『あらゆる面倒を見てもらってる、か……』 ダイチには冗談を交えてそう言ったが、 実際の所、冗談などでは決してなかった。 ジプスという組織は世界が変わった今も存在していた。 ポラリスの力で無に呑まれた場所は戻ってきたが、 セプテントリオンや悪魔、人々の暴動による各地の傷跡はそのままだ。 そして、この災害の際に与えられたニカイアによる 悪魔召喚アプリは人間の手に残されていた。 それらの扱いにはジプスという組織は不可欠であり、 また、アプリによって自由を得た悪魔への対処も含めて 現在失われたままの都市の結界も復旧させる必要があり、 残された僅かな人員でジプスは変わらず活動していた。 そんなジプスの医療スタッフに俺は暫く世話になっていた。 自分1人の力で立ち上がれない有り様だったのでそれは色々と。 霊的治療等のおかげか、一般的な治療を施されるよりも回復は早く、 何かの支えがあれば通常の生活も送れるようになった時、 ヤマトが俺の面倒を見ると言い出した。 確かに1人で生活するのはまだ大変で、リハビリも必要だった。 だがヤマトはジプスの局長であり、今も多忙なのは知っている。 これ以上ヤマトに負担を掛けたくはない、 そう思って断ろうとしたがヤマトは譲らなかった。 『私は、君がいるから生きている。 君の為に何も出来ぬのなら、生きる意味はもはや無い』 そんなことを言われてしまえば、拒むことは出来なかった。 俺は、ジプス東京支局にあるヤマトの私室で暮らしている。 余談だが、俺の両親は消息不明とのことで、おそらくもう会うことも ないだろうと受け入れていたので自宅に戻ることは考えなかった。 ヤマトが使っている私室は広く、ベッドも2人一緒に横になっても 余るような大きさだったので特に不便だと感じることはない。 日に3度の食事、昼食と夕食の間に1度、就寝前の数時間。 ヤマトは必ず部屋に戻ってきて俺の面倒を見る。 支えがあれば歩けるとはいっても、自由にあちこち動けるほどではないので 俺はヤマトの私室で1日を過ごしていた。 部屋には洗面所も風呂もある。 リハビリがてら部屋の中を歩いたり、読書したり。 特に何も言わなくても、ヤマトは時折俺を屋外へ連れ出してくれる。 外の空気を吸って、散歩して、そうしてこの部屋へ帰る。 本当に、至れり尽くせりだった。 『風呂に一緒に入るのも慣れたよな』 湯船に浸かりながらぼんやり思った。 背中には人の温もり。ヤマトの胸に背中を預ける形で2人一緒に浸かっている。 ヤマトの腕は支えるように俺の腹にゆったりと回されていた。 用を足す時は、殆ど意地で1人でなんとかしたが、 (勿論怪我が酷い時は医療スタッフの皆様にお世話になりました) 風呂の方は、ヤマトの部屋で暮らすことになった初日、 心配するヤマトを説き伏せて1人で入って、派手に転倒してしまい、 1人で入ることは禁止されてしまった。 そうなると、自分だけ全裸を晒すのはなんだか悔しかったので ヤマトに一緒に入ろうと誘ってみたところ、暫く眉間に皺を寄せていたが 俺の思惑が伝わったのか、仕方ないといった感じに頷いてくれて、 風呂にはヤマトと一緒に入ることになっている。 初めのうちは妙な恥ずかしさがあったが、ヤマトの様子は常と変わらず 俺を気遣い、手を貸してくれているのがわかるので、 次第に感謝の気持ちだけが胸を満たしていった。 ―――恥ずかしさの理由が何であるのか、俺は既に理解している。 俺はヤマトのことが好きだ。 それは友人としてではなく、異性に抱く愛情に近いのかもしれないが、 きっとそれともまた違うんだろう。 では何なのか、と言われると俺にもわからない。 ただ、綺麗な感情だけでは無いことはわかる。 