男は鼻で笑い。 「どうしても、と言うのであれば令呪でも使うのだな。 だが私も、ただ倒されるのは面白くは無い。 その際には、貴様の命も貰っていくが。」 真っ向から俺の挑発を受けて、返してきた。 遠慮など無しで俺と男は対峙する。 それを遮ったのは遠坂だった。 「あのね。人の家で暴れるのは無しよ。 ただでさえ居間がこの状態で頭が痛いんだから。」 いや遠坂。居間の方は多分、お前が原因だ。 もしかすると、俺のせいでもあるのかもしれないが。 俺はひとつ溜息をついて。 「遠坂。とりあえず今日のところは帰る。いいか?」 そう遠坂に言った。 「…士郎。聖杯戦争に参加するつもりはあるの?」 遠坂が聞いてくる。 「それは…考える。放棄してもいいんだが、令呪を手放したとたん、 あの男に殺されるのも御免だしな。」 俺は、遠坂には正直に今思っていることを告げた。 遠坂は、そう、とだけ返し、 「士郎。あなたが聖杯戦争に参加する気なら。 わたしは手加減は一切しないからね。」 きっぱりと宣戦布告してきた。 「わかってる。それでこそ遠坂だよ。」 俺は遠坂の性格など承知しているから、笑って言った。 教会への帰り道。念のため、あの男には霊体化させていたが。 深夜で完全に人の気配は感じなかったので。 「姿、見せろよ。こんな時間だ。人に見られることもない。 それに、見えない相手に殺気をとばされていると流石に落ち着かない。」 男がいるであろう空間を見て言う。 男はあっさりと実体化した。皮肉気に笑っている。 「まったく。気にくわない気持ちは、俺もそうだからわかるけど。 そこまでの殺意を抱かれる覚えはないんだが。」 俺が愚痴ると、気にするなと男は軽く言い、多少は殺気を緩めた。 はぁと息をついて。 「あ、クラス名くらいは聞いておく。呼ぶ名前が無いのはやっぱり不便だ。 真名の方は、お前の正体に興味なんて無いからいい。 どうせお前も、俺に教える気はないんだろう。」 そんな風に訊ねる。ふむ、と男は少し考える素振りをみせ。 「折角だ。当ててみせろ。」 挑発。まぁ、かまわないけどな。 少し考えて。 「そうだな……アーチャー、か?」 俺が告げると、ほんのわずか、男の眉が動く。 「当たり、だな。」 「…何故、わかった。」 低く問う男に、消去法だよと俺は軽く言う。 「セイバーはさっき判明した。ランサーは、まぁある理由で除外。 バーサーカーには見えないし、同じ理由でキャスター、アサシンも。 となると残りはアーチャーとライダー。あとは直感。 タイプ的にアーチャーの方だと思っただけだ。」 俺の説明に納得したのか、そうでないのか。 微妙な表情で黙り込んだ男、アーチャーに俺は告げた。 5へ続く