※注意 年末ネタバレ。 「綾時。」 部屋を出ようと彼に背中を向けた時、そう呼び止められた。 黙って振り返ると、正面から抱きしめられる。 「……どうか、したかい。」 彼の表情は見えない。答えもすぐに返ってこない。 ただ、ぎゅっと力強く抱きしめてくる。 そして、 「…綾時は、友達だ。どんな姿になろうとそれは変わらない。……一緒だ、自分の気持ちも。 友達を、殺せるわけ……ないだろう。」 僕と、とてもよく似た声で、彼は言った。 それは、かつての自分が彼に告げた言葉。 『ファルロス』だった頃も、『綾時』として付き合っていた時も、彼はどこかそっけなかった。 でも壁は感じなかった。きっと、それが彼の本質だったのだろうとわかったから。 彼は様々な人と付き合っていた。見せる顔全て、違っていた。 その中で、僕といる時だけは、自然体であるように感じた。 そのことが、僕は嬉しかった。 そっと彼の背中に腕を回す。同じ強さで抱きしめる。 もうすぐ人の姿を失う。こうして触れ合えるのも、きっと最後。 「君と出会えて、良かった。こうして最後に触れ合えたのが君で、良かった。」 ありのままの気持ちを彼に告げた。 名残惜しいけれど、もう時間はない。 彼も解っているのだろう、時間にすればほんの僅か、そっと触れ合った身体が離れていく。 「…あの選択肢を与えることが、綾時が人の性質を持った意味なら、 自分の中に綾時がいた意味は、きっとこの先にある。 自分は『その時』の為に、今まで生きてきたんだと、そう思うよ。」 彼は迷いの無い瞳でそう言って、やわらかく、笑った。 ああ、彼になら、絶対に変える事の出来ない運命でも、変える事が出来るのかもしれない。 信じたいと、思った。 彼に力を貸すことは出来ないけれど、せめて信じていたいと、そう思った。 「……君を、ずっと見ているよ。僕に見せて欲しい。人の、君の可能性を。」 そう言った僕に、彼は力強い瞳で頷いた。 二人で部屋を出て、階下に待つ皆のもとへ急ぐ。 もう言葉を交わすことはなかった。 次に言葉を交わす機会があるのなら、それはおそらく『約束の地』。 その時、僕はもう『綾時』ではないけれど。 忘れないよ、ずっと。 友達、だからね。 男主でも綾時のコミュはあるべきだろう。 そんな気持ちをぶつけてみた。 綾時、なんでそんなに順平と仲良しなん……? はっ、もしや男主の潜在意識なのか。本当は仲良くしたかったのか。 えらいクールだもんな、順平に対しての男主。 綾時が女好きなのはまぁ、完全に影響受けてそうだが、男主の。