ヤマトに負担を掛けていることに対して申し訳ない気持ちは当然あるが、 ヤマトが俺の為に時間を割いてくれている、その事実を嬉しく思う気持ちもある。 だから俺は満たされているが、ヤマトはどうなのだろう。 そういえば、ヤマトはいつも俺が命を助けたから俺の為に生きているのだと言うが、 本当にそれだけの理由でヤマトは俺の傍にいるのだろうか。 俺が望んだのはヤマトの生。 ヤマト自身を俺に縛り付ける為ではなく、ただ生きていてほしいと願っただけだ。 『聞けば、答えてくれるかな……』 ヤマトはただでさえ国に縛られて生きてきたのだから、 更に俺に縛られて生きていくなんてことには、なってほしくない。 俺はヤマトと一緒に生きていきたいが、無理強いをするつもりはない。 色々身勝手は承知しているが、それだけは本心だ。 「ヤマト」 「どうした、サギリ」 名前を呼ぶと、直ぐに相槌が返される。 俺は目を閉じて、静かに言った。 「俺は、お前を縛り付けたくて助けたんじゃないよ。 だから俺の面倒を見ることを義務か何かだと思ってるなら、もう十分だ。」 背後にいるヤマトが俺の言葉にどんな顔をしたのかはわからない。 暫く沈黙が続いて、ぽつりとヤマトが口にする。 「私はもう必要ないか?」 「――っ!そういうことを言ってるんじゃ…」 見当違いのことを言われて思わず振り返ると、 凪いだ瞳をしたヤマトの顔が俺の瞳に映り込んだ。 「ヤマ、ト…」 「……私も、君に聞いていないことがある」 「え?」 「何故、私を助けたのだ?」 ヤマトは俺が欲しい答えは返さず、逆に俺に疑問を投げかけた。 随分今更な問いかけだと思う。 俺は本心を隠してもっともらしい理由を告げた。 「…死に顔動画が届いたから。無視できるはずないだろ」 「私が聞きたいのはそんなことではない。 君が『仲間』の死に顔動画を幾度も回避してきたことは知っている。 だが私の場合は、君があのような形で私を救う必要は無かった筈だ。 あの時点で私は、君にとって明確な敵であったのだから」 「それは……」 「君は私の手を取らなかった。完全に敵対していた私を何故、助けたのだ?」 ヤマトは逃げるような俺の答えを許さなかった。 ヤマトの声は、段々熱を帯びてくる。 俺がヤマトを助けた本当の理由が知りたいと。 今、真剣に向き合わなければ、もうヤマトと本音で話すことは出来なくなる、 そう感じて俺は唇を噛み締めて、――――覚悟を決めた。 ヤマトと視線を合わせたまま話す勇気は無くて、 俺は再びヤマトに背を向けて自分の偽りの無い気持ちを伝えることにした。 「………俺が、ヤマトを助けたいと思ったのは。 お前の死に顔動画が届いた時、自分の気持ちに気付いたから。 お前のことが、好きなんだって、あんなものが届いて漸く気付けた。 ヤマトが好きで、助けたいなら、簡単な方法があることもわかってた。 お前の手を取れば良かったんだ。ヤマトは最後の最後まで、 俺に手を差し出してくれたんだから、その手をとってしまえば きっと、より確実に助けることが出来たはずだ。 でも流石にそれは出来なかった。 俺は既に別の手を取ってしまっていたから、裏切る真似は、出来なかった。 ……俺、最低だよな。ヤマトのこと好きなくせに、お前の願いを踏みにじって、 お前から死ぬことさえ奪って、自分の都合だけでお前の生を願った。 ――――これで、全部だ。俺はそういう人間なんだ。」 胸のうちに溜め込んでいたものは全部吐き出した。 正直逃げ出したい。不自由な自分の両足が恨めしい。 俺は俯いて、ヤマトの反応を待った。 ふ、と空気が揺れる。ヤマトが小さく笑った、のだろうか。 「そうか。