時折、俺はヤマトを押し倒す。 俺がヤマトを抱く、という意味ではない。単純に行為の主導権を俺が握るということだ。 その時は受け入れる側であっても、ヤマトを抱いている感覚に近いのかもしれないが。 俺が主導権を握って行為を進めれば、身体に受ける刺激――快楽を調節できるし、 そうすることで声を堪えやすくなり余裕も生まれて、感じるヤマトの姿を堪能できる。 普段の与えられるばかりの行為の最中は、愛撫によって生じた快楽に乱れた思考、自分の呼吸や声が邪魔をして、 かろうじてそれを与えるのがヤマトだと認識するので精一杯だ。 ヤマトが俺に聞かせる意図を持って囁く声は耳に届いたが、ヤマトの快楽に染まった声というのはあまり聞けない。 俺には声を出せと強請るくせに、ヤマトは呼吸を僅かに乱すだけ。 視界は涙で滲み、快楽に溺れてしまえば俺に判るのは俺を求めるヤマトの熱い身体だけだ。 だからこそ俺は無性にヤマトが俺に感じている姿が見たい、感じている声が聞きたいと思うことがある。 それを叶える方法が、ヤマトの上に乗って自分で動く――所謂騎乗位というやつだった。 自分で動くことに抵抗は少なかった。 初めてヤマトと性行為をすることになった時は散々尻込みをしたものの、 一度身体を繋げてしまえばそれまでの抵抗が嘘のように、俺はヤマトを求めるようになった。 何度目の時だったか、ヤマトに聞かれたことがある。 君の男としての性的欲求はどう処理しているのか、と。 言われて、そういえば最近自分で処理することが無くなったなと気付き、 それは全てヤマトが熱心に俺の身体を愛撫するからであり、勿論後ろだけでなく前も触ってくれるので そのことで俺の男としての欲求は満たされていたんだと納得するに至った。 俺がヤマトに遠慮して今の関係を受け入れているのだと思っていたらしいので、望んで受け入れていることを伝えた。 ヤマトと抱き合うことは気持ちが良い。不思議とヤマトに挿入れたいとは思わなくて、 それは受け身の良さを知ってしまったからなのかもしれない。 時間が経って、触れられる事も良いが、自分から積極的に触れたいという気持ちにも気付く。 ただ与えられるよりも与えたい、それが俺の男としての部分なのだと思う。 ベッドにヤマトの身体を仰向けに押し倒して、ベルトを引き抜きズボンのチャックを下げて 下着の中からまだ軟らかいそれを取り出す。 ヤマトは少しだけ上半身を起こして俺の行動を見守っていた。 手に取ったヤマト自身を何度か優しく擦って、硬くなった所で先端にちゅ、と口付けを落とす。 そして躊躇いなく大きく口を開けてヤマトの熱塊を口内に迎え入れる。 舌で先端の窪みを舐めて、くびれた部分も丁寧に舐める。 先の部分を口に含みながら裏筋を指の腹で擽って、下の袋も撫でる。 喉の奥ギリギリまで頬張って軽く上下に頭を揺らすと、耳に微かな声が届いた。 耳を澄ましながらヤマトのものを舐っていると、少しずつヤマトの呼吸が速くなってくるのが分かる。 耐えられない、と言うようにヤマトが俺の髪を控えめに掴んできた。 それを合図に最後に全体を舐め上げるようにして含んでいたヤマトの熱を口内から出して、 自分のズボンのポケットから入れておいたゴムを出して手早くヤマトに被せる。 そして俺は自分のズボンを下着と一緒に脱いでベッドの下に投げて、 ヤマトの肩を押して寝かせた状態にして、その身体を跨ぐようにしてヤマトの腹に腰を落とした。 ヤマトのシャツを捲り上げて剥き出しになった胸を手のひらで撫でる。 ひゅっとヤマトが息を呑むのに小さく笑って、ヤマトの熱を煽るように手触りの良い肌を何度も撫でる。 「っ、ユキト…」 「うん」 目尻を紅く染めて切なげに俺の名を呼ぶヤマトを、俺も熱っぽく見つめる。 俺自身も既に熱く張り詰めていて、興奮を隠しきれない。 腰を浮かせて、右手を後ろにやってヤマトの熱に手を添えて、 左手で自分の尻臀を掴んで拡げて、予め準備してきたその窪みにヤマトの熱を宛がう。 「ヤマト」 名前を呼んで、ヤマトの言葉を強請った。 ごくりとヤマトの喉が動く。