【アーチャー】 「すまない。待たせてしまったな。」 そうセイバーに声をかけて、テーブルに出来上がった食事を並べていく。 ほうれん草とベーコンのクリームパスタをメインに、 サラダとスープ、パンをいくつか。 見るとセイバーは目を輝かせていて、自然こちらの口元も緩む。 どうすべきか迷ったものの、付き合うべきだろうと パスタだけ自身の分も用意して、席についた。 「…では、いただきます。」 礼儀正しくセイバーはそう告げてから、フォークを手に取り一口パスタを口にする。 こくこくと頷き、そのまま黙々と食べ始めた。 どうやらお気に召してくれたらしい。 しばらくその様子を眺めていると、視線に気付いたセイバーが少し頬を染め、 「な、何ですかアーチャー。」 口のなかのものを飲み込んでから問いかけてくるので、 「感想を聞かせては貰えないのかな?」 そう聞いてみると、セイバーはむ、と一度口を噤んでから、 「とても美味しい、です。」 少し悔しさを滲ませながらも、賛辞の言葉をくれた。 「それは何よりだ。」 その言葉に満足を覚えながら、こちらも答えを返して。 フォークを手に取り自分も食事を開始することにした。 しばらく食器が触れ合う音だけが続く。 ふと、 「貴方と、このような時を過ごせるとは、思っていませんでした。」 セイバーがそんなことを、ぽつりと口にした。 「……私もだよ、セイバー。」 確かに、このサーヴァントという身でこんな日常を共にすることなど、 本来なら無いことだと思い至り、静かに同意する。 「不思議なものですね。」 ふふ、と淡く微笑むセイバーに、 私も、まったくだ、と自然に微笑みを返すことが出来た。