アツロウルート・静かなる革命



…人を見て、そんな声を出すものじゃないな。 俺はバケモノ扱いか? フフ…冗談だ、気にするな。 ちょうどいい、お前たちに話がある、俺を探していたんだろう? ああ、答えを聞きに来た。 今日が政府の定めたリミットだ。しかも…刻限が早まったそうじゃないか。 さぁ、どうするつもりだ? >全ての悪魔を制御する …断る。俺の望みは一哉が、ベルの王となる事だ。 それで、あの門の制御は思うがままだ。 お前たちにとっても、損はあるまい? >そういう問題じゃない …お前たちが、召喚サーバーと呼ぶものさ。 俺の組み上げたサーバーは、すでに『王の門』と呼ばれる存在、 バ・ベルへ変質をはじめている…。 ああ…門と言っても、それ自体が自我を持つ悪魔であり、純粋な力そのものでもある。 バ・ベルに認められた者だけが、そこに眠る力を手に入れ、初めてベルの王となるのだ。 …そしてお前には、その資格を得る権利がある。分かるか…一哉? >オレに資格が? …そうだ。ベルの王位争いに加わった、唯一の人間、それがお前なのだからな。 …いいか?お前たちにとって重要なのは、悪魔を制御する事だ。 そして一哉さえ、ベルの王になれば、その願いは容易に叶う…。 もちろんだ…それが王の力だからな。 バ・ベルに眠る力は一哉に宿り、一哉によってのみ振るわれる。 …何も問題はあるまい?一哉が力を正しく使うなら、世界には平和が訪れる…。 ほぅ…なぜだ? ナンセンスだな…。甘ったるい、理想論に過ぎん。 この国を見てみろ。民意で選ばれたはずの政治家たちは金を貪り、 主張のない人民は搾取されるばかりだ…。 税金は湯水のごとく浪費され、民より多くの金を持つ政治家たちは、 国に金が足りないと、増税を主張する。 アイデンティティのない愚民どもに、民主主義で意見を問うこと自体、 ムダな行為だとは思わないのか? アツロウ:だからって! だからって、独裁政治でいいのか? 人の可能性を、人が否定したら、それ以上、進歩はないだろ!? オレは人の可能性を、信じてみたいんだよ! ……。 …人なら永い間、見て来たさ。 民衆に期待などすれば、お前が裏切られるだけだぞ。 それでもやると言うのなら…、サーバーへの道を教えてやろう。 自分でハッキングしてみるといい。 アツロウ:…オレだって、時間があるなら、自分の手でやってみたい! でも、今からじゃ間に合わないんだ! もう、ナオヤさんの手を借りない限り、誰にも出来ないんだよっ…! …自らの非力に開き直り、他人に頼ろうとするか。 あまりに確証がなく、無計画だ。 >ナオヤだって同じだ …何だと? 不快な…。お前たちは俺が、一哉に頼っていると思うのか。 フ…フハハハハハッ! …バカはバカなりに考えるものだ。確かにその通りだよ…。 だがな…1つ教えてやる、お前たちとは違い、俺にはまた、チャンスが巡って来るんだ…。 フ…面倒な話だ、気にするな。さて、お前たち相手に、説教するのにも飽きてきた。 …ここは1つ、ゲームでもして決めようじゃないか。 …そう、ゲームだ。お前たちは天使の協力を得ているな? >どうしてそれを!? いちいち反応するな、説明するのは面倒だと言っただろう。 さすがの俺も、天使を相手にするのは、少しばかり骨が折れる…。 だが…今回の試練において、天使たちが、人間の自主的な行動を制限する事はない。 …つまり、お前たち自らの意志で俺に従う限り、奴らは手を出せないという事だ…。 アツロウ:…それが、ゲームの景品っスね。 じゃあ、オレたちが勝ったら、ナオヤさんは一緒に来てくれますか? フ…面白い。いいだろう、だが…。…俺に勝てると思うなよ。 アツロウ:オレたちはアンタのお陰で強くなった!その力で今…、アンタも超えてみせるっ! さて…これを見てもまだ、そんな事を言ってられるかな? フフ…アツロウ、余裕だな?それは俺を気遣っているつもりか。 残念だが、そのCOMPから召喚された悪魔は俺を襲わない…。 つまり、暴走状態にあり、悪魔を召喚し続けながらも、俺の制御下にあるのだ。 