「ちょっと、アンタ、それ…っ」 震える指を俺の胸へと指してくる、麗しのマスター、遠坂凛。 「マスター、落ち着け。」 「これが落ち着けるわけないでしょう…!それ、どういうことよっ!?」 「うーん、俺にもさっぱりだ。どうも俺本来のものとは別の情報が混じったみたいなんだが。」 「って掴むなっ!」 自分の盛り上がる胸を掴むと、指が沈んだ。 でかいと本当に肩がこるんだなぁと呑気に思う。 夜が明けたら、女の体になっていた。 なんでさ、とつっこみつつも、俺はわりと冷静で。 どうせすぐに戻るだろうと根拠などないが、思ったためだ。 現在、俺のマスターである遠坂は、仇でもみるような視線を俺の胸に送っている。 まあ、常々自身の胸の大きさを気にしているようなので、理由は解らないでもない。 「……なんでそんなにスタイルいいのよ……」 などとぶつぶつ呟くマスター。 「…本当に、本物なの?」 目を眇めて訊いてくるので、 確認するかと言えば、う、と黙り込む。 まあ全部、自分で確認済みだが。 しっかり下も変わってたなーと何の気なしに呟く。 ――と、遠坂が目を見開いている。 「どうかしたか、マスター。」 「…確認したって……下も、って……」 「自分の体の変化だ。確認し、把握するのは当然だろう。」 「っガンドぉっ!!!!!」 至近距離。ゼロ距離で放たれたガンドをぎりぎりでかわす。 「危ないな、マスター。あたる所だったぞ。」 「うるさいっ、この、変態!!!元に戻るまで帰ってくるな…っ!!!!!」 「――というわけで、追い出されたから暫くよろしくな。」 にこりと二人に笑いかける。 どちらも呆然と俺を見ている。 いや、俺の胸やら尻やらを見ている。 うん。男ならそこに目がいくよなぁ。 声も少しトーンが高くなっているし、どこからどうみても今の俺は女だ。 「あ、ええと、セイバー、なんだよな…?」 恐る恐るという風に士郎が訊いてくる。 「何だよ、ちょっと体が変わっただけで、俺だって判らなくなるのか?」 さみしいな、と少し肩をすくめて言えば、 そんなことないぞと慌てて士郎が手を振る。 一方、アーチャーは俺を視ていた。 原因でも探っているのだろう。 無駄だと思うけど。 しばらくして、アーチャーが緩く首を振り、指で眉間を揉み込んだ。 溜息を吐きつつ。 「何か解ったか?」 俺が聞けば、アーチャーは投げたと言うような遠い目を向けてきて。 「貴様と同様に、ろくな現象ではないな。」 そう言ってきた。 なあ、呆れた風に言ってるけど、俺の胸元に視線を感じるんだが。 気のせいか?アーチャー。 終わり?