いきなり抱きつかれた。アーチャーに。 ……何か悪いものでも口にしたんだろうか。 だって、アーチャーだぞ。 これがランサーあたりなら、まあ、あるかなとは思う。 男相手にどうかはわからないが、 基本的にスキンシップが好きそうに見えるので。 アーチャーは逆だ。 むやみやたらとべたべたする奴じゃない………はずだ。 俺自身そうだし、根本的な部分は同じだろう。 なら、今こうして俺に抱きついているアーチャーには 何か理由があるのかもしれない。 だからひとまず、次の反応を待つことにした。 ……のが、間違いだったと俺は、思い知る。 「っ!!?」 ぞわっ、と全身に悪寒が走った。 こめかみから耳にかけて、滑る何か。 アーチャーに、舐められた。 「アー、チャー…、お前、何やって」 引き剥がそうと回された腕を掴んだが、びくともしない。 アーチャーは更に俺の頭を手で抱えこんできた。 そしてまたべろりと。 こいつ、やっぱり何か変だ。頭でも打ったんじゃないのか。 事の異常さに、ろくな身動きがとれないでいると、 くつくつとアーチャーの笑い声。 「なに、抵抗が無かったのでな。『据え膳食わぬは男の恥』だろう?」 と、そんな事を言ってきた。 やっぱり頭のネジが、二、三本取れたんじゃないだろうかこいつ。 暫くしてから、 「…子供は体温が高いというからな。確かめてみただけだ。」 アーチャーはそう口にすると、俺の首元に顔を埋めてきた。 それが本当の答えかと、とりあえずは納得して、 「じゃあ、お前も子供ってことだな。温かいぞ。」 そう切り返して俺は、抱きつく男の肩に手を回した。 確かにアーチャーの体は温かいので、目の前の肩に頬を擦り寄せる。 少しの沈黙の後。 「そうかもしれんな。」 囁くような声が、俺の耳に届いた。 どこか弱っているように見えて。 そんな姿を俺に見せるアーチャーは、やっぱりどうかしているなと思いながらも、 絆される俺も、どうかしていると、小さく苦笑して。 結局そのまま、付き合ってやることにした。