クックックック…。さぁ、ゲームを始めようか! さて…。俺に追い付けるかな…? …どうした?COMPは、まだまだある。 早く何とかしなければ、お前たちは、なぶり殺しだぞ? クッ…!? ここまでの力を身に付けたか。いいだろう、負けを認めよう…。 お前の中のベルの力は、俺の予想を超えるほどに、強大になっている…。 惜しい…惜しいぞ、一哉。 貴様なら、始原のベルをも凌ぐ、最強の魔王になれるというのに…。 ……。 >約束は守ってくれる? 安心しろ。約束は約束だ、守ってやる。 …バ・ベルの下へ向かいたいのだったな。残念だが、今の状況でそれは不可能だ。 >どうすればいい? 召喚サーバー…つまり、バ・ベルの本体は現在、魔界にある。 人間が魔界に入る事は出来ない…。よしんば入ったところで、悪魔の群れに八つ裂きにされるだろうな。 …それは、天使たちが教えてくれるのだろう?俺が答える必要はないな。 やれやれ…俺にそんな事を、いちいち指摘させるな。 …それで?俺に対する要求は何だ?具体的な指示がなければ動けんぞ。 …特定の人間だと?あのサーバーには現在、COMPでしかアクセス出来ない。 それを実現し、運用するためには、セキュリティの強化も必要になるぞ。 アツロウ:えへへへ…もちろんっス!許可外のアクセスはCOMPだろうと、 PCだろうと、容赦なく弾いて下さい! そういう改造も含めて、ゲームの景品っスよね? …アツロウ、お前は性格が悪くなったな。それは一哉の影響か、それとも…。 …まぁいい、約束は約束だ。仕方あるまい、改造はしてやる。 …疑り深いな。安心しろ、お前たちが天使の協力を得ているなら、俺は逃げられない。 それに…さっきも言ったように、俺には再びチャンスが来る。 …そうだな、千年ほども待てば良かろう。 今回は、一哉の可能性が見えただけでも、充分な収穫とするさ…。 アツロウ:…逃げられない、って?それに…千年、スか?それって…どういう意味…? …いちいち質問で話の腰を折るな、答えるのが面倒だ。 さて、話を進めるぞ…。 お前たちの要求を満たすためには、召喚プログラムのソースコードが必要だ。 それと、書き換えに要する時間だな。 やれやれ…注意不足だな。とっくに俺のアパートくらい調べたものと思っていたが…。 …3〜4時間後に、青山に来い。ソースも、発電機もある。作業に支障はない。 >なるほどな フン…一哉は気付いていたか。 そうだ、俺が召喚プログラムを組み上げたのは、俺自身の部屋に他ならないのだからな…。 フン…先ほどの1つ目の疑問に対する答えが来たようだぞ…。 …貴様は不快だ。俺に話しかけるな。 天使サリエル …『邪眼』を持つ天使、か。お前が来ると思ったよ、俺を逃がさぬためにな。 やれやれ…。じゃあな、お前たち。忘れるな、青山のアパートだぞ。 ■作業状況の確認 アツロウ:それに、あの人はオレの師匠だ。 オレさ…やっぱ、あの人の事、どっかで信じてるんだわ。 予想より早いな…。 どうやらお前たちの実力は、本当に俺の予測を上回っていたようだ。 >作業は終わった? …事を急くなと言っているだろう。 バ・ベルを人間界へ喚び出すには、まだ踏むべき手順が残っている。 さぁ、行ってゼブブとベリトを倒せ。 奴らの持つベルの力を吸収すれば、一哉は確実に王の資格を得る事になる。 アツロウ:ナオヤさん…オレ、信じてますから。 絶対に、ナオヤさんが裏切らないって、ちゃんと信じてますから…! フン…早く行け。 ベリトはヒルズの最上階だ。バ・ベルもそこで喚び出せる。 >行くけど、何で? ヒルズ最上階には、翔門会の施設がある。 元々、サーバーが存在していたのも、その部屋だ。 俺は…後から行く。サッサと、ベリトを倒して、俺の通る道を掃除しておけ。 >分かった …現在、動作しているサーバーのプログラムは、COMPからの操作を前提としている。 お前たちの望みを叶えるためには、インターフェースの改良や、 セキュリティの強化も必要だ。 …悪魔で作った軍隊を、ハッキングされたくはないだろう? やれやれ…計算外だったのか?