◆ヤマ主 雨が降っている。ぱたぱたと規則的に響く音をBGMにベッドで微睡む。 頭を撫でられる感触に喉を鳴らして身体を丸める。気持ちがいい。 指の腹で手のひらで、頭皮を擽り髪を掻き混ぜられて。 「眠っているのか」 落とされた問いかけに頭を振る。 ふ、と空気が揺れる。眠ってしまえと囁く声は甘く響いた。 このまま意識を手放すのはきっと気持ちがいいとは思ったものの、 勿体ない気もして俺は閉じていた瞼を開いた。 ゆっくりと顔を上げる。 「眠らないのか?」 頭を撫でていたヤマトの手が下りていき、指先が顎下をなぞる。 「…もう、寝かせる気もないくせに」 俺は小さく笑いながら触れてくるヤマトの手を掴んで、その綺麗な指先をぱくりと銜えた。 ちゅ、と吸い上げて皮膚と爪の境目に舌を這わせる。 挑発するように視線を上げて、ヤマト、と名を呼んだ。 少しずつ雨の音が大きくなっていく。 「……そうだな、お前が望むなら付き合ってやろう」 目を細めて覆いかぶさってくるヤマトに手を伸ばして首に腕を絡めて。 怠惰な俺に付き合ってくれるなら、この身体を差し出すことに躊躇いはないんだよ。 ◆ヤマ主 まず髪に。額、瞼、耳、頬、唇を掠めて喉、首筋。 胸、腹、腕、手首、手の甲、掌、指先。 腰、腿、脛、足の甲、爪先、最後は後ろを向かせて背中にキス。 全ての意味を知っているだろうか? 「好きだよ、ヤマト」 後ろから抱き付いてその背に額を押し付けた。 今日は告白の日、らしい。 キスをする場所には全てに意味がある。 ネットでそれを知って、ヤマトになら、その全ての意味を捧げてもいいと思った。 ヤマトは博識だけど、こういう俗な知識を持っているかどうかは分からない。 唇が愛情だったり、頬が親愛だったり、その程度のことなら知っているかもしれない。 いざヤマトの身体のあちこちに唇を押し付けてみて、 背中への口付けが一番、感情がこもったように感じる。 その意味は『確認』。 ヤマトが今ここにいること、ヤマトを想う自分の感情、様々な確認。 言葉では好きだとしか伝えてないけど、他の色々な感情も少しはキスから伝わっただろうか。 確りとした背中の温度を感じながら目を閉じる。 胸元に回した手に、ヤマトの手が重ねられた。 「…不思議なものだ。与えられる情を、これ程好ましく思う日がくるとはな」 噛み締めるようなヤマトの告白に、ちょっと泣きたくなった。 ◆ヤマ主(R18) ヤマトは俺に噛み痕を残す。 俺はヤマトに引っ掻き傷を残す。 『…俺は、意識してやってるわけじゃないんだけど』 今日もまた散々噛まれて、あちこちがヒリヒリじんじんする。 行為自体は俺が2回、ヤマトが俺の中に1回出しただけ。 昨夜もしたので加減してくれているんだろうか、 終わりとばかりに離れていく背中に赤い引っ掻き痕を見つけて、 俺はヤマトを引き留めて、その傷に唇を這わせた。 舌先に血の味を感じて、ごめんと謝る気持ちで丁寧に舐める。 舐めているうちに、ちょっと妙な気分になってくる。 は、と熱い息を吐いて、そろりと手を後ろへ回す。 恐る恐る尻の奥に指を滑らせて窪みを指の腹で押すと、 じわりとぬるいものが零れ出てきた。 「ふ、ぅ…」 思わず声が出てしまう。く、と喉奥で笑う気配。 急にヤマトが振り向いて俺の手を引いた。抵抗する間もなくヤマトの胸に飛び込む。 「何だ、足りないのか」 囁く低音。白濁を零す後ろの窄まりを指先でなぞられて、じんとそこが疼く。 