槍+剣+士郎 「突っ立ってねーで、座ったらどうだ。」 ランサーがセイバーに声をかける。 セイバーは士郎が立ち去った方向をしばらく立ち尽くして見ていたが、 ふうと息を一つ吐いて、 「貴方に言われるまでもありません。」 そう言って、ランサーの隣、人一人分空間を空けて縁側に腰を下ろした。 ランサーは苦笑のようなものを小さく漏らしつつも、特に何も言わず、 縁側から空を仰ぐ。 「……平和だな。」 「……ええ。」 他愛の無い言葉をぽつぽつと交わす。 じーわじーわと蝉の鳴く声。 「…可笑しな話だ。戦いを求めて召喚に応じた筈なんだが… こういう時間も、悪くねえ、そんな風に思えるなんてな。」 「…私も、このような時間はとても尊いものだと、そう、思います。」 「ああ。だが、偶には一戦付き合ってくれ。別に殺し合いとは言わねーからよ。」 「…正式な申し出であれば、お相手しましょう。」 二人、視線を合わせ、好戦的な笑みを浮かべる。 考えてみれば、こうして二人きりで会話を交わすのは実に珍しいと、互いにそんなことを思った。 そうして二人、士郎を待つ。 アイスを持って二人のもとへ戻ってみると、先程の険悪さは既に無く。 だが、二人が座る間に一人分の空間があるのに小さく笑いつつ。 「セイバー、お待たせ。」 声をかけてカップアイスを手渡す。 「ありがとうございます、シロウ。」 幸せそうにセイバーが微笑うのに、こちらもつられて笑う。 「ランサー、どっちがいい?」 今度は逆隣のランサーに二つのカップアイスを見せて聞くと、 ありがとよ、と言いながら片方を手にとって、さっそく食べ始める。 どうしようかとしばし迷った後、セイバーとランサーの間に腰を下ろして、 俺も自分の分のアイスに口を付け始めた。 「あ、セイバー。好きなだけとっていいぞ。」 「よろしいのですか?では…」 「オレも一口。」 「ランサー!」 「ほら、オレのもやるからそう怒るな。」 「な、ひ、卑怯ですランサー…っ」 「貰っておけば?セイバー。」 「う、く………いただきます。」 「坊主もとっていいぞ。」 「じゃ、貰う。」 外は茹だるような暑さ。 蝉の声。 平和な、夏の日。