少女は遠坂にゆっくりと近づき、騎士の礼をとった。 一瞬、何かを躊躇ったようだが、意を決して。 「貴女が私のマスターですね。  サーヴァント・セイバー。召喚に応じ、参上した。」 そう真っ直ぐに告げた。 躊躇ったのはおそらく、クラス名を明かすことだろう。 正体不明のサーヴァントがもう一人いる為、明かすことを 躊躇ったのだろうが、問題はないと思ったのか。たいした自信だ。 当の遠坂は、念願のセイバー召喚を果たし、感極まっている。 が、気を取り直し。 「セイバーね。わたしは遠坂凛よ。これからよろしく。」 そう告げた。セイバーは頷き。 「ではマスター、指示を。貴女が望むならば、すぐにでもあのサーヴァントを…」 言いかけたセイバーを遠坂がちょっと待ってと遮る。 「あの男も、サーヴァントなのね。」 「はい。間違いなく。」 遠坂の問いかけにセイバーが頷く。遠坂は顎に手をやって考え込む姿勢。 「この状況から考えると、あいつもセイバーとほぼ同時に召喚されてきた…  と考えていいわね。でも、わたしとラインが繋がってるのはセイバーとだけだし…」 ああ。手の甲の痛みがひいたのが気になる。 俺を見るあの男の、次第に殺意混じりになる視線だとか。 それには上等だと返そう。俺も何故だか、初めて目にした時から気にくわない。 だが問題はそこじゃない。 「…H o l y c o w」 思わず汚い言葉が口をついて出る。 「…マスター。貴女の隣にいる、彼も魔術師なのでは…」 「…士郎……あんた、その手…!」 セイバーと遠坂が俺を見る。 「…どうやら、私のマスターは貴様らしいな。」 男が殺意を緩めないままに口元に笑みさえ浮かべて告げる。 俺は真っ直ぐにその殺意を受け止めた。 ラインも間違いなく、奴と繋がっている。 俺はこの聖杯戦争に、おそらくは人数あわせで選ばれたのだ。 「それではマスター、指示でももらおうか。」 わざとらしく男が俺に言ってくる。 未だ立ち上がりもしないままに。 俺は目を眇めて、 「そこのセイバーに黙って倒されろ、と命じれば。お前は従うのか?」 言った。 4へ続く