を見る限りでは、やはりそっくりそのまま、同じなのだろう。 「…自己紹介でもするか。」 そいつが口を開いた。 「あ、ああ、そうだな。」 慌てて答える。声も同じなのだろうか。俺よりも低いような。 神父服の男は真っ直ぐに俺を見た。そして告げる。 「俺は言峰士郎。義父は言峰綺礼。……綺礼のことは、知ってるよな?」 がん、と頭を殴られたような衝撃。 よりにもよって、あの神父が俺の義父――いや、俺ではないが。 並行世界。 パラレルワールド。 そういうこと、らしい。 強引に納得した。するしかなかった。 現実逃避したくて、元凶である向こうの世界の遠坂のことを少し考える。 ああ……あっちの世界でも、遠坂は遠坂なんだなぁ。 そんなことを思った。