熱い息を吐いて、 「私を、君の中へ、挿入れてくれ」 そう言った後、ヤマトは目を細め口元に薄く笑みを浮かべた。 それに応えるように小さく笑って、俺はゆっくりと腰を落とした。 狭い入口が限界まで広がって、ヤマトの熱を俺の身体は少しずつ受け入れていく。 息を吐き出して根元まで埋めて、俺はヤマトの腹に両手を着いて顔を上げた。 ヤマトは眉を寄せ、静かに呼吸を繰り返している。 それを乱したくて俺は身体を思い切り上下に揺らした。 「―――っ!」 ヤマトが息を呑む。 俺も同じ様に息を呑んで身体の中を走った痺れるような甘い感覚に耐えて、そのまま大きく腰を動かした。 締めながらぎりぎりまで引き抜いて、弛めて勢いよく腰を落とす。 俺は浅い所を突かれるのが好きだったが、ヤマトは奥まで挿入れるのが好きなので、 ヤマトが満足する方を選んだ。身体の奥まで貫かれるのは苦しいが、苦しいだけでなく快楽もある。 そっとヤマトの顔を見ると、ヤマトは目を閉じて、薄く唇を開いて小さく堪えきれない声を零していた。 俺が喘ぐ声に比べれば本当に小さな、だが確かな快楽を告げる声に俺の心は満たされていく。 ヤマトは躊躇いがちに伸ばした手で俺の脚を撫でる。 俺が主導権を握る時、ヤマトは俺が満足するまで積極的に動くことは無い。 俺の気持ちを尊重してくれる。 だから、満足した俺は繋がったまま身体を倒してヤマトの唇に軽く口付けて囁く。 「お待たせ、ヤマト」 それを聞いたヤマトは、もういいのか、と確認の言葉を口にして、俺が頷くと、 ヤマトは俺の腰を両手で掴んで支えてから上半身を起こして、座位の状態でそのまま激しく突き上げてきた。 喉を逸らして声を上げた俺の身体をしっかりと抱き締めたまま揺さぶって、鎖骨に歯を立てられる。 俺はヤマトの頭を胸に抱きこむ形でしがみついて、与えられる刺激に溺れた。 こうなってしまうとヤマトの声は遠くなる。荒れた呼吸もどちらのものか判らなくて、 俺の中心に絡みつく手の感触と、俺を貫く熱が体積を増したことに気付いて、 気付いた瞬間に一気に快楽が身体を駆け抜けて、俺は吐精した。 ヤマトも身体を震わせて熱い吐息を漏らす。身体の内部で同じ様に震えたそれにヤマトも達したのだと分かった。 ぎゅっと俺を一度抱き締めた後、ヤマトは俺の腰を掴んで自らの腰を引いて、ずるりと俺の中から引き抜いた。 まだ僅かに硬さの残ったヤマト自身を目にして、俺はゴムを外してヤマト自身の精液に塗れたそれをぱくりと銜える。 驚いたような声音で俺の名を呼んだヤマトに構わず、ちゅうと出し切れていなかった残りの精液を吸い取った。 余計な刺激は与えずに顔を離し、独特の苦みのあるそれをごくんと唾液と一緒に飲み込んで唇に付いたものも舐める。 「…君は、時折酷く積極的だな」 少し困ったような顔で口元を緩めながらヤマトが呟いて、俺の唇を指の腹で拭ってくれる。 俺は顔を傾げて口を開いた。 「止めてほしい?」 「いや。煽った責任は取ってくれるのだろう?」 「勿論……と言いたいところだけど、お手柔らかに?」 「さて、それは君次第だ」 俺の言葉にヤマトはそんな風に返してきた。どうやらヤマトの情欲に火を点けてしまったらしい。 顔を近づけてきたヤマトは俺の唇に唇を重ねてくる。促されるままに舌を出し、絡めて、離れる。 「お前の味、するだろ」 「不思議なものだな。君のものであれば美味なのだが…」 「…時々お前の味覚が心配になるよ」 軽口を叩きながら身体を寄せてもう一度唇を重ねる。 そのまま押し倒される時に、手に持っていた使用済みのゴムの存在に気付いて零れないように素早く口を縛ると ヤマトがそれを奪い取ってベッドの傍においてあったゴミ箱へと捨ててくれた。 一旦身体を離してヤマトはシャツを脱ぐ。俺も同じ様にシャツを脱いだ。 ヤマトと違って俺はそれで素っ裸になったが、どうせ直ぐに気にならなくなると開き直ってヤマトに手を伸ばす。 覆い被さってくるヤマトを優しく抱きとめた。 欲は尽きることなく、溢れるばかり。 あまりえろくないえろ。主人公は男前であり可愛くもあり。