理由
なんで、こんなことになったのか。
いや、俺が頷いたからなのだが。
新都の普通のビジネスホテル。その部屋のベッドに俺は押し倒されている。
シーツを汚さないようにタオルを何枚か無造作に敷いた上に。俺の上にのしかかっているのはランサー。
新都でバイト帰りにランサーに会って、他愛のない話を少ししたあと、
ランサーが世間話をするかのように、突然
「なぁ坊主。抱かせてくんねぇか」
そう言った。もちろん俺は、たちの悪い冗談かと思ったのだが、そう言ったランサーの顔がやたら
真剣味を帯びていたので、俺みたいなのに声をかけるほど、魔力が足りてないのかなと思って。
俺が断って、遠坂あたりに矛先がむくのも困るし。
ランサーのことは、まぁ聖杯戦争時のことをなんとか水に流せば嫌いじゃない。
現代に馴染むこいつをみていると警戒心も薄れてしまい…俺は、いいけど、と口にしてしまっていた。
「ん…む」
深く重なる唇。キスをする時にランサーは一言断りをいれてきた。それが少し意外で。
「ぅ…んっ ふ…」
重ねるというより、かぶりつくと言ったほうが的確。
歯をかるくたてながら、舌で俺の口内を掻き回す。くちゅと唾液が混ざり合い音をたてる。
「ふっ う…ん!」
息苦しくなって、俺はランサーの身体にすがりつくように腕をまわしてランサーのシャツを引く。
それを気にもせず、ランサーは俺のシャツの裾から腕を突っ込んで、背中を撫で。胸を撫で。脇腹をなぞる。
ただ撫でられてるだけなのに、身体が小さくはねた。やっと唇を解放されて、はぁと息を吐く。
と、ランサーと目があって。
「…いい顔すんなぁ、坊主」
にや、と笑いランサーが俺の頬を撫でた。
ぼっと顔が熱くなる。そう言ったランサーの顔に、色気というものを感じて。
やばい、と思う。何がやばいのかわからないが、やばい。
ランサーはさて、と呟き行為を再開した。俺のシャツを捲り上げ何かを一瞬考えて、
俺に腕をあげるよう指示してきた。いわれた通りに腕をあげると、あっという間にシャツを脱がされる。
呆然としている俺をみつつ、ランサーも自分のシャツを脱いで。
「っぁ」
おもむろに俺の胸の少しかたくなった尖りをつまんできた。
俺の反応に気をよくしたのか、ランサーは左側を指でこね、右側を口に含みしゃぶる。
じんと身体のなかから熱が生まれる。
「んっ ふぅ…っは あ ぁ」
時折唇を噛み締めて、零れ落ちる喘ぎを堪えようとするが、それはほとんど意味をなさない。
次第に口を半分開いた状態で荒く息をつきながら 俺は声をあげていた。
胸ばかり弄っていたランサーの手が、俺の下半身にのびて、
胸への愛撫はそのまま、器用に俺のズボンを下着ごと取り去る。
「っあ」
今までの接触だけで、すっかり反応しきっている自身を晒されて
羞恥に唇を噛む。そんな俺に追い討ちをかけるように
「っらん、さ…っあ はっ あぁ!」
ランサーが躊躇いも無く俺のものを掴んでゆっくり刷り上げてきた。
巧みな動きにあっという間に翻弄される。手加減など無しに追い上げられて。
「っあ はっ…は、 あ…ア!」
ただただ喘ぐ俺の耳に
「旨そうだな」
そんなランサーの声が 届い て
「!や、め…っ」
止める間もなく、俺の中心はランサーの口内に呑み込まれていた
「ぁやっ、いゃ…だ…っ」
ぐちゅ、ちゅ、とおとがきこえる。
きつく締め付けられて。柔らかくつつまれて。熱くて。
痛いほどの快楽に、あたまがしろく
「ーっ!」
堪えることなんか出来ず俺はランサーの口内で果ててしまった。
一瞬ランサーがくぐもった声をだして、だが吐き出されたそれをすべて飲み込みついでにと
俺の先端をちゅ…と吸ってようやくはなしてくれた。
「いくなら先に言えって。」
そういいながら、けほと少し咳き込むランサー。
「悪いっ、てランサー、お前 飲んだ、のか?」
俺がぎょっとして言うと。
「そりゃ飲むだろ。ん、思ったよりは魔力、あるんじゃねぇか」
なんでもないことのようにランサーが答える。
俺の精で白く汚れたランサーの唇を、俺は直視できず俯いた。
「それにしても、やけに早かったな…なぁ坊主、お前やったこと無いとか言わねぇだろうな。」
と、どこか心配そうに問うランサーに
「う。一応、経験はある…」
もごもごと小さく俺は言う。
たぶん、ランサーからすれば無いのとかわらないだろうが。それが悔しいやら、恥ずかしいやら。
だがランサーはその答えにほっとしたようで、
「そりゃ良かった。流石に女も知らねぇうちに男にやられちまった、じゃあ悪いからな。」
そう言って明るく笑う。ああ、うん。俺もそこは同感だ。
というか、これで終わり…ってわけには、いかないんだろうな。
そんな風に思っているのが顔にでたのか。
「心配すんなって。ちゃんと、坊主もよくしてやっから。」
ランサーは軽く言うと今度は俺を裏返して四つん這いにさ、れ?