「うん…もう一回」 両腕を伸ばしてヤマトの首に回せば、仕方のないやつだと嬉しそうな声が耳を擽った 「では、君の好きにしたまえ」 「…いいの?」 私をどう欲するのか、その姿が見たくなりそう告げた。 軽く首を傾げ見上げてくる彼に笑いかける。 「私が欲しいのだろう、ここに」 手を伸ばし熱く熟れた後孔をなぞれば強請るように吸い付いてくる。 ん、と喉を鳴らし彼は私の身体を押し倒す。 「じゃあ…いただきます」 挿入の為に私の性器を口と手で十分な硬さにまで高めた後、 彼は仰向けの私を跨いで腰を落とす。 熱い内部へと迎え入れられ、心地良さに大きく息を吐いた。 暫く馴染ませるように私の上で浅い呼吸を繰り返した彼が控えめに身体を揺らし始める。 深く銜えた状態でゆるゆると。 手助けするように軽く腰を突き上げると、強い眼差しで咎めてくる。 「んっ、俺が…、悦くするから、動くなって…っぁ」 「ふ…、では、もっと動くんだな、この程度では、夜が明けてしまうぞ…」 「――っっ、絶対、悦かった、って、言わせる、から…っんぅ」 腹に手を着いて懸命に身体を揺らす彼の姿には愛おしさしかもはや感じなかった。 ◆ヤマ主(R18) 神社の祭りにヤマトと2人、浴衣で出向いた。 俺にとっては身近な、沢山の露店が並ぶ賑やかな所謂市井の祭り。 ヤマトは初体験らしい、人混みに眉を寄せながらも、漂ってくる様々な食べ物の匂いには興味があるようで、 そんなヤマトが少し可愛くてこっそりと笑う。 たこ焼きは勿論、お好み焼き、焼きとうもろこし、リンゴ飴。 食べ歩きをしながら境内へ向かう。 すっかり日も暮れて、少しずつ人はまばらになっていく。 「う、わ…っ」 何かが千切れるような音と共に前へと傾ぐ身体を咄嗟にヤマトが受け止めてくれた。 「どうした」 「あー、下駄の鼻緒ってホントに切れるんだ…」 あまりにもベタな事態に俺は瞬く。ヤマトがしゃがんで俺の足元を確認してから立ち上がって、 「―――っ!?!?」 次の瞬間、俺の身体は宙に浮いた。背中と膝裏にヤマトの手の感触。 お姫様抱っこされていた。 「一先ず拝殿に向かうぞ」 「ま、待って、ちょ、これ嫌だって…!!」 幸運にも周りに人の姿は無いものの、もの凄く、恥ずかしい! ばたばたとヤマトの腕の中で暴れる俺をヤマトが睨む。 凄まれたって嫌なものは嫌だと俺も負けじと睨み返す。 暫く睨み合って、折れたのはヤマトだった。 両足を地面に下ろされた後、ではおぶされと背中を向けられて、 断るとまた姫抱きされそうだったので俺は素直にヤマトの背におぶさった。 これはこれで恥ずかしい。尻を支える手の温もりとか、髪からいい香りがするとか。 ヤマトは鼻緒が切れた方の下駄を持ちながら俺をおぶって迷いなく拝殿へと向かった。 『どうして、こんなことに』 浴衣を乱されて、下着を引き下ろされ、ヤマトの手が俺の中心を弄っている。 くちくちと濡れた音が明かりの無い拝殿に響く。 拝殿に着いてヤマトの背から下りて段差に腰掛けた。 ヤマトは応急処置だと手早く鼻緒を直してくれて、下駄を履かせてくれた所までは良かった。 跪いたヤマトが俺の足を捧げ持って、足の甲に口づけてくる。 そのまま足首、浴衣の裾を割って脛、膝へと舌を這わされて。 気付いた時にはもう戻れない状態まで俺は流されていた。 神様が見てる…と思いかけて、神はポラリスだっけ、とか現実逃避していると顎を掴まれた。 ヤマトが覗き込んでくる。 