それを人は運命と呼ぶのでしょう<1>





『――――そうだ、気象庁に入ろう』 漠然とした将来のことしか考えていなかった自分が、 何故突然そう思ったのか、よく解らない。 だが間違いなくこれは自分の望みだと、強く確信している。 それは晩秋の日曜日、模擬試験の帰り道で自分の中に芽生えた想いだった。 本当に、何故気象庁なのか。 国家公務員になりたい、と考えるのならまだ解る。 だが大切なのは『気象庁』なのだと、訴えかける何かが自分の中にあった。 今までは明確な希望を持っていなかった為、親が望むとおり一流大学に入って 一流企業に就職、という道を辿るつもりだった。 大学へ進学することには変わりない。 調べてみると、気象庁に入省するには人事院主催の国家公務員試験に合格する必要があり、 総合職では「工学」及び「数理科学・物理・地球科学」からの採用を計画、とある。 試験に合格後、採用面接もあるようだが、それはその時に考えることにする。 大学は理学部に入ることにして、大学に入ってからも出来る限り勉強して。 どんなに急いでも4年後。遅いような気がするのはどうしてだろうか。 そういえば、俺がこんな風に自分の将来を考え始めたように、 友達である志島大地も自分の将来に真剣に向き合う姿を見せ始めていて。 不思議なものだと思う。そうした考えに至った原因が自分の中には無いのだから。 不思議といえば、もう一つあった。 その頃から俺は同じ夢を何度も見るようになった。その夢は妙に現実味があって。 俺は誰かに手を差し伸べられていて、その手を俺は取らなかった。 そして時間が経過する。今度は俺がその相手に手を差し伸べる。 相手は、迷いながらも俺の手を取ってくれた。そんな夢だ。 相手の性別も、顔も勿論解らない。 ただその相手は、俺にとって大切な存在だったのだろうと、それだけは解った。 手を取ってくれた、その時自分が抱いた感情、それは喜びだったから。 もしかすると、その人物と気象庁が関係しているのかもしれない。 そうであるなら、その場所へ辿り着いたとき、その人に逢えるのだろう。 そんな不確かなものだけを心に抱いて、俺は覚悟を決めた。 それからは死に物狂いで勉強した。 元々成績は良かったし理系も得意科目だったので大学には問題なく入れた。 大学に入ってからも勉強した。独学だが政治経済、法律なども無理のない範囲で勉強した。 遊ぶ暇など勿論なく、時折友達の大地や新田維緒と会って3人でお茶をするぐらいで。 親にはぎりぎりまで黙っていた。普段から会話もあまり無かったので不自然ではなかっただろう。 そして時は過ぎ、無事国家公務員試験に合格し、採用面接の日程も決まった後、親に報告した。 両親の鳩が豆鉄砲を食ったような顔は一生忘れられないだろう。 予想通り親は反対した。だが、俺はどちらでも構わなかったので落ち着いていた。 賛成だろうと反対だろうと、大学を卒業したら家を出るつもりだったからだ。 長期休暇の時にアルバイトをしてお金は貯めていた。借りる部屋も目星を付けている。 今この時まで俺は両親に対して反抗を見せたことが殆ど無かった為、2人は相当驚いていたようだ。 結局、面接に受からなかった時には企業に就職しろとそれだけ言われてその場はお開きになった。 受かる自信が無ければ家を出る準備はしない。当然、俺は気象庁への入省が決まった。 だが俺はその後、想像もつかない世界へ足を踏み入れることとなる。 入省してすぐに、政府機密機関の総統を名乗る青年が現れ、俺をスカウトしてきたからだ。 入省して、説明を受けたり健康診断を受けたりと慌しい日々が過ぎたある日。 俺はまだ実家を出ていなかった。 色々あって忙しかったのと、一応両親を説得した形になったので急いで家を出る必要が無くなった為だ。 そろそろ部屋の契約に行こうか、そう考えていた時だった。 