だから、俺も真っ直ぐに答えた。 「ああ。そうでもなければ、あいつが聖杯に取り込まれようとした時、助けたりしなかった。 けど、そうだな。もしギルガメッシュがイリヤの命を奪ったりしていたら…… また、結果は違っていたかもしれない。 俺の目の前で、小さな女の子を平然と殺すような姿を見せるなら、俺は縁を切っていたと思う。 本質は、傲慢で無慈悲なヤツなんだろうけど、俺は自分の目でそういう許せない所を見てないから。 どこか甘いんだよ、あいつ。だから俺は、好きでいられるんだと思う。」 イリヤは俺の言葉にひとつ、瞬いて。 「思い出した。わたし、不思議だった。どうしてわたしを殺さなかったのかなって。 だってアイツが必要だったのは小聖杯で、わたしは生きていなくても良かったはずだもの。」 「真意はわからないけどな。 だからイリヤ、遊びに来たいなら、来ればいいぞ。 ギルガメッシュに会いたくないなら、出てこないように言っておくし。」 「…うん。そうね。考えておく。」 とりあえず今の答えで満足したのか、イリヤはこくんと頷いて、紅茶に口を付けた。 俺の言葉に、アーチャーは何も、言わなかった。 俺達は他愛のない会話を続けた。 しばらくして、イリヤが、ふぁ…と小さく欠伸を零す。 「イリヤ、眠いのか?」 「……少し。」 「じゃあ、横になるか?」 俺が促すと、でも、とイリヤは躊躇う。 「少し眠るだけなら、待ってる。」 「本当?」 「ああ。いいよな、アーチャー。」 俺がそうアーチャーに訊くと、アーチャーも頷いてくれた。 「あ、どうせなら夕飯一緒に食べるか? 台所、貸してもらえるなら、イリヤの好きなものつくるぞ。」 「シロウ、料理できるんだ。うん、食べたい!」 「じゃ、イリヤ。ゆっくり眠ってていいからな。」 俺の言葉にイリヤは頷き、ベッドに横になった。 「眠るまで、傍にいてくれる?」 「イリヤが望むなら。」 そっとイリヤの頭を撫でると、イリヤは嬉しそうに微笑む。 アーチャーは後ろで静かに俺達を見ていた。 すぐにイリヤは寝息をたてはじめた。 「…無茶、言ってるんだよな、俺。」 ぽつりと呟いた俺に、 「解っていて、それでもそう望んだのだろう、お前は。」 責めるわけでもなく、アーチャーが返してくる。 俺はアーチャーを見て頷き、 「さて。イリヤに喜んでもらえるように、気合入れて夕飯つくらないとな。 アーチャー、お前も手伝えよ。」 そう声をかける。アーチャーは、 「当然だ。お前だけに任せてはおけん。」 そんなことを言ってくる。 「…なんかアーチャー、イリヤには優しいよな。」 俺の疑問には、口元を緩めて笑うだけ。 答える気は無いってことかと俺は軽く肩をすくめて、静かにイリヤの部屋を出た。 夕飯は、イリヤに喜んでもらえたのでほっとした。 アーチャーが特に何を言うでもなく、食事に参加していたので、驚きはあったが。 やっぱりイリヤには甘い。 その後 <イリヤとアーチャー> 終了