「って何やってっ!」
「あー、黙ってろよ。濡らすもん無いからな。舐めてやる。」
「舐、め…って ちょ、まっ」
もう言葉はいらないとばかりに、ランサーは俺の尻を掴んで、奥の窄まりにランサーの息があたって、
そこにランサーの 舌が
「っひ…っっゃ あ、ぁっ」
ぴちゃ、と音をたてて舐め、後孔を指で開きながら尖らせた舌をねじ込んで、
そこからランサーが自らの唾液をなかにたらす。指を舌と共に挿しいれて、なかをさぐる。
濡れた音をたてながらかき混ぜられて、指がある箇所を抉った時。
「ーっあ……!!」
信じられないほどの快感が身体を駆け巡った。
「あっ、あ は…ぅっ、ゃ……い、ゃだ!」
シーツに顔をうずめて、必死に訴えるけれど、俺にはもう、やめて欲しいのか、やめないで欲しいのか。
わからなくなっていた。ただ、決定的な、なにかが欲しいと。
ぐちゃぐちゃになった頭でおもうだけ で…
指が引き抜かれ、身体を仰向かされる。かちゃと音がして、
ランサーが覆いかぶさってきて、両脚を抱えあげられて
熱くなった俺の後孔にあてがわれた ランサーの 熱
「力、抜いてろ。」
低く、ランサーが囁く。欲に染まった視線。
意味も無く、震えた。言われるままに、息を吐いて力を抜いて
「っひ ぃっああああぁっ!」
ず、と音をたてて入り込む熱と質量。
「あ…っぃ っ…ぅっ…ん…!!」
逃げ場なんてない。俺は自分を侵す相手に、ランサーにすがりつくことしか、
耐える術がなくて、必死に抱きつき声をあげて。
「っふ、ぅ」
ランサーが俺の耳元でひとつ息をついて、動きがそこで止まった
「ぁ…ぜん、ぶ …はいっ て」
「…ああ、俺の全部、坊主ん中だ。…っ、こら。あんま、締め付けんなよ。ほら、力、抜け」
「あ あぅ」
なかにおさめたまま、ランサーが身体を揺する。
馴染ませるようにしばらく小さく動いて。
「っ、そろそろ、か。悪いな坊主。俺もいい加減 限界だ」
その言葉を最後に、ランサーは俺の腰を固定すると、激しく動きはじめた。
「っあ…ひっ ぃ あっあ…ア…っあぁッ」
俺ももう言葉などでない。突き上げられるたびに甘い喘ぎ声がかってに口から零れて、
貫かれた時に感じた痛みなど、もう無かった。なかを擦られるだけで俺の中心はまた高まって、
先端からぽたぽた雫を零して、自分の喘ぎ声と、濡れた音と、ランサーの獣のような息づかい。
耳に届くのはそれだけで。
「んっ、んぅ っ」
次第にすすり泣くような声になってきた俺に、身体を倒して口付けてくるランサー。
舌で涙に濡れた目尻を拭い、頬を舐め、唇を舐める。喘ぎながら、
俺はランサーの舌を迎え入れて深く唇が重なり、声が封じられる。
くぐもった声だけがもれるなか、最後とばかりに突き上げが今まで以上に激しくなって。
「っぅ…ぅー!」
「っ」
すがりついたランサーの背に爪をたてて、俺は昇りつめた。
同時にランサーも達したみたいで、なかにどくんと熱いものが注がれた。
「っはぁっ…は…はっ」
唇をはずされて、息を整える。どこもかしこも熱い。
ずる、とランサーのものが引き抜かれ、なかから熱が零れだす。
「……ん…?」
そこで俺はやっと気づく。
「なぁランサー。」
「ん、何だよ。」
「お前、魔力とってない、よな。」
「?何言ってんだ」
心底わからないという顔をするランサー。
「何って…お前、俺から魔力とるために、こんなこと、したんだよ……な」
言いながら、俺はもう自分が思っていたことは間違いだったということには気づいた。
案の定、ランサーは大きく溜息をつくと、
「んなわけねーだろ」
そう言った。
「じゃ…あ、なんで、こんなこと、したんだよ」
聞かないほうがいい気がする。そう思いなおした時には遅かった。
「あのなぁ…気に入った奴、抱きてぇと思うのは当然のことだろ。
俺は坊主に惚れたから、抱いただけだ。」
「………ぇ」
意味を理解して、俺は
「ん?どうした」
ランサーが覗きこんで、くる!
「っ」
俺の顔はたぶん、真っ赤だろう。
「…あー、なんだ、坊主。お前、魔力供給っつー理由つきなら気にしなかったものを、
俺が好意で抱いたって聞いて、動揺してんのか。」
ランサーがなんともいえない表情で聞いてくる。
俺自身がなんでこんなに動揺しているのかわからないのだから答えられるはずもなく。
半分やけになって涙目でランサーを睨みつけると。
「っく、おもしれぇなぁ坊主!」
ランサーはそう言って、先ほどの行為の余韻も吹き飛ばす勢いで俺の髪をかきまわすと、
実に楽しげに笑ったのだった。
終わりです。
最後のやりとりが書きたくて書いたえろでした。
ランサーはさらっと惚れたとか言いそうだなとか。
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