上司に客が来ていると告げられて入った応接室。 「君が、司 皓稀くん、だな」 応接室で俺を待っていたのは、自分と同年代に見える、黒いコートを身に纏った青年だった。 青年は名刺を手に峰津院大和と名乗り、ある政府機密機関の総統であることを告げた。 「私は君を、スカウトしに来た」 そう言って、青年は白い手袋をはめた手を俺に向けて差し出す。 その姿を目にした瞬間、俺は息を呑んだ。 既視感。それがずっと夢に見てきた光景と被ったのだと理解し、胸が熱くなった。 初めて出逢った筈の青年にどうしようもない懐かしさを感じる。 やっと出逢えた、そう思った。この青年に出逢う為に、自分はここに辿り着いたのだと。 奇妙な高揚感に包まれて黙り込んだ俺を青年は黙って見つめていた。 青年も、不思議な表情をしていた。目を細め、まるで眩しいものでも見ているかのような表情。 青年の唇が僅かに動いた。音を発することは無かったが、ようやく見つけた、そう動いたように感じた。 お互いに立ち尽くし、見詰め合う。ふと我に返り、先に声を発したのは自分だった。 「スカウト…とは?」 聞き返した俺に、青年は何事も無かったように俺に対面に座るよう促してきた。 気象庁・指定地磁気調査部、通称ジプス。それが政府機密機関の名称であるらしい。 古来より日本の霊的守護を担ってきたというこの組織の局員は、 各界の優秀な人間をスカウトすることで構成されているとのことだ。 スカウトする人材は、有能であることは勿論、ある適性が重要視されていて、 それらの適性の有無について、全国の主な公共機関や巨大企業などからデータが ジプスに定期的に送られてくるようになっているそうだ。 表向きは『健康診断』として、適性検査が行われているらしい。 俺の場合も先日受けた健康診断によって、それが判明したのだろう。 ある適性、それは魔力と呼ばれる力のことで、その数値が高いほど 『悪魔』と呼ばれる存在を使役する為の素質に繋がるのだという。 霊的守護、悪魔。普通はそんなことを急に言われても信じられないだろう。 だが俺は青年が話す内容全てを何の疑いも無く信じることが出来た。 1つ1つ丁寧に説明する青年の真剣な表情が、冗談などではなく真実だと告げている気がした。 「君の適性値は非常に高い、私に比肩しうる数値だ。  適性だけでなく、君は随分と優秀なようだ。私は君に期待している。  だが、君の意思を尊重しよう、この話を断ってくれても構わない。  この場ですぐに結論を出せと言うつもりはない。  時間が必要だというのであれば、遠慮せず言ってほしい」 そうして青年は俺の答えを待つように口を閉じた。 正直に言うと、俺の答えはもう決まっていた。それこそ青年と出逢った瞬間に。 俺は青年の瞳を見つめながら口を開く。 「その話、お受けします」 俺の即答に驚いたのか青年は目を瞠ったが、直ぐに目元を緩ませて、 「君は聡明な男のようだな」 と、満足気に頷いた。 「では、本日付で処理して構わないな」 「はい、お願いします」 「話は付けておく。君は挨拶だけ済ませておくといい。  ああ、それと。君は現在両親と同居しているようだが機密の問題がある、  こちらで部屋を用意するので、できればそこへ移ってもらいたい」 「わかりました。あ、両親にはどう言えばいいでしょうか」 「ジプスは機密機関だが国家公務員であることに変わりは無い。  君さえ良ければこちらから機密に触れぬ範囲で説明することも可能だが、どうする」 「………お願いできますか?その、色々と厄介な両親でして」 「フ、いいだろう。……不思議な男だな、君は。  俗人ならば俄には信じられぬ話だと思うが、君は私の言葉に疑心を抱いたりはしないのか?」 「自分でも何故か説明は出来ませんが、多分、他でもない貴方の言葉だからだと思います。  貴方とは、初めて出逢った様な気がしないんです…変な話ですけど」 「確かに妙な話だ…そうか、君も、そう感じるのだな」 「え?」 