本気の遊び 2a



 

おとなしく受け入れるか。
それとも、無駄でも抵抗するか。


―受け入れる

結果は変わらない。それなら、きっと受け入れてしまった方が楽だろう。
俺はそう結論づけて、身体の力をふっと抜いた。
そうだ。俺は女の子じゃないんだから、こんなこと大した事無い。
と、そこまで思って、いやまて、と思い直す。
俺は正真正銘、男だ。
男が男に襲われるってのはどうなんだ。
しかも、それを受け入れる気になるなんてどうかしてるだろう。
いや、それよりも問題は…
「なぁ…この場合、女の役をするのは…」
「ん?坊主に決まってるだろ。」
「なんでさ。」
すでに、俺がやられる側だと決定していること。
そりゃ、ランサーと比べれば小柄だけど。
「…坊主、オレを抱きたいのか。」
真面目な顔でランサーが訊いてくる。
「そう、言われると…困る。」
うん。別に俺はランサーを抱きたいなどとは思っていない。
どうせするなら、女の子の方がいいにきまってる。
ただやっぱり、自分が男にやられるってことに、当然のように抵抗があるだけで…
「なら問題無いじゃねぇか。」
「いや、だからさ。…俺なんかとやったって、面白くないぞ絶対。女の子みたいに柔らかくないし。」
「面白いかどうかは、やってみねぇとな。いい加減、腹くくれや、坊主。」
「くくれるかっ!」
「オレは、興味あるんだよ。坊主がどんな声で啼くか、どんな顔、みせるか。」
「っ!」
会話はここで、終わった。
ランサーの顔が一気に近付き、俺の唇はランサーの唇に覆われていた。
口付け、されている。
ぱちぱちと瞬きする俺に、ランサーは至近距離で目を細めて笑う。
抵抗無く、ランサーの唇を受け入れている事実に俺は気づいて内心驚く。
ランサーの舌が俺の唇を舐める。
それに俺は無意識に、応えるように唇を薄く開いていた。
あ、と思った時にはもう遅い。
ランサーの舌は俺の口内に潜り込み、なおかつ逃さないように俺の身体を抱き寄せた。
がっちりと腕で拘束される。ランサーの身体と密着し、ランサーの熱を感じる。
俺は引き剥がすようにランサーの背中に腕をまわし、
だが、次第にそれは、縋りつくようなものに変わっていった。
目を閉じて、口内を這い回るランサーの舌を受け入れる。
やられっぱなしなのが、少しずつ悔しく思えてきて。
俺は自分からもランサーの舌に、舌を絡めた。
ランサーが笑う気配がしたけれど、気にしないことにする。
くちゅくちゅと、唾液の混ざる音。
立っていると、ランサーより背の低い俺は、顔を上向かせるしかない。
ランサーに送り込まれ、呑み込みきれなかった唾液が、つ、と口端を伝い落ちた。

