綺礼と幼い頃から、戦闘訓練の真似事のような立ち合いを続けていたおかげか、 俺は、自分より遥かに実力が上の者を相手に闘うことに慣れ、 自らの急所を確実に庇う為の防御だけは巧くなった。 だから今、俺との契約を切り魔力不足とはいえ、英霊であるアーチャーを相手に なんとか闘えている。けれど。 たとえ体に馴染むといっても。 アーチャーの愛用している双剣の投影、そして戦闘スタイル。 それを模倣しているだけでは、俺はこいつには敵わないだろう。 ならば。俺は俺自身が今までに身につけた闘い方で。 そして、幼い頃からずっと創り出したかった、あの、夢の中で見る剣。 いや、何故か今、はっきりと気付く。 あれは、剣ではなく、剣の鞘。 それが解かった今なら、必ず、創り出せるはず。 その投影に想いをのせ、奴にぶつけてやろう。 アーチャーが渾身の力を籠めた一撃を放とうとしている。 それにあわせて俺は、手にしていた双剣を手放し、一気に集中する―― 「投影…開始!」 それは、眩い光、そのもの。 現れた柄を握り締め、振り下ろされたアーチャーの剣にぶつけるように振り切る。 アーチャーの驚愕した顔。 光の洪水。 そして 静寂。 アーチャーは呆然と立ち尽くしていた。 俺は。おそらくは無茶だったのだろう投影の影響で、激しい頭痛に襲われていた。 歯を噛み締めて耐える。 アーチャーの剣と打ち合わせた直後、それは霧散したようだ。 一瞬だったが、俺はきっと、創り出せたと思う。 「…まさか、セイバーの鞘を、出してくるとはな…」 そう呟くアーチャーからは、殺意も戦意も感じられない。 どうやらアーチャーの中で、何かしら答えが出たようだ。 俺はふっと緊張を解き、アーチャーの口から出た、セイバーの鞘、という言葉に ひとつ瞬きをして。セイバーの真名は知らないが、それでも。 あの剣―鞘が、英霊の所持品だったのだとわかり。 「…確かに、俺には過ぎた代物、だな。」 昔。ギルガメッシュが俺に言い捨てた言葉を思い出し、苦く笑みを浮かべた。 こうして、俺達の闘いは終わった。 後に遠坂に、 『ただの痴話喧嘩じゃない。迷惑な話よね』 と、愚痴られることになるのだが。 VSアーチャー 終了