「戯言だ、忘れてくれ」 話はあっという間に進んだ。 青年の言葉がそのまま自分の希望通りだったからだろう。 流石にそんな俺の態度が不思議だったのか、青年から問い掛けられたが、 俺自身にも理解出来ない何かを感じることを正直に伝えると、青年はどこか納得したようだった。 その日は青年に言われた通りに、僅かな期間ではあったが世話になった上司に挨拶を済ませて帰宅した。 そして翌日、青年が寄越してくれたのだろう、恐らくジプスの局員で、 俺の両親と同年代ぐらいの男性が家にやってきて、うまく説明をしてくれた。 俺は必要最低限の物を鞄に詰めて、住み慣れた家を出たのだった。 案内されたジプス東京支局は国会議事堂の地下にあった。 専用エレベーターで地下へ、エレベーターから降りて廊下を進むと壮麗なエントランス。 そこで先日出逢った青年、大和が俺を待っていた。 ここまで俺を案内してくれた局員に下がれと命じ、改めて大和は口を開いた。 「君を歓迎する、司くん」 「宜しくお願いします」 頭を下げて挨拶をして、俺は目の前の上機嫌に見える大和と視線を合わせた。 俺の気のせいでなければ、大和の態度は先ほどの局員に対するものと俺に対するものとでかなり違うなと感じる。 出逢ったばかりにしては、俺は大和に気に入られすぎている。 そしてその事実を俺自身が嬉しく思っていることにも気付いた。 「迫、彼を部屋へ案内した後、例の場所へ連れて来るように。では司くん、後ほど」 大和は後ろに控えていた女性にそう指示して、俺に声を掛けてから背を向け立ち去った。 迫、と呼ばれた女性は俺の近くまで歩み寄り右手を差し出してきた。 「私は迫 真琴だ。当分の間は私が君の上司という形になる、これからよろしく頼む」 「こちらこそ宜しくお願いします」 俺は差し出された手を握り返して、にこりと笑って見せた。 「…君は、物怖じをしない人間のようだな、  私が初めてこの場所へ足を踏み入れた時は、随分驚いたものだが」 真琴はそう言って小さく微笑んで、エントランスの奥へと歩き出した。 俺はその後に続きながら答えを返す。 「人並みには驚いてますよ、あまり顔に出ないだけで」 「そうなのか?しかし、局長が君に期待を寄せる理由が解る気がする」 「え?」 「局長から説明を受けたとは思うが、ジプスの局員には霊力と呼ばれる資質が重要視されている。  有能なだけでは駄目なのだ。君にはその資質があるだけでなく、君の霊力は並外れて高いという。  それに加えて君の泰然とした態度、局長が期待されるのも当然だろう」 「それはまた……期待を裏切らないよう、頑張ります」 「プレッシャーを与えてしまったようだな、すまない」 真琴との会話は、お互い初めて出逢ったとは思えないほど自然に交わされた。 大和と出逢った時程強くはないが、俺は真琴にも懐かしさのようなものを感じていた。 会話をしながら歩いていると、エントランスに負けず劣らずの空間に出た。 ここは司令室だという。そこを通り過ぎると、小さな部屋がいくつもある場所に辿り着いた。 そのうちの1つのドアの前に立って、真琴はIDカードのようなものでロックを解除してドアを開いた。 「ここが君の部屋になる。これは君の社員証だ、渡しておこう」 真琴は先程ドアを開けるのに使ったカードを俺に渡してきた。 受け取って確認すると、確かに社員証で自分の顔写真付きだった。 部屋に入って中を確認する。ベッドと小さな机に椅子、収納スペース。 とりあえず持っていた鞄をベッドの傍に置くと、真琴が声を掛けてきた。 「すまないが局長がお待ちだ、荷物の整理は後にしてもらえるだろうか」 「はい、分かりました」 返事をしながら、そういえば大和が例の場所へ連れて来るように、と真琴に言っていたことを思い出した。 「聞いても構わないですか?」 