やっと解放されて、はぁと熱い息を吐く。
肩で息をしていると。
「まだ、これからだろ、坊主。」
そう言ってランサーは、俺のシャツを徐にたくし上げてきた。
「っ、まてって、ランサー!」
「何だよ、腹くくったんじゃねぇのか、坊主。」
咄嗟に制止した俺に構うことなく、ランサーは俺の裸の胸に口付けてきた。
「っん」
息を呑む。心臓付近を指で擦りながら、胸の尖りに軽く口付け、
その後、きつく、吸い付いてくる。
「ぁ…っ」
声を漏らした俺を、目線だけあげて、見てきたランサーは、笑みを浮かべて、
さらに強く、吸い上げた。
じりじりとそこから熱が、あがってくる。
「っ、そこ、ばっかり…っ、よせっ」
「もっと、違う所も、触って欲しい、か?」
「違っ、」
狼狽える俺を面白そうに見て、ランサーは胸から唇を離し、
次は腹、臍のあたりを舐めてくる。
ほっとしたのもつかの間。ランサーは徐々に身体を沈めていく。
下へ、下へ。
その意図に、気付いて。
「ランサーっ、それはいいっ、しなくて、いいっ!」
遮るようにランサーの肩を押し返そうとしたが、それで、ランサーの動きが止まるはずも無く。
手早く俺のズボンの前を寛げて、下着の中から、少しだけ高まっていた俺の中心を取り出し。
「ちゃんと、立ってろよ。」
言って、ぱくりと俺のモノを、銜えこんだ。
「っっ!!」
声も出ない。躊躇いもせず俺のモノを銜えた目の前の男が信じられない…!
ランサーは、めちゃくちゃ巧かった。
元が器用なのかどうかは知らない。ただ、巧くて。
俺は抵抗なんて出来ずに、追い上げられていく。
ランサーの唾液と、おそらくは俺の先端から零れる腺液とで、
ランサーが口を動かすたびに、ひっきりなしに濡れた音が響く。
多分、わざと音を出している所もあるんだろう。
俺を、煽る為に。
「はっ、は、…ぁっ、あ…」
見事に俺は、煽られてる。ランサーの意図がわかっていても、止められない。
がくがくと脚は震えて、縋るようにランサーの頭を抱え込む。
ランサーは、俺の中心を弄りながら、溢れた腺液と、自らの唾液で指を濡らし、
その指を下着を掻い潜って、俺の後ろの窄まりへと這わせる。
「っ、そこ、は…っ」
目的を知り、融けかけた思考が少し、戻る。
俺が受ける側、ということは、そういうことだ。
「慣らさねぇと、入んねーぞ。」
ランサーはそう言って入り口を指で揉み込む。
「っ、ふ…」
むずむずする。
少しずつ、解かすように指の腹で何度も何度も、揉み込まれる。
思い出したように、再び俺の中心も、銜え込まれた。
「あ、ぁっ、っつ…!」
中心へ与えられる刺激に気をとられた瞬間。
浅く、指がそこへ、潜り込んだ。
多分、第一関節だけ。ぴり、とした痛み。
それを宥めるように、浅い部分を擦る。
俺の反応を見ながら、少しずつ、入り込んでくる。
そこが、指に慣れてくると、なんともいえない奇妙な感覚が湧いた。
思わずランサーの指を締め付けてしまい、
ランサーが俺の中心を銜えたまま、喉の奥で笑って。
俺は、赤面する。

馴染んだと判断したのか。
二本目の指は、少し強引に入れられた。
入り口付近は相変わらず痛みはあるが、内は違った。
ランサーの指を受け入れている。
自覚して、たまらなくなる。
ごまかすように、大きく息を吐き出した時、
ランサーの指が、そこに、触れた。
「っ!あ、ぅっ…!?」
自分の上げた声に驚く。そして、感じた快楽に。
「イイか。」
言って、にやりと欲に染まった目で笑うランサー。
「ちょっ、ぁ…っ」
何を言おうとしているのか、自分でわからなくなる。
それぐらい、感じた。頭が真っ白に、なる。
腰に、熱が溜まる。

