青空/槍弓





雨上がりの蒼い、空。 あの男を思い出した。 「何やってんだ、アーチャー。」 突然声をかけられる。が、驚きはしない。 別段珍しいことでもない。 「君の事を考えていたよ、ランサー。」 空を見上げていた顔を戻し、何ということもなく告げると、 ランサーは嫌な顔をした。 「…素直なテメェなんざ、気味悪ぃ。」 「酷いな。」 「誘ってんのか?」 「どうとでも。」 軽い言葉の応酬。 ランサーは軽く頭を振ると、真っ直ぐにこちらを見据えてくる。 見返せば、その視線で意図を告げて歩き出す。 従う義理は無いが、拒むだけの理由もなく、ランサーの後を追った。 きっかけなど、いつもこんなものだ。 「オマエって、いきなりスイッチ、入るよな。」 なかに熱を埋めて、腰を揺すりながらランサーが言う。 「……ハ、君は常時、入っているようだ…」 内部を抉り、擦られる快楽に、零れそうになる声を堪えながら言い返せば、 そうかもなと肯定し、更に強く前立腺を擦ってくる。 「っ、ァ、く…」 「声、出せよ、アーチャー」 耳の内に声を吹き込まれ、滑る感触。 舌が内を這う。肌があわだつ。 上にのしかかる男の背に腕を回し、首筋に唇を押し付けた。 舌で肌を辿り、味わう。 含み笑いのようなものが耳に届き、男の顔を見る。 「いや、いつになく積極的だと思って、な。」 ランサーは満足げに笑み、こちらの髪を掴んで強引に唇を重ねてきた。 歯がかちりとぶつかる。 口を開きランサーの舌を迎え入れる。 絡めて吸って。 合わせるように腰を揺らされて、体の奥深くが悦びに震える。 自身に直接与えられる快楽よりも、 この体に欲情するランサーの姿を見ることの方が、心が高ぶる。 「――く…っ」 先に達し、互いの腹に精を撒き散らす。 「っ、ぐ…ぅ」 直後に、獣が唸るような音がランサーの喉奥から零れ、 じわりと内蔵に広がる熱。 「……?何だ、アーチャー。」 凝視していたのが気になったのか、問うてきたランサーに、 「いや、実に悦い貌を見せてくれるものだと…」 本心で告げると。 「…そっくりそのまま、返してやるぜ。」 呆れた風に、返された。 「で、結局何だったんだ。出会い頭のアレは。」 上半身を起こし、一服しながらのランサーの言葉に、 一瞬何のことかと思ったが、すぐに思い当たり、 「言葉のままだが。蒼は君の色だろう。  今日は気持ちよく晴れていて、空が綺麗な蒼だった。  だから君を思い出したのだが。」 仰向けになったまま答えた。 手を持ち上げてランサーの髪に指を絡め、目を細める。 ランサーはしばらく何かを考えるように目を閉じ、開いてこちらを見てくる。 「…銅と鋼の色、だな。オマエは。」 呟きながらランサーは肌に触れてきた。 確かめるように指を滑らせる。 「触り心地が良いとは思わないが?」 熱心に触れる指を目で追いながらそう口にすると、ランサーは薄く笑った。 「それだけじゃねえのを、オレは知ってる。だからオレは、オマエを抱くんだろうな。」 ランサーの言葉にそうかとだけ返し、体を起こすと男の唇に自ら唇を重ねた。 煙草特有の苦味。 「…ココも、柔らけえだろ?」 ランサーが舌を絡ませ、笑う。 どこまでも真っ直ぐなその気性に抱く想いは複雑。 正と負の感情が、入り乱れる。 今は正の感情が上回っていた。 だからそのまま深く口内を貪れば、ランサーは喉を鳴らして そのままこちらを押し倒してくる。 最後にひとつ、煙を吸い込んだ後、手に持つ煙草を処理して。 「誘ったのはオマエだぜ、アーチャー。」 「…ああ、そうだな。ランサー。」 そして再び貫かれる。 この瞬間だけ、私は人に、なるのだろう。 空と海に抱かれているようだと、与えられる快楽のなか、感じた。 そんなものが相手ならば、剣はつかいものには、ならないのだ。 ちょっとらぶを目指してみた。 アーチャーが受だと、どうも詩的になるなぁ(笑) なんか色々ネジがとんでるというか。 そんなアーチャーが気になるランサー。苦労症だ。