気になって問いかけると、真琴は真剣な表情でこう告げた。 「これから君には悪魔を召喚してもらう」 俺はぱちりと瞬いた。 真琴に連れられてやってきた部屋。 その部屋は広く、中央に大きな魔法陣と呼ばれるものだろうか、 円と紋様と文字を組み合わせたものが描かれており、その周りを様々な機材が取り囲む形で配置されている。 何人かのジプスの局員がそれらの機材の前にいて、その中で一際目立つ女性が視界に飛び込んできた。 白いチャイナドレス、肩に黒いコートを羽織ったその女性はモニターから目を離さない。 「局長、お待たせしました」 真琴が部屋の魔法陣のすぐ傍に立っていた大和に声を掛けた。 大和は振り向き軽く頷くと、 「司くん、こちらへ」 そう俺に呼びかけてきた。真琴は入口付近に立ったままだ。俺は大和の傍へ歩み寄った。 「迫から聞いているな」 「はい。悪魔を召喚する、と聞きました」 「そうだ。ジプスでは専用のプログラムをインストールした携帯電話で悪魔を召喚することが出来る。  だが、そのプログラムは汎用性を重視している関係で高位の悪魔を召喚することは出来ない。  そこで今回は、この魔法陣を使用して悪魔を召喚してもらう。方法は簡単だ。  君は魔法陣の中央に立ち、強く願うだけでいい。君の思念と君自身の魔力に応えて悪魔は召喚される。  召喚した悪魔を君が制御出来なかった場合のリスクはあるが、その場合の対処はこちらで行う。  ……君ならば、問題は無いと思うが。以上だ、質問はあるか?」 大和から説明を受けて、俺は静かに頷いた。大和は目を細め、よろしい、と言って俺を促す。 俺は魔法陣の中央に足を運んだ。魔法陣はぼんやりと青白い光を放っている。 中央に立ち、こちらを見つめる大和を見返した。 「菅野、準備はいいな」 「おっけ〜いつでもどーぞ」 どうやらチャイナドレスの女性は菅野という名前らしい。大和の声に緊張感の無い声で答えていた。 「では司くん、始めてくれ」 大和に言われて俺は目を閉じた。 悪魔を召喚する、なんて具体的にどうすればいいのかさっぱり分からなかったが、 悪魔と呼ばれる架空のものだと思っていたその存在を、イメージしてみる。 そうすると、自分の中で何かが膨れ上がるような感覚に襲われた。 ごおっ、と風が鳴る。バチバチと火花が散るような音。 周りの慌てたような局員達の声が耳に届く中、俺は突如現れた圧倒的な存在感に目を開いた。 そこに在ったのは、人型の『悪魔』。 金色の長い髪、青い肌。紫色の道化のような衣装を纏い、背には大きな蝙蝠の翼。 「魔王・ロキです!」 局員が叫ぶ。室内は騒然としていた。入口に立つ真琴も驚いているようだ。 そんな中、大和と菅野と呼ばれた女性だけは平然としていた。寧ろ2人は楽しげだった。 菅野という女性はモニターを見つめ目を輝かせている。そして大和は俺を見つめ、満足そうに微笑んだ。 俺は自分が召喚した悪魔に視線を移した。悪魔―ロキは値踏みするように俺を見て、にやりと笑った。 『オレを喚んだってことは、この場を引っ掻き回しゃァいいってことかい?』 ロキの声が室内に響く。そして、ロキの頭上に光の塊が現れた。 それは炎を凝縮したような光で室内の温度がどんどん上がっていく。 「あれは…っ、メギドラオンの光では…!?」 「局長!!彼は悪魔を制御できていないのでは!!」 「危険です!局長は早く退避を……!!」 局員達が口々に叫ぶが、チャイナドレスの女性と大和は事の成り行きを黙って見ているだけだ。 真琴は大和の傍に駆け寄り少しだけ心配そうな顔で指示を仰いでいた。 ロキは室内の様子を愉しげに見つめている。 召喚した時に脳内にロキの情報が流れ込んできたので、既に目の前の悪魔がどんな性質のものか理解している。 からかっているだけなのだろう、この場にいる人間を。 「ロキ、もういいだろう?」 俺は、そう一言だけ声に出した。