「相変わらず、男くさい教会ね。いっそ士郎、シスターの服でも 着てみたらいいんじゃない?意外と華やぐかもしれないわよ。」 「…笑えない冗談はよせ、遠坂。」 「別に冗談のつもりはないし、笑わなくていいわよ、士郎。」 「凛…怒っていますね。」 「あら、そう見える?セイバー。」 遠坂がセイバーを連れて教会にやってきた。 ランサーが共闘提案をしてきた時に、俺が言った、 全部終わったら、洗いざらい話す という言葉を、遠坂はきっちり覚えていたのだ。 なので俺は腹をくくって、話した。全部。 ギルガメッシュとは10年前からずっと共にいたことも。 ランサーが綺礼のサーヴァントという事実を、初めから知っていたことも。 俺が話し終えた時から、遠坂はずっと眩しいくらいの笑顔。 ああ、怒っているな、と冷静に思う。 遠坂とは付き合いが長いのでわかるのだが、 遠坂は本当に怒ると、笑顔になるのだ。 それで、先のセリフ。 そのうち、俺のサイズに設えられたシスター服が贈られてきそうだ。 正直、こわい。 「坊主のシスター姿、か。面白そうだ。オレも協力してやるよ。」 「あら、ありがとうランサー。」 「なに、嬢ちゃんには世話になってるからな。」 …ランサーは遠坂についた。 世話なら俺だってしてるだろう、くそっ。 アーチャーと目が合う。……嫌な笑みを浮かべていやがる。 「凛。必要ならば、この男の寸法を教えよう。」 「気が利くじゃない、アーチャー。って、なんであなたが士郎のサイズ なんか知ってるのよ!?」 「なに、物の構造を把握することは、得意でね。」 アーチャーも遠坂についた。 まぁこいつが俺につくことなんて、有り得ないし。 「なんだ、雑種の服を設えるのならば、これを使え。」 その言葉と共に、とんでもなく高級そうな、だが色は珍しく地味な生地を 俺の頭に被せてきたギルガメッシュ。…いつのまに。 というか、コイツもか、畜生。 「じゃあ遠慮なく、使わせてもらうわ。 良かったわね、士郎。あなた想いのサーヴァントばかりじゃない。 さて、善は急げ。セイバー行きましょ。さっそく手配するわよ!」 そう言って遠坂は機嫌よく出て行った。 それに続こうとしたセイバーと、ふと目が合う。 セイバーは一度、目を伏せて。 「大丈夫です。シロウならばどんな衣服でも、きっと似合います。」 俺に、止めを刺してくれた。 ああ、味方なんて一人もいない。 遠坂を怒らせることの恐ろしさを、俺は思い知ったのだった。 後日。贈られたシスターの服は、気持ちが悪いほど俺にぴったりだった。 着替えさせられるのだけは願い下げだったので、自分で着替えて、 開き直って皆の前に出たのだが。 何が一番ショックだったかといえば、皆が皆、声を揃えて、 似合っている、と俺に言ってきたこと。 爆笑された方が、まだマシだ。くそ。 エピローグ 終了