洞察力が足りんな。 …まぁいい、カーネルレベルから作業を行っている所だ、 完成には、もう少し時間がかかる。 >任せたよ! アツロウ:あの…ナオヤさん、…オレ…。 フン…面倒な奴だ。 …俺の一番弟子なら、サッサとすべき事を片付けろ。 アツロウ:い…い、一番弟子…?…お…オレが…!は…はは、ははは…。 いよぉおおしっ!やるぞぉ〜っ! カズヤ、ソデコ、行こうぜ!オレもう、何でもするっ! …うるさい連中だ。 さて…。この制御が上手く行けば、人は新たな力を手に入れるな? …だが、大きな力には、大きなリスクが付きものだ。 果たして人類に使いこなせるかな? ハッハッハッハッハ…! 【自分が到着する前に、悪魔を排除しておけと命令するなど、 やはり性格に多少の難あり】 アツロウ:いや…出来る、やれるんだ。 やれなきゃ、みんなを救えない。オレは…ナオヤさんの弟子なんだ…! ■ベリト戦後 おや…ベリトの気配がないな。 どうやら倒した後だったか? フ…これは遅れて良かったな。 早く来ていたら、戦闘まで手伝わされそうな雰囲気だ。 さて…あとは一哉がバ・ベルを喚び、プログラムを書き換えれば、それで終わりだ。 愚問だな、とっくに終わった。残りの作業は、バ・ベルに着いてからだ。 さて、後戻りはないぞ。サッサと準備を整えて、バ・ベルを喚び出すがいい。 ■バ・ベル戦 さて…いよいよバ・ベルを喚ぶぞ。準備はいいな? では、一哉。自分の中に眠るベルの力を解き放ち、王の門バ・ベルを喚べ…。 アツロウ:へへッ…改めて言うのも、今さらって感じだけどさ…。 オマエが友達で良かったぜ…! ハードな一週間だったけど、それも、もう終わっちまう。 オレは…これからもオマエの友達で、ナオヤさんの一番弟子だ!行こうぜ、カズヤ! …そうだ。 王の門バ・ベル…、ベルの悪魔たちが追い求めた、王の王たる証…。 一哉…、結末を変えるなら今の内だぞ? フ…冷たい扱いだな?ほんの冗談だ。 まずは俺が中央のコンソールに向かう。そこからアタックを開始するから、 邪魔な悪魔どもを追い払ってくれ。 アツロウ:は〜い、ナオヤさん!オレ、オレっ!オレの出番は…!? …うるさい奴だ。お前にはサブコンソールに向かってもらう。 だが、まだ左右どちらのコンソールが有効になるか、分からないからな。 俺がアタックを開始するまで、この場で静かに待機していろ。その間は、生きていればいい。 アツロウ:りょ…了解っス! さて…アタックを開始する。ハックツール…起動確認。 ほぅ…バ・ベルと融合して、プログラムが自己進化を遂げたか。これは面白い…。 フン…ムダな抵抗を。…では、これでどうだ。 …アツロウ、右のコンソールに向かえ! アツロウ:り…了解っス! 一哉、お前たちは、アツロウと俺をサポートしろ! アツロウ:こ…ここで、ナオヤさんのプログラムを使えばいいんだな…!? うおっ!な…何だ、コレ!? セキュリティプログラムだ!コイツを突破しない事には、ハッキングが完了しないぞ! さて、メインプログラムに到達した。…チェックメイトだ。 さぁ、見せてみろバ・ベル。 偽りの仮面に隠された醜い素顔を晒すのだ! アツロウは一哉たちと攻撃に参加しろ!俺は隙を見て全機能を抑える! …今だ! …完了だ。お前たち、良くやった。 さて…最後の仕上げだ。悪魔を帰還させるコマンドを打ち込め。 …自分たちで選んだ道だ。最後はキッチリ締めろよ、アツロウ。 アツロウ:りょ…了解っス!これで…終わりだぁっ! >Devil・Return …予定通り、召喚プログラムは、全て書き換えた。 以降、人間による悪魔の制御は、『契約』ではなく『支配』だ。 …それも完全に、な。 今後は悪魔の意志に関わらず その『力』だけを、安定的に利用できるだろう。 フン…。お前たちの望んだ結末は、達成された。 …一哉。今日の戦い、確かに価値ある勝利だ。…しかし、忘れるな。 悪魔が何もしなくても、世界は元々楽園じゃない。 全ては、今後の人間次第だ。 >自分を信じている …フン。お前らしい答えだな。