「…言峰士郎。」 「なんだよ、今手がはなせない。あ、それ、味見してみてくれ。」 「…塩が足りん。」 「む、そうか。今度はうまくいったと思ったのに、くそ。」 「…士郎。」 「だからなんだよ。」 「いつまで私を現界させるつもりだ。私は現世に未練なぞ無いのだが。」 「お前に無くても俺にはある。お前を料理で唸らせてやるまで還す気なんて、無い。」 「…貴様が死ぬまで、付き合えと?」 「っこの、その言葉、絶対後悔させてやるからな!」 「ああ。是非とも後悔させてくれ。」 俺とアーチャーは炊事場でそんなことを言い合いながら料理をしている。 聖杯戦争が無事終わり…いや、厳密に言えばまだ終わってなどいない。 ただ、期限を決めないままの休戦状態、とでも言うべきか。 綺礼をこの手で倒し、イリヤスフィールを助け、孔は閉じてもらった。 イリヤスフィールとは一度闘ったことがあるだけだが、 俺が綺礼から助けたことが理由なのか、何故か、俺を気に入ったようで、 サーヴァントは何体か残っているようだけど、望みがあるなら叶えてくれると そんなことを言うので、一体どういうことなのかと訊くと、 聖杯戦争の仕組みを彼女は語ってくれた。 それを聞いて、ならばこのまま今残っているサーヴァントを現界させたまま、 休戦状態にできないかと俺は言った。 つまるところはそれが、望み。 俺は、教会での日常が気に入っていたので。 綺礼はあの場で倒すしかなかったので倒したが、他の、英霊三人、 アーチャー、ギルガメッシュ、ランサーを手放す気は無かった。 遠坂のサーヴァントであるセイバーのことも。 ランサーは綺礼が令呪を使い、命じたことで、セイバーと死闘を演じることに なったらしいが、そもそもが、ランサーの奴が綺礼に逆らい、遠坂を助けようと したのが原因だったようなので、セイバーはぎりぎりのところでランサーには とどめをささなかったらしい。戦闘続行不能状態にはしたわけだが。 そういったこともあり、勿論他にも恩があるし、何よりセイバー自身のことも 好ましく思っているので。 イリヤスフィールは可能だと言った。 ただ、いつまでもつかはわからない、とも。 イリヤスフィールのなかには、現在四体の英霊の力が満ちている状態で、 器である自身は、今のところは大丈夫だが、どうなるかはわからない、と。 それで充分だと俺は答えた。 そして、イリヤスフィールに対して、俺も好感を抱いた。 俺自身、よく理解はできていないとは思うが、イリヤスフィールは自身が大変 なのにも関わらず、俺の願いを叶えようとしてくれているのだから。 エピローグ1−2へ