カイドー・ナオヤルート・万魔の主1



待たせたな。 ああ、予定通りな。恐らくすぐに、役立つだろう。だが…別件で、残念な情報がある。 …まぁ、大した話じゃない。政府がタイムリミットを切り上げた。 今日の12時で東京は滅びる。 >大した話だよ いちいち騒ぐな。いくらでも手はある。 >早まった理由は? COMPが大量に出回った事で、各所で封鎖を突破しようとする連中が出始めている。 それを夕方まで抑えるのは、難しいと判断してのいわば安全策だな。 いちいち騒ぐな。いくらでも手はある。 …何だ? さぁ…?それは一哉に聞いてくれ。助けるのは、一哉だからな。 >助けてやるさ フフ…良かったな、アツロウ。 一哉王が政府と交渉して、助けてくれるそうだ。 >そうなの? 当たり前だろう?魔王になるのは、お前だからな。 …昨日も言ったが、魔王の力を見せつけ、封鎖を行っている連中と交渉すれば、封鎖は解除されるだろう。 さて、他に質問がなければ、出立するが…? フフ…そういう事だ。 今回は面白い趣向を用意した。相手は人間の中に潜む、ベルの悪魔だ…。 >人間の中? …その通りだ。まずはアマネの精神に寄生している、イザ・ベルを倒す! >確かに面白い フフ…人間の中に潜む悪魔と一戦交えるんだ。滅多にない、貴重な体験だろう? さぁ…まずはアマネの精神に寄生している、イザ・ベルを倒すぞ! >中に入ればいい >アマネごと倒す ジャア君:待つホホ!オイラも行くホ〜! 漢(おとこ)は約束を果たすものホ!友のチンピに命を賭すのが、日本男児の心意気ホ〜! >よろしくホ >ダメホ ジャア君:よっしゃ〜、ホ!今こそオイラの漢を見せるっホ! 天罰…いや、魔王罰★てきめ〜ん!ホ。 ■芝公園(アマネ) ああ…翔門会の信奉する、荒ぶる神ベル・ベリトが、アマネの中に寄生させたんだ。 イザ・ベルは、奴の忠実な部下だからな…。 アマネが巫女として生まれ持った体質を利用して、イザ・ベルを人間界に召喚したというワケだ…。 >利用した? ん…まさかお前、本当にベリトが、翔門会に協力しているとでも、思っていたのか? フフフ…奴は小ざかしいからな。まんまと翔門会を利用して、ベルの王になろうとしているだけさ。 >どうやって戦う? …簡単な話だ。こちらから、アマネの精神世界へ出向いてやればいい…。 …そんなに不思議な話か?下手にアマネの肉体を攻撃して、イザ・ベルに逃げられてみろ。 奴は主であるベリトの下へ逃げ帰り、自らのベルの力を儀式によって、ベリトへと差し出すだろう。 …そうなっては、余計にこちらが不利になる。 まずアマネを捕らえ、その精神にCOMPを接続する事で、直にイザ・ベルを叩く…。 >アマネを捕らえる? …そうだ。その後、改めてアマネの精神と、COMPを接続する。★ >COMPと精神を繋ぐ? ★悪魔召喚プログラムは、人間の思念を使って動作している。 その動力を、COMPの持ち主…、つまり俺たち自身から、供給してやるだけの話だ。 そもそも、COMPには、持ち主の意思を悪魔に伝えるために、精神波を中継する機能があるからな。 アツロウ:一体、ナオヤさんはどこまでの未来を予見する事が出来るんスか…。 …答える必要はないな。 さあ、アマネを捕らえるぞ。抵抗する者は容赦なくぶちのめせ。 巫女を借り受けに来た。退け、ザコども…。 …おや、これはこれは。クックックッ…、天使どのもお出ましとは…! レミエル:御主の命により、お前の叛旗を手折りにやって来ました。…覚悟なさい。 フ…フフフ…ッハハハハ!忌々しい天使どもめ…! だが、その身体にいては、本来の力を振るえまい。…俺に勝てるか? フン…分かっている。レミエル、貴様の相手は後だ。今はその娘が必要でな…。 …構わん。邪魔者は蹴散らせ。 …それと巫女は、連れて行く時に暴れられても面倒だ。気絶させろ。 さぁ…イザ・ベルの力、こちらへ頂こうか…! レミエル:これがお前の狙いでしたか、神の子、カインよ…!