「私を見ろ」 「っ、だ…って、こんな、場所で…ぅ」 「誤魔化すな、悦いのだろう?」 「んっ、ぁ…っ」 ぐり、と先端を強く擦られて甘ったるい声が零れた。 神聖な場所での行為、その背徳感にいつもよりも感じているなんて、 きっとヤマトにはバレているんだろう。 ◆ヤマ主(トリアングルム編ネタバレ) 朝目覚めると隣には馴染んだ気配。 俯せて枕に顔を埋めて苦しくは無いのか。 裸の背を撫でると僅かに肩が揺れたが直ぐに寝息に合わせて規則正しく上下する。 顔を近づけて肩甲骨に唇を落とす。当たり前のようにあるこの温もりに心から安堵する。 喪失の痛みだけはもう二度と味わいたくは無い――。 こうして触れていても時折思い出す、彼だけが欠けた世界の事を。 その時初めて知った、いつの間にか彼の存在が自分の中の大部分を占めていた事実に。 手を伸ばし頭を撫でる、柔らかな癖毛に目を細める。 早く声が聞きたい、美しい青い眼を見せて欲しい。 それが伝わったのだろうか、閉じていた瞼が震え、ゆっくりと開いていった。 優しく頭を撫でる感触に意識が浮上する。 瞼を開いて何度か瞬いて、肘を着いて上半身を起こす。 そうして隣へと顔を向ければヤマトが目を細めて俺を見つめていた。 いつも通りのヤマトの姿に安心して、自然と顔が緩む。 「…ぐっない、ヤマト」 そう言って俺は再び枕に顔を埋めた。 「…それは朝の挨拶ではないぞ、いい加減起きたまえ」 容赦ないヤマトの声が二度寝を許してくれず、仰向けに身体を引っ繰り返される。 「んっ、ふ…ぅァ」 そして朝から濃厚なキス。多分3分くらいは貪られてから解放される。 「ぷぁ……は、ぁ…、おは、よ」 「ああ、おはよう」 息も絶え絶え朝の挨拶をやり直すと、ヤマトの嬉しそうな声が返ってきて。 ああ、俺、ヤマトのこと本当に好きなんだなと、しみじみ実感してしまった。 ◆ヤマ主 ●貴方はやる気が出なくても『相手の服を抱きしめて寝ているヤマ主』をかいてみましょう。 幸せにしてあげてください 狭量だと自嘲する。シャワーを浴びて寝室に戻ると彼は眠っていた。 それはいい、問題は彼が抱きしめている先程まで自分が身に着けていたジプスのコート。 胸に抱きしめて顔を埋めて、安心しきった顔で眠っている。 ベッドの端に腰を下ろしその姿を見下ろす。 そうか、お前は生身の私でなくとも問題ないのか ヤマトはシャワーを浴びに部屋を出ていった。 手持無沙汰になった俺は特に何も考えずにベッドの下に落ちていたヤマトのコートをひっぱりあげてみる。 結構重いそれを胸に抱いて顔を埋めると良い香りがして目を細める。 ヤマトの匂いだ。表情が緩むのが自分でも分かる。そのまま俺の意識はゆっくり落ちた ●ヤマ主へのお題は『拗ねてる君も可愛いよ』 機嫌を損ねてしまったらしい。 ヤマトは黙々と執務机で作業をしていて先程から名前を呼ぶ俺に答えてくれず視線も合わせない。 眉間に刻まれた皺だとか、への字になった口とか。 「拗ねてるお前も可愛いよ」 机に両肘を着いてヤマトの顔を覗き込んで言えば「拗ねてなどいない」とやっと答えが返ってきた ●梨雪宅のヤマ主への今夜のお題は『朦朧とする意識 / 後戯 / キスをねだる』です。 終わったならまた火が点いてしまう前に抜いて欲しい、熱くてぼんやりする、 漸く呼吸も落ち着いて未だ離れずに首筋を吸うヤマトの背に手を回して 汗ばんだそこを撫でてから後頭部の髪をつんと引っ張った。 顔を上げたヤマトを見つめてから目を閉じる。 