言峰士郎 その後 <アーチャー>1





「好きなもの選べよ、アーチャー。  あんたが綺礼の着てたものを着るのは嫌だって言うから、買いにきたんだぞ。  俺が適当に買っても良かったけど、どうせ俺の選んだものなんか着ないだろ、あんた。」 「…何度も言うが、私はサーヴァントだ。私服なぞ必要性を感じない。」 「あの格好で、出歩くつもりか。」 「霊体化すれば、問題なかろう。  そもそも、常時、実体化させているなぞ、非効率的ではないか。  魔力の無駄使いだ。」 「俺が嫌なんだ。いるのに姿が無いのは、落ち着かない。」 「…貴様、よもや、霊が怖いなどと言うのでは無いだろうな。」 「あのな。バケモノにはギルガメッシュで慣れてる。  ……まぁ、教会に来たばっかりの頃は、多少は怖いとも思ったけど。  そんなことは、どうでもいい。ほら、さっさと買って来いよ。」 「……………………財布を寄越せ。」 俺とアーチャーは今、新都に買い物に来ている。 渋るアーチャーを無理矢理連れ出して、 ようやく当初の目的だったアーチャーの服を買わせることに成功した。 ギルガメッシュは元々、色々私服を持っていたし、 ランサーもどこからか、勝手に服を調達していた。 問題はアーチャーで、先程のようなことを言って譲らず、 俺は俺で主張して、新しく用意する気がないなら、綺礼の神父服でも着てろと 言ったところで、ようやく怯み、新都に連れ出し、今に至る。 アーチャーが今着ているのは、綺礼が持っていたごく普通の私服だ。 スーツ一式というか。サイズは多少大きめなぐらいだったので、それを着させて出てきた。 店の外でアーチャーを待っていると、紙袋を提げてアーチャーが店から出てくる。 渋面のままだったが、買うものはちゃんと買ったようだ。 財布を投げてきたので受け取って。 「じゃ、ついでに食料の買出しも済ませるか。アーチャー、お前も付き合えよ。」 「…了解した、マスター。」 俺の言葉にアーチャーは、諦めたように頷き。 俺達は、今度は食料品売り場に向かった。 「買いすぎではないのか。」 「日持ちするものが多いから大丈夫だ。それに、食わす奴が多いから、すぐ無くなる。」 「…その大半がサーヴァント相手にとは。どこまでも意味の無いことを…。」 「なんだよ。せっかく実体化してるんだし、味覚もあるんだから、  普通に食事ぐらいしてもいいだろ。  最近は晩飯に、遠坂とセイバーが食べにきてくれるし、実につくりがいがある。  特にセイバーが一番、旨そうに食べてくれるからな。嬉しいもんだ。」 2へ続く