アインツベルンの城。俺とアーチャーは対峙する。 俺が先に口を開いた。 「アーチャー。お前が何なのか、俺は全部、知ってる。」 その言葉に、アーチャーは平静だった。 一度目を閉じ、開く。 「なんだ、驚かないんだな。」 俺の言葉に。。 「マスターとサーヴァント、という関係ならば、相手の記憶がパスを通じて 流れる可能性は充分にある。貴様がそれを知ることは、不思議ではない。 ……オレも、貴様の記憶は、見た。」 アーチャーがそう言って一度言葉を切り、 次に不可解というように、眉を寄せ、問いかけてきた。 「オレの記憶を垣間見て、オレの希みを知り。それで何故貴様はここにいる。」 殺されてくれるのかと、そう問うアーチャーに。 「俺も訊きたい。お前も俺の記憶を見たんだろう? なら、俺はもう、お前とは違う存在だと解かっているはずだ。 実際一度は諦めていただろう。それが、なんで今更、こんな行為に出たんだ。 ……遠坂を、巻き込んでまで。」 俺も疑問をぶつけた。 なんとなく、裏切られる予感はしていたので、そのことに関しては別にいい。 だが、遠坂を巻き込んだことについては頭にきていた。 ……それだけ、切羽詰っていたのだと思うと、哀れにも思えるが。 アーチャーは少しの間、自分の内に沈み。 そして、ふ、と自嘲の笑みを浮かべた。 「ああ、そうだな。貴様の名を初めて知った時、オレは諦めた。 今回の召喚では俺の希みは叶わないと。 ならば、適当に貴様に付き合い、消えればいいだけだと思っていた。 だが…何故かな。貴様と共に闘ううちに、一度は消えた貴様への殺意が、 また顔を覗かせた。貴様はオレの過去とは違う。だが、貴様もあの大火事で 生き延びた士郎だ。同じものは、ある。たとえ貴様を葬ったとて、 何も変わらぬとしても。 ………そうだな、ただの八つ当たりだよ、士郎。 オレはただ、貴様を殺したい。それだけだ。」 アーチャーはそう告げると、俺を強く見据えてきた。 俺は―――笑った。笑って、言ってやった。 「八つ当たりだって自覚があるんなら、文句は無い。 これでまだ、薄い希みでも持ってるとか言われたら、流石になんか、申し訳ないしな。」 アーチャーは眉間に深く皺を寄せる。わけがわからないという顔。 「だからさ、俺はただ、お前の八つ当たりぐらい受けてやろう、 そう思っただけなんだよ。」 2へ続く