そうして夜は更けていき、 今までとは少しだけ違う、朝が来た。 いつもよりも遅く目が覚める。 体がだるく熱っぽい。 起き上がろうとして、自分が今身に着けているものが変わっていることに気付いた。 浴衣は寝間着に。体も綺麗になっている。 眠っている間、体の隅々を撫でられているような感覚があったが、 わざわざ洗ってくれたんだろうか。 案外忠実だなあいつ、と小さく呟いて俺は立ち上がった。 なかのものも掻きだしてくれたようだ。 疼痛はあるものの、不快感は無い。 正直助かったので、礼と、それとは別に言っておきたいこともあり、 居間にいるだろうとアーチャーの姿を探して俺は歩き出した。 今日が休みで良かったと思いながら。 居間に入るとアーチャーがエプロンの裾で手を拭きながら台所から出てきた。 「…体は大丈夫か。」 俺の顔を見ての第一声がこれだった。 別に大したことはないと告げると、ならばいいがと軽く返された。 「…後始末、してくれて助かった。ありがとう。……お前の方も、大丈夫なんだよな?」 礼をきっちり言ってから、俺もアーチャーに訊く。 アーチャーは目を細めた後、静かに頷いた。 俺は改めて、伝えるべきことを伝える為に口を開く。 「足りなくなったら言えよ。魔力ぐらい、いくらでもやるから。 お前がそれで現界出来るなら、何度でも俺を抱けばいい。 ……俺は男だから、色々面倒だとは思うけどさ。」 だから俺達を欺いて勝手に消えようとするなと強く告げる。 アーチャーは表情を変えず俺の言葉を受けて、そして。 く、と意地の悪い笑みを見せた。 「了解した、マスター。 だが、契約そのものを完全にすることを、まず考えるべきではないのかね? 未熟者。」 「ぐ。」 尤もな部分を突っ込まれて、俺は何も言い返せない。 確かに契約が不完全なのが大本の原因だが、本当に全てが俺だけのせいなのか。 ……確実に俺の未熟さが原因の一つではあるのだろうが。 まあ、今日のところは何もかも横に置いておくことにする。 いい加減立っているのも辛くなってきた。 情けないことだが、腰が、痛い。 あと、腹もぐぅと鳴った。 聞こえてしまったのだろう。くつくつとアーチャーが笑う。 む、と睨んでみたが、そんな俺を制するように男は手を振って座れと促してきて、 「今、用意しよう。大人しく待っていろ、衛宮士郎。」 そう言いながら、台所へと歩いていった。 その後姿を見送って俺は、はあと息を吐くと言われた通りに座って待つことにした。 甘えているなと思ったり、甘やかすなよと思ったりしながら、 俺はアーチャーが戻ってくるのを待つ。 体は本気できつかったが、気持ちはすっきりしていて。 目を閉じると、何時もの生活の音が響いてきて、心地よかった。