「…結局。貴様も残るとはな。」 呆れ半分にアーチャーがギルガメッシュに言う。 「は。まぁ良い。今は無礼を赦してやろう。 贋作者、貴様にもその言葉、返してやるぞ。」 ギルガメッシュは一瞬だけ不快そうにし、だが機嫌がいいのか、 にやりと笑みを浮かべアーチャーに言う。 アーチャーはもう、諦めの表情で深い溜息をつき、 「…コトミネシロウという男は、欲が深いことだ。」 そう口にする。 対照的に、満足気にギルガメッシュが言う。 「ふ、我を厭きさせぬとは、たいした雑種よ。」 この分では。流石に言峰綺礼は無理だろうが、現時点で生き残っている ランサー、セイバーあたりは、何が何でも現界させる気だろう、あの男は。 だが。あまりにも違う、『士郎』に、僅かでない興味を抱き始めている事を あの対峙の後に自覚してしまったアーチャーは。 溜息をつきながらも、微かに笑った。 思い出す。 契約を破棄し、奴と対峙し、敗れ。 全てが終わり、あとは消えるだけ。 そうして目を閉じた自分に。 「血液か精か、選ばせてやる。 現界可能な魔力ぐらい、今渡す。さっさと選べ。」 選ばないなら、俺が無理やり突っ込むぞ。 そんな脅し文句と共に、満身創痍でにじり寄ってきた士郎。 無言で拒否を示していると、 ぐいと胸倉を掴んできて。 「俺はまだ、お前を座に還す気は無い。 俺が満足するまで、お前には現界してもらう。 拒否権なんて、あると思うなよ、この馬鹿。」 そう言うと、士郎はまだ血を流す自身の傷口を己の指で抉り、 そうして血に塗れた指を差し出してきた。 その強い光を湛える目に、自分は負けたのだと思う。 気付けば腕を引き、身体を引き寄せ、皮膚の薄い首筋に歯をたて、 まるで吸血鬼のように、士郎の血液を啜っていた。 所詮、この召喚での記憶を座に持ち帰ることは出来まい。 だがこの男の言葉通り、この男が満足するまで付き合うのも、 悪くはないだろうと。 そう、思ってしまったのだ。 今はただ、待つことにする。 義父となった、『言峰綺礼』と決着をつけ、 ここへ戻ってくるであろう、『言峰士郎』を。 『衛宮』の名を持たない、もう一人の『士郎』を。 VSギルガメッシュ 終了