士郎+槍+剣 縁側に青い物体が転がっている。 「…なんで俺の家にいるんだ。」 「細かいこたぁ気にすんな、坊主。」 仰向けに寝そべりながら、ひらりとその青い物体―ランサーが手を振る。 土足で上がっているわけではなかったので、蹴るのは止めておいた。 「ここ、ちょっと涼しいよな。」 言って目を閉じるランサー。 「…英霊も、夏バテするのか。」 「英霊っつってもな、実体化してると生身と変わらねーし。 もっとすっきり暑いなら、いいんだがな。」 成る程、湿気の多い、じっとりとした暑さに、参っているらしい。 気持ちはわからないでもない。 「まあ、暑いけどさ。」 首筋に汗が伝う。 「シロウ、どうかしたのですか…?ランサー、何故貴方がここに。」 ぺたぺたと足音を立てつつやってきたセイバーは、ランサーを視界に入れてぱちりと瞬く。 ランサーは、よう、と悪びれなく挨拶を返すだけ。 「…さっき、アイス買ってきたんだけど、あんたも食べるか?」 数は余分に買ってきていたので、男にそう声をかけてみると、おー食べる食べる、と あっさり肯定の返事が返ってくる。 「シロウ。」 「ちゃんとセイバーの分はあるぞ?」 「っ!別に、何も言っていません…!」 不安げなセイバーの声に、安心させるように返せば、慌てたような拗ねたような反応が返ってきて。 ランサーがくつくつと下で笑っている。 セイバーは、すうと目を眇めたかと思うと――。 「おっと。足癖が悪いな、セイバー。」 どうやらセイバーがランサーの頭部に蹴りをいれようとしたらしい。 ランサーは軽い身のこなしで体を起こして避け、挑発するような笑みを浮かべている。 ああ、セイバーの機嫌が急降下していくのがわかる。 「ランサー、セイバーをからかうのは止せ。セイバーも相手にするなって。」 「ですがシロウ――」 「だってなあ、からかうと面白ぇし。」 「っ、ランサー!!」 「……アイス、とってくる。」 何を言っても無駄のような気がしたので、それだけ告げて背中を向け、 セイバーの戸惑うような気配を感じたものの、振り向かずに台所に向かうことにした。