なんで、こんなことになっちまったのか。 血の匂い、血の味。散乱した衣服。 ベッドに二人。 「……っ、くそっ」 額に手を当てて頭を振る。 隣には死んだように眠るアキの姿。 眠る…とは違うか、意識の無い姿だ。 俺が………犯った。 寮を出た俺に、アキは何度もしつこく戻って来いと言ってきた。 それを俺はあしらう。 頭に血が上ったアキに殴られることもあった。 逆に俺が殴ることも。 場所が悪かったのか。今日は今俺が寝泊りしている仮の部屋で、周りの目が無くて。 殴り合いはエスカレートした。 俺が頭突きをしたことでアキがよろめき、やりすぎたかと一瞬油断した。 アキは身体をぶつけて俺をベッドに押し倒す。 そして……初めはソレと解らなかった。 アキが口をぶつけてくる、俺の口に。 間近にアキの薄い色の目。次いで俺の服に手をかけてくる腕に気付き、理解した。 『ああ……そういうことか』 俺をヤル気か、と。 喧嘩の延長、自分の優位性を示す行為。 ふざけんな、そう思った時には、俺は逆にアキの身体を組み伏せていた。 俺もこの時はどうかしてた。 普通の精神状態だったら、止めさせればいいだけだったのを、 なんでやりかえすなんて方法をとっちまったのか。 血の匂いで興奮したのか、俺のもアキのもガチガチにかたくなっていた。 好都合だ、ぐらいにしか考えられなかった。 服を剥いで脚を開かせる。アキもこっちの服を剥ぎ取ろうと暴れたが、 構わず、何も考えずに突っ込んだら体が跳ねて、アキの喉から掠れた声が聞こえた。 狭い、かたい、キツい。無視して全部挿れる。 挿れた後は腰を引いて、また押し込む。 繰り返すうちに動きやすくなって、血の匂いも濃くなった。 アキの口からは普段聞いたことの無い声が漏れる。 シンジ、シンジ、煩いぐらいに俺の名前を呼んで、喘ぐ。 あんまり煩えから、自分の口でその口を塞いだ。 正直その後は、あまり覚えていない。 何回出したのか、何回俺の腹が濡れたのか。 目が覚めてからは自己嫌悪の嵐だ。 先に仕掛けてきたのはアキだが、それは言い訳にもならない。 自分が決定的に何かを間違えたのだけは解る。 「……なんでだ、アキ……」 呟いてもアキは答えない。浅い息だけが耳に届く。 アキは、一度も拒絶の言葉を吐かなかった。 俺の名前を呼んだだけだ。 「畜生……っ!」 暗い部屋に、自分の声だけが響いた。 荒垣先輩、超ごめん。 一線越える時ってどんな状況だろう…と考えた結果、 真田が荒垣の寝込みを襲うか(襲い受け)、喧嘩の延長、ということになりました。 喧嘩の延長ヴァージョンです。 真田は初めから襲い受けのつもりだったので、荒垣の理解を超えていたという。 目が覚めた真田は、変わらず荒垣に「戻って来い、シンジ」って言うよ。荒垣涙目。 流石にすぐ出て行けとは言えず苦悩する荒垣を余所に、真田は服着たあと、また来るって告げて 自分から出て行って、1人でとぼとぼと寮に帰る道で反芻して、 「ああ、シンジと寝たんだな、俺」って余韻に浸る奴です。 荒垣先輩だけが可哀想なことに。