やっと理解できた…」 ヤマトはそう囁いて、俺を更に抱き寄せた。ぴたりと身体が密着する。 「ヤマト」 「サギリ。私も君と大差ない。 私は、私の理想を理解する有能な駒としての君を必要としていた。 だから私につかないなら、殺すしかないとも。 事実、殺すつもりだったが…惜しい、と思ってしまった。 それが私の敗因だったのだろう。 君は全力では無かったというのに私は敗れたのだからな。 野望は潰え、死さえ奪われた。 そうなれば私には何も残らないと思っていたのだが… サギリ、君が、君だけが私の元に残った。 手に入らなかった筈の君が、全てを失った私に唯一残ったのだ。 その事実に、私の内に生まれたものは、喜びだ。 駒としての君を必要としていた筈なのに、そうではなかったのだと気付いた。 サギリ、君のそれが一方的な想いだというのなら、私も同じ様なものだろう? 私は義務などで君の面倒を見ているわけではない。 君を独占するのに都合が良いから、そうしているだけだ。 だから、君が私を必要ないと言っても、私はもう手放せない」 手遅れだ、そう、俺の耳元で甘く零すヤマトに、堪らなくなった。 お互い、身勝手ともいえる強い気持ちで相手を求めていた。 ヤマトの顔が見たくなって振り向くと、唇が触れ合うほど近くにヤマトの顔があった。 どちらが先に動いたのか。きっとお互いに距離を縮めたんだろう。 自然に俺とヤマトの唇は重なっていた。 目を閉じてヤマトの唇を吸う。ヤマトも顔を傾けて俺の唇を吸ってきた。 ちゅ、ちゅ、と音を立てながら熱を追う。 呼吸する為に口を開けば、そこにぬるんとしたものが潜り込んできた。 すぐにヤマトの舌だと気付いて受け入れるように更に口を開けて俺も舌を出す。 お互いの唾液で口の中が一杯になる。 飲み込んで、飲み込みきれなかったものが口端から零れるのも気にせず 俺は夢中でヤマトを貪って、ヤマトに貪られた。 下肢に熱が溜まっていく。ヤマトのものも俺の腰のあたりに当たっていた。 「っ、あ」 唇が離されて、物足りないような声が無意識に出て頬がカッと熱くなる。 「このままでは湯中りしかねんな」 ヤマトはそう言うと立ち上がって浴槽から出て、俺の手を引いたかと思うと器用に抱き上げた。 こんな風に横抱きにされるのは2度目だなとぼうっとした頭で考えているうちに ヤマトは浴室を後にして寝室へ向かう。 いつの間に手に持っていたのかバスタオルをベッドに敷いてその上に俺を下ろして 軽く濡れた身体を拭ってくれる。ヤマトも自分の身体をさっと拭くと、俺に覆い被さってきた。 背中に腕を回して抱き締められる。重なる素肌が熱い。 触れ合う胸からヤマトの鼓動が伝わる。俺の鼓動もヤマトに伝わっているんだろう。 「……サギリ。君と、交わりたい。良いか?」 ヤマトが掠れた声で俺を求めてくる。恐らく最後の確認だろう。 頷けば、きっと俺は受け入れる側なんだろうなとヤマトの言葉から察した。 嫌悪も恐怖も無かった。だから俺はヤマトの身体に腕を回して同じ様に抱き締め返して、 「うん、良いよ。俺もお前をもっと感じたい」 はっきりと言葉にした。 ヤマトの唇が俺の額、瞼、目尻、鼻梁、頬、を撫でていく。 最後に唇を軽く触れ合わせて、視線を交わす。 「ヤマト」 「ん…?」 「何時から、こんな風に俺に、触れたかった?」 「……自覚したのは、治療の為に他の者の手が君に触れている時だな。 出来うる限り早く、君を私の元に置きたいと、ずっと思っていた」 「………平気な顔して俺と一緒に風呂に入ってたけど」 「自己を律することには慣れている」 「我慢、してたんだ」 「フ…そうだ。だが、もう我慢せずとも良いのだろう?」 「――っふぁ…っ!?」 