「ついてんぞ、ったく…」 「んぐ。」 本当に自然だった。 荒垣先輩が真田先輩の口元についたご飯粒をとって、それを自分の口に運ぶのは。 吃驚した。けど、あまりにも普通だった。 それが二人の関係なのだと、何の疑問もなく理解できた。 そんな二人を間近に見れることが、少しこそばゆくもあり、少し羨ましくもあり。 男同士のこういう距離感がいいなと思う。 無いものねだりだとわかってはいるが、女同士にはない何かがあって。 「…なんだ?」 「おい、早く喰わないと冷めるぞ。」 「あ、はいっ!」 急に声をかけられて、はっとする。 二人を凝視していたことに気付き、慌てて私は箸を握る手を動かした。 主に真田先輩と食事を一緒にとるようになってから、随分自分の胃袋は大きくなった。 今はタルタロスでの、戦闘という名の命がけの運動があるから、 あまり体重は増えずに済んでいるけれど、後々のことを考えると少し怖い。 妙な所で男女平等なのだ、真田先輩は。 認めてもらえている、とわかるので嬉しくもあるが。 黙々と食べていると、ああ、と低く呟く声。 荒垣先輩だ。 「つい気がゆるんじまった……」 しまった、と口元に手をあてて、ばつが悪そうに視線をそらす。 そんな荒垣先輩を不思議そうに見る真田先輩。 どうやら先程のやりとりを私の前でしてしまったことに気付いたようだ。 「大変ですね。」 にこりと笑って私が言えば、荒垣先輩の顔には苦笑が浮かび、 真田先輩は相変わらず何も気付いていない様子。 誰も入ることの出来ない場所。 そこに入ることを許してもらえてるみたいで、 二人の先輩と食事をするのは、楽しかった。 真田と仲良くなってて、荒垣とも仲良くなってきたぐらいに 三人で一緒にご飯食べてたら可愛いなーと思って。