名前を呼んで
「あんたって俺の名前、呼ばないよな。」
居間でくつろいでいたら、音もなくランサーがあらわれて、座っている俺の背後に近づき腰をおろした。
それだけならまぁいい。何故かランサーは俺の腰に腕を巻きつけてきて。背中にランサーの胸があたる。
ランサーの脚の間に俺が座っているという状態に。何か用でもあるのかと思えば、特に何を話すでもなく。
そんなわけでふと思いついたことを聞いてみることにしたのだが。
「なんだ坊主、名前、呼んで欲しいのか?」
「別に、そういうわけじゃない。ただ、呼ばないよなって。」
それが俺に対してだけなのか、他の奴にもそうなのかはわからないが。
なんとなく聞いてみただけのことだったのだが、口にしてしまってから妙に気になってきて失敗した、と思う。
黙り込んだ俺をみてランサーは何を思ったのか。ぐっと腰にまわしている腕に力をこめてさらに身体を密着させてきた。
「ちょっ、何やって…!?」
べろりと耳に濡れた感触。な、舐められた!?
それだけでは終わらず、そのままランサーの口内に含まれて。
「っ、ラン、サー…!!」
それから逃れる為、身体をよじり後ろをむこうとする。と、
あっさりランサーは俺の耳をはなした。そして。
「隙だらけだな。」
言って、腰に巻きつけていた片方の腕をあげて、俺の後頭部へまわし。
「っぅん……っ」
逃さないよう抱え込まれ、唇を重ねられた。舌が閉じた俺の唇の上を這う。
その感触にたまらず薄く唇を開くとぬるりと入り込んでくるランサーの舌。
絡めて吸われて噛まれて、思う存分貪られて。銀糸を引きながらやっと解放されたころには
すっかり息があがっていた。酸欠でぼうっとした頭のままランサーをみていると、
ランサーは悪戯っぽくにやりと笑って、
「ほんと、面白ぇ奴だよな、士郎」
そう、耳元で低く囁かれた。
「っ!!」
瞬間、ぞくんと身体を熱が走りぬけた。やばい、俺、名前呼ばれただけで…っ!ばっと立ち上がり後ずさる。
「お、なんだ。折角名前、呼んでやったのに。感想きかせてくんねぇのか?」
ランサーはにやにやしている。くそっ、俺がどんな状態なのかわかってますって顔してやがる!
顔が熱い。きっと耳まで真っ赤だろう。
「っ、もう名前呼ぶな。坊主とか小僧で充分だ!!」
混乱したまま適当に口にして、そのままばたばたと居間から脱出した。
ランサーの噛み殺した笑い声が走り去る俺の耳に僅かに届いてきた。
ランサー、士郎の名前呼ばないよなって話。
普段、名前呼ばない奴に名前呼ばれると感じるものあるよなと。
思いつくかぎりじゃ、ランサー、サーヴァントのクラス名は呼ぶ
か。ギルガメッシュも名前で呼んだ時あったかな。あと言峰と。バゼットは呼んでたっけ?
凛に対しては直接呼ぶときはもっぱら嬢ちゃんだけど、UBWで対アーチャー戦の時に、
凛と貴様なら〜という言い方をしてたな。基本的にはあまり名前は呼ばないのかも。
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