会話している最中、俺の身体をあちこち撫でていたヤマトの指が 胸の頂に触れた瞬間、ぞくりと何かが走って妙な声が出た。 ヤマトは両手を使って俺の左右のそこを撫で擦った。 充血して硬くなった紅い尖りを擦ったり、摘んだり、押し潰したりする。 その度、俺の身体は小さく跳ねた。 目を閉じて、与えられる小さな刺激に耐える。 唇を噛み締めて声を堪えようとすると、ん、ん、と喉が鳴った。 ヤマトの身体が下へ沈む。 何を、と思った時にはヤマトの舌が俺の胸を舐めていた。 散々指で弄られたそこを、舌で舐られる。 指とはまた違った刺激に堪えていた声が零れた。 「あっ、や、まと…っ――め、だ…っ!」 自分のものとは思えない甘ったるい声。 かり、と軽く歯を立てられて、ひ、と声が詰まる。 痛みすらも俺の身体は快楽として受け入れていた。 「サギリ」 名前を呼ばれて、いつの間にか閉じていた目を開ければ、 俺の胸の尖りを口に含んだまま、情欲に染まった瞳でヤマトが俺を見つめていた。 ごくりと口内に溜まった唾液を飲み込む。 ぴちゃ、と音を立ててヤマトは俺の胸から唇を離すと起き上がって、 俺も手を引かれて起こされて、胡坐をかいた上に乗せられた。 そうされると、すっかり硬くなって勃ちあがった互いの熱が擦れあう。 ヤマトは俺の両手をそこに導いた。 「出来るか…?」 熱っぽく問いかけるその声に小さく頷いて、俺は自分のものとヤマトのものを 重ねて両手で包み込んで、強く擦り上げた。 「んぁ……っ!!」 「―――っく…」 刺激に高く啼いた俺と同時にヤマトも耐えるように呻く。 その反応に促されるように俺は手を動かした。 お互いの裏筋を擦り合わせて、先端を親指の腹で強く優しく擦る。 くちゅ、とお互いの腺液が滲み出て混ざって濡れた音を響かせる。 ヤマトの肩に額を押し付けるように、背中を丸めて必死に愛撫を繰り返していると、 いつの間にかヤマトの手が俺の背中を撫でて、腰へと下りて、尻を撫でていた。 奥の窄まりに指が這わされる。ぬるりとした感触に思わずヤマトを見た。 「な、に」 「軟膏だ、害は無い。力を抜いていろ」 宥めるように目元に口付けられて、俺は頷くと気を紛らわすように再び両手を動かした。 「んっ、ふ……ぅ、あ…っ」 入口を撫でていたヤマトの指がゆっくりと内に挿入ってきて、 その感覚に俺の喉から高い音が零れた。 馴染ませるように小さく指を動かしながら、徐々に奥へと埋められていく。 挿入りこむ動きが止まったかと思えば、今度はゆっくり引き抜かれて、 完全に抜かれた後、また同じ様に繰り返される。ぐちゅりと粘着いたような音が増していて、 先程言っていた軟膏を足されているのだと分かった。 「…もう、触ってくれないのか?」 「は、ぁ…あ、え…?」 優しい声で言われて、自分とヤマトのものを擦っていた両手が完全に止まっていることに気付いた。 ゆるゆると動かしてみるが、もう殆ど手に力は入らなかった。 俺の後孔を弄るヤマトの指は増えている。痛みは初めからそんなに感じなかった。 激しい異物感も今は馴染んで、時折ぞくぞくと身体中に甘い痺れが走る。 ずるりと指が引き抜かれて、ひ、と息を呑んだ。 あ、と思った時には、俺はベッドに転がされていて、 俺の両足を軽々と肩に担ぎ上げるヤマトの姿が瞳に映り込んだ。 両足の間にヤマトの身体、先ほどまで指で弄られていた場所に、ヤマトの熱。 「挿入れるぞ」 「――ゃ、あ、あっ…っあぁ―――っ」 俺が答える前に、ヤマトは慎重に、だが容赦なく腰を押し付けてきた。 指以上の質量と熱がじわじわと俺の内に挿入ってくる。 頭の中が真っ白になって、なにかが弾けた。 