「……まじっスか、先輩。」 「ああ、マジ。いいから観念しろ。欲しいんだろ?」 「そりゃ欲しいっスけど……くそっ、悪趣味なんだよ!」 「悪趣味で結構。いらないんなら別にいい。」 「……っ」 暫く言い合った後、完二は渋々口を開けたので、 そこにスプーンですくったモノを放り込んだ。 「どうだ?」 「…うまいっス。」 旨いというわりには複雑な表情でぼそっと完二は答えた。 その様子に満足して、俺はカップとスプーンをそのままさしだしてやる。 完二は気が抜けたように一つ吐息して受け取った。 「先輩。男相手にやって、楽しいんスか?」 恨めしげな目で完二が問うてくるのに、 「完二だから楽しい、かな。」 包み隠さず本音を告げれば、完二は絶句したあと、っとに先輩は…と文句を言いながらも、 俺が先程渡した手作りのプリンを黙々と食べ始めた。 「馬鹿に、しないんスね。オレがプリン好きなの。」 ぽつりと言う完二の言葉に、 「別に、食べ物の嗜好に男も女もないだろ。俺だって甘いもの、わりと好きだし。」 俺がそう言えば、ほっとしたように、そっすか、と完二は呟く。 ある意味トラウマなんだろうなと思う。 「ちなみに先輩は何が好きっスか、食いもん。」 「ん、ああ、こっちにきて好きなモノ、できた。」 「何スか。」 「菜々子がつくってくれるものなら、なんでも。」 「……ああ、先輩らしっスね。」 そんなことを話しながら、完二と昼休みを過ごした。 屋上にいるのは俺と完二だけだ。 流石に誰かがいる状況で、先程のような真似をするほど俺は悪趣味じゃない。 ただまあ、完二をからかうのは、楽しかったりする。 プリン好き、ただ一人の男、完二。 すぐにこんなネタが浮かんだ…。 はい、あーん。という台詞は流石にやめておいた。