御主は哀しんでおられます! …何という力。イザ・ベルを抑えたままでは、あなたたちに勝てませんか…。 さて…邪魔はされたくないのでな。残りの連中にも、眠ってもらうとしよう。 >そうしよう まぁ、待て…。他人の心に侵入すれば、 俺たちの肉体は無防備になる。 その間に翔門会の連中がやって来れば、ただでは済まないぞ? …この娘を、安全な場所に移す。 >ここは危険だろ? フン…いい観察眼だ。他人の心に侵入すれば、俺たちの肉体は無防備になる。 その間に翔門会の連中がやって来れば、ただでは済まないぞ? …この娘を、安全な場所に移す。 フフフ…忘れたのか?召喚プログラムを作ったのは俺だ。悪魔の事は誰より熟知しているさ。 昨日の内に、安全な場所を用意してある。サッサと移動するぞ…。 >どこにあるの? …国会議事堂だ。あそこの一部に、結界を張ってある。悪魔が近づく事はない。 ★結界に人間を遠ざける力はないが、すでに悪魔によって汚染された地域だ。 人間が来る可能性は、最も低いだろう。 >安全って? フフ…悪魔を遠ざけるまじないなど、昔から、いくらでもある。 昨日の夜、国会議事堂に立ち寄って、一部に結界を施しておいた。 悪魔が近づく事はない。★結界に人間を〜 フフフ…そうならない様に気をつけろ。俺は邪魔者に容赦はないぞ。 ■永田町(国会議事堂) さて…アマネの精神と、COMPのリンクを開始するぞ。 >いつでもOK >ちょっと不安だ 難しく考える必要はない。人の心など、たかが知れている。 人間が、外的刺激と元来の思考を元に作り出した世界だからな、現実と大きな差はない…。 哀しい事に、人間が理性のタガを外す事は容易ではない。まぁ、まともな人間であればな。 注意すべきは、アマネの心に寄生しているイザ・ベルだ、奴の支配下で戦うのだからな。 奴の手の内には、アマネ本来の心という駒もある。 …アマネの心を操り、こちらの敵として差し向けて来る場合も考えねばならないからな。 …その通りだ。例え、イザ・ベルの支配がなくとも、アマネが我々に敵対的である以上、 アマネ自身の心も我々の敵となるだろう。 …だが気をつけろ。アマネの心が死ねば、その肉体はイザ・ベルに支配される。 アマネは殺さず、イザ・ベルを倒すのだ。 >分かった フ…頼もしい限りだ。では、行くぞ! >大丈夫かな? 不安や恐怖など、ムダな感情だ。理性で支配しろ。では…行くぞ! ■カルネジアン庭園 >本当だね これで、俺を信じたか?これはCOMPが分析し、視覚化した、アマネの心の中の風景だ。 >実はまだ現実では? フフ…その錯覚もムリはない。だが、これはCOMPが分析し、視覚化した、 アマネの心の中の風景だ。 人間の感覚が、いかに心の影響を受けるか、良く分かるだろう? …だが、それゆえに注意すべき点もある。 心が死を感じれば、実際の肉体も死を自覚し、それが現実となる点だ。 >負けると現実でも死ぬ? そうだ。ここでの敗北は現実での敗北…、それも死に直結する。 >負けなければ問題ない フン…良かろう。では、イザ・ベルを探し出し、排除するとしようか。 …あれがイザ・ベルだ。探す手間が省けて、何よりだな。 一哉、お前たちが精神世界にいられるのは、俺がアマネをCOMPに接続しているからだ。 俺が倒れれば、お前たちは、アマネの中から出られなくなる。注意して戦え…。 …行くぞ、イザ・ベルを倒す! フン…いちいち怯えるな、サッサと攻撃するぞ。 …攻撃を続けろ、イザ・ベルが体力を失えば、いずれアマネは、自我を取り戻す。 だが、くれぐれも注意しろ。アマネの心を殺さないように、イザ・ベルへの攻撃は続けるんだ。 >分かった >やるしかないね …サッサと立て。それとも、イザ・ベルに喰われたいか?今のお前では、奴には勝てん。 お前が取り込まれれば、俺たちも死ぬ。どちらにせよ、今の俺たちは協力するしかない関係だという事さ。 虚像か…気をつけろ!次にアマネの心を取り込まれたら、イザ・ベルから逃れる術はない。 