肌と肌がぴたりと密着して、俺を穿つ動きが止まる。 まるで全力疾走した後のような呼吸を繰り返しながらヤマトを見ると、酷く驚いた顔をしていた。 「やま、と」 名前を呼ぶと俺と視線を合わせて、嬉しそうに笑う。 ヤマトの手が俺の腹を撫でる。ぬるりと、そこは濡れていた。肌に延ばされる白濁。 「…ぁ、お、れ」 「達したようだな」 呆然と呟く俺に、ヤマトは何が起きたのかを告げてくる。 ヤマトの言葉を理解して―――俺は穴があったら入りたくなった。 「なん、で…っ」 「私は嬉しい、サギリ。君も悦いのだな。私だけでなくて良かった」 ヤマトはそう言うと身体を倒して俺に口付けてくる。 内にあるヤマトのものが動いて、ぞくりと身体が震える。 「ん、ぅ…っあ、あ」 舌を絡められてそれに応えていると、身体を揺さぶられて強い快楽が俺を襲った。 必死に目の前の男にしがみつくと、ヤマトは更に激しく腰を動かす。 指で弄られていた時に特に感じた場所を、ヤマトの先端で擦られると堪らなかった。 「ヤマト…っ、や、まと…っ」 壊れたみたいに必死に相手の名前を何度も呼ぶ。 ヤマトから零れる息づかいも荒い。は、は、と熱い吐息が俺の肌を擽っていく。 「サギリ――――!」 「ぅあ――――っあぁ……っ」 ヤマトが俺の名を呼んで、仰け反った俺の喉に噛み付いて、低く啼いた。 俺の内のヤマトが角度を変えて、じわりと腹の中に熱が広がる。 その刺激で俺も精を吐き出した。 目を閉じると溜まっていた涙が滑り落ちる。 激しい疲労感に俺の意識は徐々に遠ざかっていった。 「ん………やま、と…?」 「気付いたか、サギリ」 目覚めると、ヤマトが俺の髪を撫でていた。 ヤマトはベッドに腰掛けて手に書類を持っている。 見慣れた黒いシャツとズボン。 いつもと変わらないヤマトの姿に夢だったのか、と思いかけて すぐに現実だったことを思い知った。 倦怠感と下肢の疼痛、何より今の自分の姿。 俺は何故かヤマトのワイシャツを着ていた。 自分のものより少し大きめのそれは、下肢をぎりぎり隠している。 下には何も穿いていない、勿論下着も。 俺が持っている私服は頭からかぶって着るタイプのものが殆どだから 着せやすい、という理由でヤマトは自分のシャツを俺に着せたのだろう。 まさか『彼シャツ』などという俗なことは知らない…と思いたい。 意識のない人間に服を着させるのは大変だろうから、 上だけでも服を着せてくれたのはありがたいが。 2人分の体液やらなにやらで酷い有り様だっただろう身体もさっぱりしていて、 後処理もしてくれたらしい。 「身体は辛いか?」 「辛いというか、だるい」 「そうか。まだあれから時間はそれほど経っていない、眠るといい」 「そうする……ヤマトは、寝ないの?」 「そうだな、君が望むなら」 「じゃ、一緒に寝よう」 誘うように伸ばした手をヤマトは握り返してくれる。 手に持っていた書類がばさばさと音を立ててベッドの下に落ちたが、 ヤマトは気にせず俺の隣に身体を横たえた。 身体を寄せるとヤマトは腕を回して俺を抱き締める。 多幸感に俺は目を閉じた。ヤマトの温もりがいとおしい。 「ヤマト。生きていてくれて、ありがとう」 気持ちが溢れて言葉になった。 ヤマトは俺の髪に顔を埋めて囁いた。 「サギリ。私を生かしてくれて、感謝している」 熱いものが込み上げてきて、俺はヤマトの胸に顔を押し付けて、 ぎゅうとその身体を抱き締めた。 かち、かち、と時を刻む音だけが、柔らかな暗闇に響いていた。 平等主義ヤマ主、お初話。 がっつり書こう!と思ったものの、やはりラストに近付くと息切れ。 濡れ場って精神力が、ガンガン削られていくね… 疲れたけどとりあえず満足!