ごちそーさん



 

夕方。今日は土産を持参して港に来てみた。
丁度ランサーが竿を片付けて立ち上がろうとしている。
「ランサー、今日は終わりか?」
俺が呼びかけるとランサーは軽く手を上げてこたえる。
「今日の成果は?」
「ん〜、まぁまぁってところか。」
言ってバケツに視線を移すランサー。俺も覗いてみればなるほど、言葉どおり。
「で、坊主。何か用か。」
ランサーが聞いてくる。俺は持っていた袋から一升瓶をとりだし、ランサーに差し出した。
「これ土産。いつも魚、貰ってるし。」
「へぇ、なかなか気の利いた土産じゃねぇか!」
んじゃ遠慮なく、とランサーは笑って俺の手から一升瓶を受け取り、その場に座り込んだ。
「ランサー…もしかして、ここで飲んでいくつもりか。」
俺が問えば、おうと頷くランサー。
「落ち着いて飲める場所なんざ、ここぐらいしかねぇからな俺は。ついでだ。坊主もつきあえよ。」
「…俺、あんまり酒、強くないんだけど。」
「唇湿らす程度でもかまわねぇよ。」
ほら、とランサーは自分の隣の地面をぱんと叩く。
俺は観念して、ランサーの隣に腰を下ろして、念のため持ってきていた二つのグラスのうち、
一つをランサーに渡す。
「なんだ、用意いいじゃねぇか。」
「こうなる予感はしてた。」
言って、俺は少し笑った。

――で。
ランサーはそれはもう、酒に強くて。
俺はというと、ランサーには無理して飲むこともない、とは言われたが、なんとなく悔しくて、
かなり度数は高かったがランサーのペースにつられるように、飲み進めてしまい。
他愛ない話をしながら飲んでいたのが、次第に言葉少なくなり瞼が重くなってきて、
やばいなと思ったときにはすでに遅く、気づけば俺は、意識を手放していた。

そろそろ落ちるな、という読みどおりに、かくんと身体が傾いだ士郎を目の端に捉えて、
やれやれとランサーは軽く嘆息した。挑発した覚えは、まぁあるのだが、ここまでのってくるとは。
グラスに注いだ酒をあおりながら思っていると。
とん、と肩に重み。
いつの間にか士郎はランサーに寄りかかって眠っていて。
「……いくらなんでも、無防備すぎるぞ坊主。」
ランサーは小さく呟いた。嫌な気はしないので、問題はないのだが。じ、と眠る士郎の顔を覗き込む。
ほんのり朱に染まった頬だとか。
薄く開いた唇だとか。
なんとも悪戯心を擽られる、艶のある顔。
「ま、反応が無いのはつまらねぇしな。」
どうせちょっかいを出すのなら目覚めてから、とランサーは決めて、
士郎の寝顔を肴に、残りの酒を楽しんだ。


「ん…」
「お、目ぇ覚めたか、坊主。」
ゆっくりと意識が浮上していく俺の耳のすぐ側で聞こえたそれは、ランサーの声。
「っ!」
瞬時に自分の失態を知る。酔いつぶれた挙句、ランサーに寄りかかって寝てた!?
「っ悪いっ」
とっさに謝って、ランサーから離れようとして。
「え。」
ランサーにがっちりと肩を抱きこまれていた。
「悪い、と思ってるんだよな、坊主。」
何故か上機嫌で言ってくるランサー。
嫌な予感。だが俺は素直に頷いてしまって。
「なら、これでチャラにしてやるよ。」
止める間もなく。ランサーの顔が近付きすぐにゼロになった。
ようするに、俺はランサーに口付けられていた。
「ん!!!」
舌を絡められる。酒の味がして、くらりとする。
あー、巧い。ランサー滅茶苦茶キスするの巧い。
酔っているせいだと、強く、思いたい。
気持ちよくて 流され る
「ふ……は、ぁ。」
漸く離れたランサーの唇。酸欠のせいでぼうっとした俺に。
「どっちも旨かったぜ。」
空になった一升瓶を軽く振りながら。ランサーが実に満足そうに言う。
「ああ…それは、良かった。」
深い溜息をつきながら俺は言う。怒る気にもならないのは、アルコールのせいなのだと自分に言い訳して。
赤くなっているだろう顔を隠すように、そっぽを向いた。
ランサーは笑って俺の髪をくしゃりとかき混ぜると、じゃあなと手を振り立ち去った。

次からは、ランサーの側では気を弛めないようにしよう。
俺はそう心に留めたのだった。




うちの槍士、基本はこんなノリみたい。
士郎、隙まみれで。ランサーは据え膳は喰うとばかりに
ちょっかい出して。
屋内だったら、えろに突入してただろうな〜

















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