アマネが喰われれば、我々もこの世界から抜けられなくなるぞ! フフ…楽しみにしているぞ?我々も、次はお前を殺す事に、何のためらいもないのだからな…。 さぁ…イザ・ベルの力は得た。長居は無用だ、引き上げるぞ…! さて…無事に戻れたな。 >楽勝だ >アマネはどうする? …放っておけ。今殺せば、翔門会は躍起になって、俺たちを追って来る。 目的を果たす前に、自らの行いで、わざわざ敵を増やす事もあるまい。 さて、次の行動だが…。 アツロウ:…ナオヤさん。もう、いいんじゃないスか? ……? アツロウ:そろそろ、本当の事を教えて下さいよ。アンタが話してくれてるのは、 いつも目の前の事だけだ…。 オレたちだって命賭けて戦うんスよ、全部、知っときたいんス! フフフ…何も知らないまま、俺に従うのが、イヤになったか?そろそろ言い出す頃だと思ったよ。 アツロウ:……!そこまで分かってて何で…。アンタはいつもそうだ! この封鎖に巻き込んだのも、今、ベルの悪魔と戦ってるのだって、全部、アンタの思い通りじゃないスか! ソデコはマジにオレたちを心配してくれた。オレたちは、それを捨ててまで、ここにいるんスよ! 自分が何をしてんだか、次は何をすればいいんだか、分からないままじゃ、戦えない! オレたちは…、アンタの駒じゃないんだっ! …違うな、お前たちは俺の駒だ。 >ふざけるな! フン…いちいち腹を立てるな、相手を駒にしているのは、 お前たちも同じだろう? …俺は大事な駒だぞ?お前たちの願いを叶えるための、優秀な駒だ…。 >優秀な駒だろ? フン…なかなか面白い事を言うようになった。 そうだ、お前たちは優秀な駒だ。…そして俺も、お前たちの願いを叶える、優秀な駒だろう? アツロウ:……! アツロウ…現実から目をそらすな。どんなに言い方を変えてみても、事実は、事実だ…。 封鎖を解きたいお前たちと、一哉を魔王にしたい俺…、両者の利害は一致しているからな? …だが、目的を同じくする者として、互いの信頼を失っては元も子もない。 いいだろう…教えてやる。 …ベルの王となるためには、一哉が全てのベルに勝利し、『バ・ベル』と相対する必要がある。 >それもベルの悪魔? >バベルの塔の事? バ・ベルの正体は、かつて唯一神に敗れ、魔界に堕ちた『始原のベル』が失った、エネルギーの集合体だ。 そしてそれは今や自我を持ち、それ自身で1つの悪魔として存在する…。 つまり、ベルの王位を巡る戦いとは、バ・ベルに眠る、大いなる力を、手に入れる事が最終目的だったのだ。 …そして、お前たちが求めていた召喚サーバーこそが…、バ・ベルそのものに他ならない。 アツロウ:ちょ…ちょっと待った!悪魔召喚プログラムを司るサーバーが、バ・ベルだっていうんスか!? …その通りだ。 バ・ベルは、ベルの王たる資格を持つ者によってのみ喚び起こされ、その者に最後の試練を与える存在でもある。 ゆえに『王の門』と呼ばれ、その試練をくぐり抜ける事こそが、ベルの王となるための最後の儀式となる。 >サーバーはどこに? >くぐり抜けるだけ? さぁな…?それは、バ・ベルと対峙するまで、誰にも知る事は出来ない。 アツロウ:それじゃ、そのバ・ベルってのがいるサーバーは、どこにあるんスか? 召喚サーバーは今、ベル・ベリトの手の内にある。 ベリトは召喚サーバーが完成すると、召喚プログラムの効率化のためと称し、それを魔界へ奪い去った。 だが、ベリトの狙いは、バ・ベルの召喚にあったのだ。 つまり、悪魔召喚サーバーを高エネルギー思念体であるバ・ベルの依代としたワケだ。 アツロウ:サーバーを依代にだって!? バ・ベルは高エネルギーの思念体…。その力を取り込めば、強大な力を手に入れる事が出来る。 …だが、思念体であるバ・ベルは、魔界に在るとはいえ、目で見たり、手で触れる事の出来るものではない。 ベリトはバ・ベルを手にするため、召喚サーバーを媒介として、バ・ベルの具現化を目論んだのだ。 >なぜサーバーを選んだ?★ >サーバーは思念を操るからか ほぅ…そこに気付いたか、大したものだ…。 ★召喚サーバーは、思念の流れを操り、使用者の望みのままに動かす事の出来る装置だ…。 恐らくベリトは、思念体であるバ・ベルに働きかけ、それを意のままに操るためには…。 似通った性質を持つ存在を、介する事が、最適だと判断したのだろう。 >そしてサーバーを魔界に? >バ・ベルはベリトの手にある? そう…ベリトが召喚サーバーを魔界に移した理由は、バ・ベルを自分の手元に置くためだ。 アツロウ:ちょ…ちょっと待って下さい、それってヤバイっスよ! ベル・ベリトは召喚サーバーを、バ・ベルの依代にしたんスよね!? ベリトが先に試練っていうのを受けたら、奴が王になっちまう! フフ、安心しろ。確かにベリトはサーバーを奪い、それをバ・ベルの依代とした。 だが、その時点ではベリトに王の資格がなかったのだろう。 バ・ベルは奴の喚びかけに応えず、今も黙したままだ。 アツロウ:そ…そうか、ベルの王位争いが続いてるって事は、まだベリトが王になってないって事だ! だったら、ベリトより先に、王の資格を手に入れて、バ・ベルの試練を受ければいい! >でも魔界でしょ? …いい観察眼だ。…バ・ベルはサーバーと融合したまま、今も魔界にある。★ >まずは資格が必要 ふむ、お前の言う通りだ。そして資格を手に入れた後、バ・ベルへのアクセスを試みる。 …バ・ベルはサーバーと融合したまま、今も魔界にある。 ★人間が、魔界に入る事は不可能だ。いかに俺たちでも、数万の悪魔を相手に、 生きてバ・ベルへ辿り着く事は出来ん。 カイドー:フン…じゃあどうすンだ。 せっかくベルって悪魔を倒して、王の資格を手に入れても、バ・ベルが魔界じゃ手が出せねぇ。 フフ…、こちらから魔界へ出向く必要はない。 バ・ベルは王の資格を持つ者の声に応え、その下へ現れる。 バ・ベルが現れやすい状況を作り、こちら側の世界に喚び出してやれば、それで済む話だ。 カイドー:現れやすい状況を作る…?具体的に言え、どうすンだ。 人間界と魔界は非常に近しい世界だ。2つの世界を隔てるのは、たった1つの壁のみ…。 …その壁を、破壊してやればいいのさ。 カイドー:壁…だと? そう、壁だ。四天王と呼ばれる鬼神の力が、世界を隔てる壁を生み出している。 …四天王の1人、ジコクテンは、東京における悪魔使役の礎として、半年前、イザ・ベルにより倒された。 結果、魔界の侵食を抑える力が弱り、召喚プログラムによって、誰もが悪魔を使える、 現在の状況が生まれたワケだ。 …残る四天王は3人。これら全てを排除すれば、世界の壁は消え去り、魔界と人間界は1つになる。 >じゃあやろう >それって平気なの? アツロウ:ちょ…ちょっと待ってくれよ!魔界と人間界が1つにって…、どう考えてもヤバイじゃんか! …このまま放っておいても、どの道、結果は変わらん。 召喚プログラムの流出によって、大量に喚び出された悪魔の存在は…。 すでに人間界と魔界における霊的因子のバランスを、大きく崩しつつある。 このまま数日もすれば、人間界は魔界との均衡を保てなくなり、魔界に押し潰されてしまうのだからな。 アツロウ:結局、やるしかないって事か…。 …そういう事だ。さて、残り時間は少ない。四天王狩りを開始するぞ。 >居場所は? ジコクテンが欠けた事で、結界のバランスが崩れたのだろう。 奴らは本来の持ち場を離れ、封鎖内の各地に散らばっているようだ。 その内、四天王最強と言われる鬼神、ビシャモンテンが衛国寺にいる。池袋の近くだ。 >分かった カイドー:フン…なるほどな。昨日の調べものってのは、ソイツの事か。 フフ…その通り。どうだ、これでも俺の事が、信用できないか? カイドー:信用が出来ようと出来まいと、オレのやる事に変わりはねぇ。さぁ、サッサと行くぞ…。 いいだろう。まずは池袋、衛国寺にいる、ビシャモンテンを排除する…!