言葉にしなくても欲しかった唇が自分のそれと重なった ◆ヤマ主(R18) 彼の口内は心地良い。初めは全てが拙かったが、短期間で驚くほどに上達した。 私の脚の間に顔を埋め、熱心にしゃぶるその表情は俯いている為はっきりとは見えない。 時折苦しげに喘ぐ声と濡れた音だけが耳に届く。 どんな貌をしているのか、髪を強めに引いて彼の顔を強引に上げさせた。 つう、と半透明の糸が私の性器と彼の唇とを繋ぐ。 涙に滲む瞳、こちらを挑発するように舌を出して彼は自身の唇を舐める。 「俺、うまくなった?」 不覚にも、下肢に更に血が集まった。 わ、まだおっきくなるんだ、そう呟いて彼は再び私のものを呑みこむ。 息を吐いて与えられる快楽をやり過ごす。 手慰みに彼の腰を撫で柔い尻に触れると、その手を彼に咎められた。 「今日は、俺が全部するから」 たまにはこういった趣向も悪くは無い、そんな思いから彼の好きにさせることにした。 見せつけるように彼は自身の後孔を自ら解し、私の身体を仰向けに押し倒す。 跨いで腰を浮かせ、私の腹に片手を着き、もう片方の手を私の性器に添えた。 位置を確認するように何度か前後に擦りつけ、ゆっくりと腰を落としていく。 入口は相変わらず狭い、だがそこを抜ければ彼の内部は悦んで私を迎え入れる。 熱い肉に包まれ、堪らず溜息を漏らす。 「――――ふ、ぁ、あぁ…っ」 小さく啼く彼を見つめれば、私の上で腰を落とし、根元まで全て銜えた状態で動きを止めていた。 全身が小刻みに震えている、腰でも抜かしたのか。 「もう終わりか?」 揶揄するように問いかけ彼の腰を掴むと、青い瞳に再び強い光が灯る。 「…まだ、だぁめ」 微笑みながら言って私の手を払い、腹の上でゆるりと腰を揺らし始めた。 上気した頬、甘く融けた青い眼、悦楽に綻ぶ口元。 紅く色づいた乳首になだらかな腰のライン、私の昂ぶりを呑みこんだ後孔に充血した彼の性器。 全てが私の欲を煽る、早く全てを喰らいたいと。 「んっ、ね、ヤマト…、俺のなか、きもちいい?」 「っ、く…、ああ、とても…悦い、だが、まだ足りん、な…っ」 「じゃあ、スピード、上げるよ…っあ、んっ」 短い遣り取りを交わし、互いに行為に没頭する。 時折彼の身体が震え、彼の性器から白濁が零れ落ちる。 いい加減されるがままという状態に物足りなさを感じてきた時、彼が折れた。 「ぁ、胸なら…っ、さわっても、いい、よ…っ」 触ってもいいではなく、触ってほしいだろうに。 く、と喉奥で笑って、彼の望みを叶えてやる為、自身が愉しむ為、 手を彼の胸元へと伸ばした。 ヤマトの手が胸元へ辿りつく。我知らずごくりと口内に溜まった唾液を飲みこんだ。 つう、と指先が触れる。胸の僅かな膨らみを、うっすらと浮き出た肋を。 指先で優しくなぞるだけ。胸の尖りを羽毛で触れるように撫でられる。 絶対にわざとだ、悦いというより擽ったさが勝って焦れる。 「っ、もっと、」 堪らず強請れば、 「何だ、欲求があるならば行動で示せ」 「――っ」 分かっているくせに、そんなことを言ってくる。 売り言葉に買い言葉、俺はヤマトの手の甲に手を重ねて自分の胸へと押し付けた。 行動で示せとヤマトは言った、動かないヤマトの指を胸の上で主張している赤い尖りごと、 押し潰すように重ねた手に力をこめる。 じん、と熱く疼いて身体が小さく跳ねた。 自分の指とは違うヤマトの指の感触、それだけで簡単に俺の身体は悦ぶんだ。 