それだけでこの悪魔を止められることを俺は信じて疑わなかった。 『しょうがねーな!』 ロキの呟きと共に光は忽然として消えうせた。室内には熱気だけが残る。 「次に喚ぶ時は、ちゃんと力を見せてもらうから」 俺はロキに声を掛けて、帰還を願った。するとロキの身体を構成していたものが解けていく。 また喚べよ、と脳内に声が響いて、ロキの姿は完全に消失した。 は、と息を吐く。俺の身体はまるで短距離を走った時のような疲労感に包まれていた。 悪魔の召喚というのはそれなりに疲れるもののようだ。 「あ、お騒がせしました」 周りからのどこか恐れの入り混じったような視線に気付いて、俺はとりあえず頭を下げてみる。 大和が歩み寄ってきて、ご苦労だったと俺に声を掛けた後、菅野という女性の傍へと歩いていった。 「どうだ?」 「局長、よく見つけてきたね〜大したモンだわ、アイツ。  この霊力値ならもっと高位の悪魔を召喚出来ても可笑しくないけど、無意識下でセーブしてる。  部屋とか局員とか、不測の事態の心配でもしたんじゃない?  さっき見た通り、制御の心配もなさそうだね〜。  局長、もうアタシ帰ってもいい?今日取ったデータ早く整理したいから」 「いいだろう。整理が済み次第報告を」 「りょーかい〜」 会話が終わった二人が俺に視線を投げてきた。チャイナドレスの女性がこちらに近寄ってくる。 「司 皓稀だっけ。アタシ菅野 史、よろしく。普段は名古屋支局にいるんだけどね〜  わざわざ出向いた甲斐あった。今度実験体になってよ」 菅野史と名乗った女性は俺に手を差し出しながら軽い調子で話し掛けてきた。 会話の中に実験体という物騒な単語が混じっていたことが気になりつつも、 俺はその手を握りよろしくと言葉を返した。 これで3人目だ、と思う。この史という女性にも俺は親しみを感じていた。 史は、じゃーね〜と手を振って部屋を出て行った。 「今日は疲れただろう、自室で休むといい。  明日からは通常業務についてもらう。君には期待しているぞ、司くん」 大和が俺の肩に手を置いて耳元でそう囁いてきた。そして周りの局員へ指示を飛ばし始める。 ぼんやりその様子を見ていると真琴に声を掛けられて、俺は真琴と一緒に部屋を出た。 「君には驚かされる、想像以上だった」 自室へと向かう途中、真琴が感心したような声で呟く。 「自分でも驚いてます」 「そうか?私には落ち着いて見える。  君ならば、局長の傍に立つことが出来るのかもしれないな」 「え?」 「あの方は…強い。それ故、孤独だ。局長が本当の意味で心を許す相手はいないのだろう。  君は局長と同年代だ、その上、天性の資質を持っている。  君とは出逢ったばかりで何故こう思うのか不思議なのだが…  局長と君が出逢ったのは必然だったのではないかと、私はそう思うのだ」 「…同年代?」 「確か、君は局長より1つ年上だった筈だ」 「……1つ、年下だったんですね、局長さん。全然そうは見えないですけど」 「あの方は大人びておられるからな」 話の中で大和の年齢を知り、少しだけ驚く。年下だとは思わなかった。 真琴の言葉は嬉しかった。俺自身も、いつか大和の隣に立つことが出来たらと思っていたからだ。 本当に不思議な感覚だ。出逢ったばかりであるはずなのに、こんなにも大和のことが気になる。 話しているうちに、自室に辿り着いた。 「では、今日はゆっくり休んでくれ。明日の朝、ここで落ち合うとしよう」 「はい、改めて、宜しくお願いします」 「こちらこそ、宜しく頼む。明日からは忙しくなるだろう、覚悟しておくといい」 「わかりました」 真琴と部屋の前で別れた後、俺は室内へと入った。 そのままベッドへと倒れこむ。どっと疲れが押し寄せてきた。 早く大和と気軽に話せるようになるといいな、そんなことを考えているうちに 俺の意識はゆっくりと沈んでいった。 <2>へ続く