絶頂ぎりぎりの所で、ランサーの指が、引き抜かれた。
あ、と、どこか縋るような声が出てしまい、咄嗟に唇を噛む。
ランサーは、俺のズボンを下着ごと脚から抜き去って、俺の身体を、床に押し倒した。
驚いて、反射的に起き上がろうとして。
俺の目に、飛び込んできた、モノ。
ランサーが、自身の前を寛げて、熱を取り出している。
「無理だ。」
腰が、引ける。物理的に無理。そんなの入るわけ、ない。
「慣らしたんだから、大丈夫だろ。あとは坊主の協力次第だ。」
ランサーは軽く言って、俺の脚を掴み、自分の肩に担ぎ上げてしまう。
後孔に、あてがわれる、灼熱。
「そ、そうだ、俺、口で、してやる。だから、やめよう!」
俺は気づけばそう口走っていた。
ランサーは、一瞬驚いた顔を見せたが。
「そっちも魅力的だが。……悪いな坊主。オレは、ここに、入れたいんだ。」
ランサーはそう言うと、ぐ、と腰を、入れてきた。
入り口が広げられ、ずぶりとなかに、熱がはいって、くる…!
「っ、き…つ。弛めろって、坊主。」
「ぁ…っ、無茶…いうなっ!」
ランサーが文句を言ってくるが、知るものか。
目を閉じていても、暗闇で赤い光が点滅しているような感覚。
熱いものが目尻を伝っていくのを、感じた。
入り込む動きが、止まる。
まだ全てではないはずだと、ぼんやり思う。
「…あー、痛いか?」
ランサーが当たり前のことを、訊いてくるから。
「めちゃくちゃ、いたい。」
俺も、そのまま、答えた。
ランサーの目が、俺の中心を見る。
そこはすっかり痛みで縮こまっていて。
ランサーは目線を俺へと向けて、身体を倒してきた。
その際、内におさまったモノの角度が変わって、痛みに、う、と眉を寄せた俺に、
ランサーは軽く唇を落としてきた。
ぱち、と瞬くと零れる涙を、ランサーが唇で受け止め、吸う。
その甘さに、頬が熱くなる。
ランサーは、俺の力をなくした中心にも、そっと触れてきた。
ゆっくりと撫で擦る。
「あ…っ、ん…ぅ」
小さく喘いだ俺に。
「こっち、気持ちイイだろ。集中してろ。」
ランサーはそう言って、ゆっくり俺を高めていく。
自分は動かず、俺が快楽で満たされるのを、待つように。

殆ど力ずくで、始まった行為だったけれど。
こんな気づかいを見せられたら、絆されて、しまう。
ランサーって、もてるだろうなぁと、痛みが快楽に紛れていく中、思った。

「ふ……っ!っ、ん、あ!」
俺の身体が快楽に堕ちたのを見届けて、ようやくランサーは全てを俺に、突き入れた。
痛みは勿論あるけれど、それよりも快楽が、勝ってきている。
は、とひとつ、息をついたランサーは、俺と目を合わせて。
「さて、愉しもうぜ、坊主。」
「え…っあ!」
今までの緩やかさが嘘のように、強く突き上げられて。
思わず声が、高くあがる。
「ちょ、っ、あ、まっ、てっ…ぁっあ」
「もう、充分、待って、やっただろっ」
「ゃっ、ぁ、あっ、あぁっ!」
一番感じる前立腺を、集中してその熱で抉ってくる。
絶え間なく与えられる快楽が、くるしい。
強すぎる快楽は、痛みと変わらない…!
俺はランサーに抱きつき、背中に爪を立てた。
ランサーは俺の腰を抱えなおし、さらに深く、腰を入れる。
お互い、獣のような、荒い息をついて。

「っ、あ、ぅあっ、あ……――!!」
「っ…く…!」

ほぼ同時に、白濁を、吐き出した。
内に注がれた熱に、震える。
そして、それ以上の虚脱感が、俺を襲った。
「あ…?」
「悪い。ついでに貰った。」
少しも悪いと思ってないような顔で、ランサーが笑い、
俺に、ちゅ、と音を立てて口付けてきた。
――魔力まで、ごっそりと、奪われた。
ランサーの背中に回していた腕を、力なく外し、床にぱたりと投げ出す。
「…もう、お前と、遊ぶのは、ごめんだ。」
心底疲れ果てた声で、俺がそう呟けば。
「そう言うなって。また、付き合えよ、坊主。」
くつくつと笑って、ランサーは俺の髪をくしゃりと撫でた。

…あー、はやく、抜いて欲しい。
いまだ繋がったままの状態に、俺はそう思うが。
口に出すのも億劫で、俺はそのまま、目を閉じた。


狗に遊ばれ、咬まれた。
結局は、そういうことだ。








明暗分かれたえろになったなぁとか。
こっちはライトにと思いながら書きました。













小話・雑感部屋へ戻る