「ここ、早く弄って」 これでも動いてくれないなら、ヤマトとは暫くセックスしない。 言葉にはせず目で訴えてみると、どう受け取ったのかヤマトが微笑う。 その顔は俺が好きな、俺だけに見せる笑顔だ。 「いいだろう、君の望む通りに」 「ぅあ…っ、ァ…!」 ぐり、と強く捏ねられて、びりっと痺れるような快感に身体が震える。 銜えているヤマトの熱塊をぎゅうっと締め付けながら腰が揺れる。 上体を起こしたヤマトが俺の耳元で甘く囁いた。 「夜は長い。ゆっくり、愛してやろう」 ◆ヤマ主(R18) 仰向けに寝ながら両手を差し出す。 ジプスの特徴ある無駄に長いネクタイをヤマトが俺の両手首に巻きつけていく。 ぐっと上へ引き上げられてベッドヘッドに括り付けられた。 「さて、どんな気分だ」 「…ちょっとぞくぞくする、かも」 「好き者め」 「そういうヤマトだって悪い顔してる」 「フ…否定はしない」 縛りプレイなんてどうかしていると思いながらも、 これぐらいの拘束なら、まぁいいかと頷いたのは俺自身で。 間違いなくこれは同意の上の行為だった。 ものの数分で、後悔することになったが。 「っ、フフ…やってくれたな…!どうやらこちらも拘束してほしいようだ」 「い、つもより…っ、焦らすから…ァっ!」 思わず目の前の男の腹に蹴りを入れてしまった。 俺の右足首を掴んだヤマトの手に力が籠もり骨が軋む。 言葉通りだ、自由を奪われた状態で決定的な刺激をもらえないのは想像以上に堪えた。 耳を舐められ齧られ、胸ばかりしつこいぐらいに弄られて。 ヤマトの手は胸、肋、腰、腹を撫でるばかりで。 何度訴えても聞いてくれなかったヤマトが悪い、と思う。 ただ、蹴ってしまったことでヤマトの何かのスイッチを押した事実にも気がついた。 嗜虐を滲ませたヤマトの笑みに本気で腰が引ける。 「ああ、粗相しないように、ここも戒めるか」 「っ!やめ…っ」 ヤマトの手にいつの間にかコートの飾り紐が握られていた。 それを俺の震える昂ぶりの根元に絡めてくる。 必死に縛られた腕を動かし足をばたつかせてみても、言葉で制止しても無駄だった。 俺の身体を押さえ込みながらその紐は巻きつけられてしまった。 「さて、触れてほしいのだろう」 「や、だ…っ、ひ…っ」 そして先程までは欲しくてたまらなかった直接的な刺激を与えられる。 ぐん、と硬度を増したせいで根元の締め付けが苦しい。 「ぅあっ、や、ぁ、はずし、てっ…ァ、あ…っ」 「いい機会だ、少しは我慢を覚えるといい」 愉しげなヤマトの声が胸元でして、がり、と胸の先端を噛まれた。 痛みと快感に身体が大きく跳ねる。 先走りが溢れてヤマトの手が動くたびに、ぐちゃぐちゃと濡れた音が響く。 いつもならとっくに吐き出せるそれが今は吐き出せない。 下腹部に熱が溜まっていくだけで。 顔を左右に振って、手のひらに爪を立てる。 唇を噛み締めて耐えようとして、耐えられずに声を上げる。 「さあ、どうしてほしい…?」 言ってみろ、全て叶えよう。 その声はまるで、悪魔の囁きのようだった。 ◆ヤマ主 5月23日はキスの日。 日本で初めてキスシーンが登場する映画が初めて上映された日が由来、だそうだ。 折角相手がいるんだし、とヤマトに話してみれば、 口付けを交わす為に私に会いにきたのか、などと言われて。 全くその通りなんだけど、面と向かって言われると照れる。 そうだよとやけになってヤマトの正面に立って、少しだけ顔を上向ける。 