言峰士郎の聖杯戦争 VSアーチャー 2





俺が言えば。 「…何故、貴様がオレに付き合う必要がある。」 アーチャーが眉をよせたまま言う。 「…お前の記憶を見て。エミヤシロウってのは馬鹿だなーって思ったわけだ。  それで英霊になって、理不尽な目にあって、後悔して。溜まりに溜まった鬱屈。  それをぶつける対象が、どこまでいっても自分自身でしかないっていうのが  …なんでか、真っ直ぐすぎて、感心した。  だから、お前が俺を殺したいと思うのが、八つ当たりだって解かってるなら  付き合うって決めて、俺はここに、いるんだ。  ……あとひとつ、理由をあげるなら。」 一度言葉を切る。促すように目を向けてくるアーチャー。 「この聖杯戦争で。俺はお前に背中を預けて闘った。  その時、俺達は確かに、信頼しあっていたはずだろう?  その時間は、お前が裏切った今も、嘘にはならない。  俺はお前に、何度も助けられた。  …借りをつくりっぱなしなのは、性にあわないんだ、俺。」 そんな俺の答えにアーチャーは。 「…貴様は、本当に…馬鹿だな。」 溜息混じりに言った。 だが、その声音には、共に闘い抜いた日々のやりとりにあったような、 ほんの少しの親しみがこもっていて。 「…八つ当たりだが、オレは容赦なぞせんぞ。貴様にはここで死んでもらう。」 アーチャーが一歩踏み出す。俺もほぼ同時に踏み出し。 「誰が殺されてやるか。お前には、もっと言ってやりたいことがあるんだ。」 言って、構える。 そして俺達は、互いに本気で剣を打ち合わせた。 お互いの、譲ることのできない想いをかけて。 アーチャーの過去を見て、馬鹿な奴だと笑うのは簡単だ。 だが、俺は笑えはしなかった。 ただただ真っ直ぐな、その生き様は、眩しかった。 掲げる理想は義父のもので、彼自身のものではなかったけれど。 それでも。愚直なまでのその生き方。 きっと、俺もこの道を歩んだだろう。 義父が、その衛宮切嗣という男だったならば。 思い出した。あの男だった。俺を火の海から救い出してくれた男。 アーチャーの欠損の多い記憶の中でも焼き付いていた、その姿。 俺は結局、助けてくれた男とは、縁がなかった。 だから、恩を返すこともできなかった。 いや、まだ間に合うというのなら。 アーチャーが歩んだ道とは違う道を探して。 その理想を、借りてもかまわないだろうか。 体は剣でできている。 ああ、本当に、似合いの言葉だ。 俺も、そうなれるだろうか。 そうでありたいと、俺は、思ってしまった。 3へ続く