「え、シロウ、本当に来てくれたの?」 「言っただろ、会いに行くって。あ、いきなり来たのは不味かったか、イリヤ。」 「ううん、そんなことない。嬉しいよ!」 目の前で満面の笑みを見せてくれたイリヤ。 良かった。長い道のりを来たかいがあった。 俺は実体化させたアーチャーと一緒に、郊外の森の中のアインツベルン城に来ていた。 今、イリヤはここで、メイドの二人、セラ、リーゼリットと生活している。 流石にロビーは片付けられていた。 綺礼を倒した後、イリヤを助けてこの城まで送り届けた時に、 落ち着いたら会いに行くとイリヤに約束していたのだ。 イリヤは今、眠っていることの方が多いらしい。 俺が無茶を言っているせいなんだろうと思うので、こんな風に喜んでくれるなら、 これからも出来るだけ会いに来ようと思う。 アーチャーは珍しく文句も言わず、ついてきた。 何故かはわからないが、イリヤには優しい目を向けている感じがする。 イリヤの私室。 用意してもらった紅茶を口にしながら、イリヤと会話する。 「ねぇシロウ。どうしてシロウは、あんなヤツと一緒にいるの?」 イリヤが少し不機嫌そうに訊いてきた。 「あんなヤツ?」 「わたし、あんなヤツ大嫌い。わたしのバーサーカーを殺したんだもの。…許せない。 本当はわたしもシロウの家に遊びに行きたいけど、シロウの家にはアイツがいるんでしょ?」 「ああ、ギルガメッシュのことか。」 バーサーカーを殺した、というイリヤの言葉でようやく誰のことを言っているのかわかった。 確かにイリヤにとっては会いたくない奴だろう。 「…うーん。俺、あいつとは10年の付き合いになるからな。 ……慣れたというか、絆された、というか。」 俺が考えながらイリヤに答えていると、今まで黙っていたアーチャーが、 「家畜がいずれ喰われるものとは知らず、飼い主の与える愛情をそのまま受け入れて 懐くのと、同じことだ。」 などと、とんでもない例えで言いやがった。 「アーチャー、お前な……」 「何だ、間違いではなかろう。」 「う、いや、他にもっと言い方ってもんがあるだろ。」 俺がアーチャーに噛み付いていると。 「シロウは誰かに飼われたいの?ならわたしが飼ってあげるのに!」 「っ!」 危うく吹き出しそうになる。 イリヤまでとんでもないことを言ってきた。 「…イリヤ、それは違う。別に俺は飼われたいとか思ってるわけじゃない。」 「違うの?シロウってよくわからないね。」 「この男は異常だからな。理解などできんだろう。」 「アーチャー、もう黙ってろ。」 また喧嘩腰になってきた俺とアーチャーを見て、イリヤがくすくすと笑った。 「仲がいいのね。」 イリヤがそんなことを言う。 その言葉に毒を抜かれて、俺もアーチャーも気を落ち着かせる為か、 一度はぁと息を吐き出して。俺はイリヤに向き直った。 「シロウは、アイツのことも、好きなのね。」 イリヤが真剣な目で問いかけてくる。 2へ続く