意識すると、ヤマトとの身長差だとか、薄い唇だとか、 普段あまり気にしていないことが気になって妙に緊張する。 ふっとヤマトの表情が緩む。ヤマトの指先が俺の顎をすくった。 反射的に目を閉じれば、直ぐに柔く温かいものが自分の唇に重なった。 「…どうした、口を開け」 唇を触れ合わせたまま、ヤマトが催促してくる。 無意識に口を固く閉じていたらしい。 瞬くとヤマトと視線が交差した。僅かに距離を取ってふっと息を吐く。 「ごめん、なんか今日、俺、変だ…」 そう言ってから小さく口を開くと、今度は深くヤマトの唇と合わさる。 『いつもはどんな風にキスしてたっけ』 ヤマトの舌が口内をまさぐってくる。多分いつも通り。 自分がそれにどう応えていたのか分からなくなった。 「いつもよりも熱いな…舌使いも拙くなっているぞ」 からかうように囁いてくるヤマトは何故か上機嫌だ。 「ん…なに…?」 「いや、恥じらうお前も悪くない、とな」 嬉しげにそう言うヤマトに眉を寄せる。 「慣れた俺には飽きた?」 意図せず拗ねたような声になってしまった。 ヤマトは可笑しそうに喉を鳴らす。 まさかと笑って噛み付かれた。 ◆ヤマ主 宅配ピザが届いた。飲み物を用意していたヤマトが興味深げに覗き込んでくる。 一枚で四種類の味が楽しめるものと長方形のものだ。 「いただきます。ヤマトも好きなのどうぞ」 「ああ」 俺は長方形のやつを一切れとって齧り付いた。 「これは使用しないのか」 ヤマトが手に持っていたのは使い切タイプのオリーブオイル。 「ん、別にいいや」 かけなくても美味しい。一切れ食べ終わり違う種類に手を伸ばす。 ヤマトは何が気になるのかオリーブオイルのパックを手に持ったまま、ふむ、と頷いた。 「使えそうだな」 不穏なヤマトの呟きに電光石火のごとく反応した俺は、 ヤマトの手からそれを奪い取って全てピザに振りかけてやった。 「何を慌てている」 「別に。いいからヤマトも食べろって!」 ほら、と新しいピザを手に取ってヤマトの口に近付けてやると、 大きく口を開けて三分の一を口内におさめた。 ゆっくり咀嚼して飲みこむ。口端についてしまったチーズを指で拭う。 「ふむ、なかなか美味だな」 ヤマトの一連の行動に見惚れてしまったなんて、口が裂けても言えない。 ●ヤマ主は『どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋』に入ってしまいました。 20分以内に実行してください。 「ヤマト愛してるーー!!あ、ドア開いた」 「――こんな場所でなく褥で聞いてみたいものだが」 「…顔怖いぞヤマト」 「面白くはないな」 ●ウサミミにヤマトは瞑った瞼の上にキスをして、それから思い切り抱き締めました ヤマトが指先で俺の頬をなぞって目尻に触れてくる。 促されているように感じて瞼を閉じると、待っていたように僅かに濡れた柔いものが押し付けられた。 ちゅ、とリップ音を立てて両瞼に落とされた後、身体が引き寄せられて強く抱きしめられる。 苦しいと訴えたら、ただ名前を囁かれてその甘さに言葉を失った。 ●お題『ついつい手が出る』 ヤマトの髪は手触りが良い。頭頂部の跳ねた部分を触るのも好きだ。 時々無性にこの部分を撫でたくなって我慢出来ずつい手が出て、ヤマトには不審がられたり。 今は腿の上にヤマトの頭を乗っけているので触り放題。 「お前は私の髪が好きだな」 複雑そうに呟くのでお前が好きなんだと背を丸めて額にキスを1つ落とした。