※注意 色々ネタバレ。 10月満月戦ネタバレ。荒垣ネタバレ。 男主で捏造。 それは9月の下旬、荒垣と一緒にコロマルの散歩に出た時のことだった。 「あ……」 「どうかしましたか?」 荒垣が立ち止まりコートの中に手をやって呟くのが耳に届き、訊ねる。 「いや、なんでもねえ。気にすんな。」 ぶっきらぼうにそう告げた荒垣の表情は、どこか暗い。 気になって、無言で訴えるようにじっと荒垣を見ていると、 根負けしたように荒垣は肩をすくめて溜息を吐いた。 「時計。どっかで落としたみてぇでな。」 「時計?」 「ああ。まあ無くなっちまったもんはしょーがねぇ。」 荒垣はそれだけ言うと、その話は終わりだと言うように再び歩き始める。 「行くぞ。」 「あ、はい。」 促されて、それを待っていたとばかりに走り出したコロマルに引かれるように自分もまた小走りになる。 荒垣はマイペースに少し後ろを歩いていた。 荒垣は仕方ないと言ったが、何故か妙に気になってしまった。 その『無くした時計』というものが。 翌日の放課後。 もしかすると、という思いから立ち寄った交番。 黒沢に時計の落し物が最近届かなかったかと訊ねると、実にあっさりと望んだ答えが返ってきた。 それは古びた懐中時計。 荒垣のものかどうかは確認しなければ解らない。 黒沢は、持っていって確かめるといい、と言ってくれた。 随分信用してもらえているようだ。ありがとうございますと素直に礼を言って、その言葉に甘えることにした。 寮に戻り、荒垣の姿を探す。 ラウンジの奥にその姿を見つけて歩み寄った。 「ん?何だ。」 近寄る自分に声をかけてきた荒垣に、先程受け取ってきた時計を差し出す。 「これ、荒垣先輩の時計ですか?」 「!?」 驚いたように時計を見つめる荒垣。 黙って待っていると、微かに頷き肯定の言葉が返ってきた。 「ああ。……どこでこいつを?」 「交番です。誰かが拾って届けてくれていたみたいですね。良かった。」 「……もしかして、探させちまったか。悪ぃな、別に良かったのによ……。」 「いえ。自分が勝手に気になっただけですから。」 そんな言葉のやり取りをした後、荒垣に時計を手渡した。 荒垣は手のひらに時計をのせたまま、暫くそれを見つめている。 カチ、カチと時を刻む音。 「…手を離れた時は、それが運命かとも思ったんだがな。」 遠い目をして荒垣がぽつりと呟く。 その目はどこか悲しい。 「なら、先輩の所に戻ってきたのも、また運命ですよ。」 小さく微笑んで、荒垣にそう言ってみる。 荒垣は目を閉じ、そうかと呟く。 ほんの少しだけ口元が緩んでいるのが解って、理由も解らないまま、少しだけ安心した。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 「これで、いい……」 胸元を血に染めて、口から血を吐いて。 だが、笑みを浮かべて荒垣が地面に倒れる。 皆が駆け寄る。悲壮な声が上がる。 自分も混乱している。 そんな中で、確かめなければ、そう思った理由など、説明できない。 「っ、おい!何を」 呼び止める真田の声。気にせず倒れた荒垣の身体、赤く染まった胸のあたりに躊躇無く手を這わす。 コートの中に差し入れた手のひらに何かの金属のような感触。 歪な形のそれを避けて、心臓のあたりを探る。 傷ついた素肌。手のひらでは解りづらくて、そこに自分の耳を直接押し付けた。 微かな、本当に微かな、音。 そして、浅い、息も。 顔を上げて上着を脱ぐ。それで荒垣の胸元の傷口をおさえる。 「まだ……生きてる……!」 掠れる声を絞り出して、仲間に伝えた。 皆が一斉に息を呑む。 「病院…病院に……!!」 風花の声。 「影時間が明けないことには……それまで持ちこたえることが……っ」 美鶴の声。 「病院まで俺が抱えていく!…生きているなら絶対に助けるっ!!!」 真田が叫ぶ。 その真田の声に続くように、他の皆も声を上げ、荒垣を救う為に動き出した。 影時間が明け、荒垣は無事、医師の手で適切な処置を施されてなんとか命を繋ぎとめた。 ただ、自力呼吸もままならない状態で、意識が戻るかどうかは絶望的とのことだが。 誰もが口を閉ざしたまま、重い足取りで寮へと戻る途中。 真田が声を潜めて問いかけてきた。 「…何故、あの状況で、まだ生きていると解った?」 「……自分でも、解りません。ただ…あの人が一度無くした時計が、戻ってきた。 その意味が……多分、ずっと気になっていたんです。…って、すみません。よく、解らないですよね。」 自分の中でまだ整理できずに謝罪すると、真田はいや、と言った後、小さくありがとうと泣きそうな声を出した。 きっと荒垣は死なない。 それが、時計が戻ってきた意味なのだと、そんな風に信じたかった。 荒垣と映画に行って、コロマルの散歩にも一緒に行って、 交番で黒沢さんから『古びた懐中時計』受け取って、それを荒垣に渡す。 ……そうしたら、荒垣生存フラグ立っても、いいじゃない、か!!!!! 時計=時を刻むもの。 戻ってきたということは、荒垣の時も再び刻むってことで。 結構心臓に痛かったよ……泣いた。>初葬式シーン 女主のコミュが素晴らしいことに泣いた。 でも、真田、天田の覚醒シーンは、既存のシナリオの方が重みがあるよな。