あなたをよぶ



 

組み伏せて喉元に軽く噛み付く。
びく、と震える身体。脚を割って間に身体を捻じ込み、腰に腕を回してきつく抱く。
適度に鍛えられた身体は、抱き締めがいがある。
服ごしに背中を撫でて、服から覗いた剥き出しの肌に唇を這わせてその感触を味わう。
なんとなく、今日はそれ以上進める気にはならず、ただ首のあたりだけを唇で愛撫した。
こちらの意図が通じたのか、抱いた身体から力が抜ける。
腕を持ち上げて、オレの髪に指を絡めてくる。

「…ランサー。」

こいつに名を呼ばれるのは、悪くない。
たとえそれが、クラス名だとしても、オレを呼んでいる事には変わりない。
這わせていた唇を耳元へ移動させる。
耳朶を唇で挟んで吸い付けば、甘い息が耳に届く。

「士郎。」

殆ど口にすることがない名前を囁いてやれば。
頬、耳まですぐに赤く染まり、熱を持つ。
「っ…」
ふいとオレの視線から逃れるように顔を横に向け、唇を噛み締める士郎は、
実に可愛かった。
「何だよ、急に……。」
ぼそぼそと言ってくる士郎の目尻を舐めて、
「呼ばれたかったんじゃ、ねぇのか?名前。」
そう指摘してやれば、う、と口ごもり、
こんな時に呼ぶな、などと呟く。


どれだけオレが、ハマっているか。
こいつは理解しているだろうか。
自分でも、何でここまで惚れたのか解らない。
ただ、今はこの目の前の存在全てに、オレは煽られる。


「士郎。」
もう一度、名前を呼んで。
何か言おうと開きかけた唇を、自らのもので塞ぐ。
ん、と士郎の喉が鳴る。
親指で喉元を擽ると、落ち着かないのか、オレの髪を掴んで引いてくる。
咥内をくまなく舌で撫でる。縮こまる士郎の舌に絡めて吸うと、ひくりと身体が震えた。
唇を僅かだけ離す。お互いの呼気が触れる中。

「…クー・フーリン。」

士郎がオレの真名を口にする。
オレは多少驚き、瞬く。
士郎はそんなオレに満足そうな笑みを浮かべて。
「アンタの、名前だろ。」
お返しだと、小さな声で囁く。
「…参った。」
力を抜き、全体重をかけるように士郎に覆い被さって、その身体を掻き抱く。


込み上げてくるものは、可笑しさや、愛しさ。


「っ重い、て、いうか、何笑ってんだよ。」
「いや、嬉しくてな。ありがとよ、坊主。」
「む。…礼を言われても、なんかありがたみを感じないんだけど。」
「そうか?」
「そうだよ。」

不平を言いながら、士郎もオレに腕を回して抱き返してくる。
肩口に顔を擦り寄せてくる様は、どこか動物的で。

喉奥で笑いながら、オレは、目の前に晒された首筋に唇を押し付けて、
きつく吸った。






らぶらぶです。

















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