禁忌




 
口で言うほど割り切れていないことは表情を見れば一目瞭然だった。
だからこそ、それは極上のワインのように味わい深い。


「っ……う…」
堪えきれずに零れる声。
殊更ゆっくりと後孔に熱を捻じ込んでいく。

痛みと快楽と、その他諸々の感情に雁字搦めにされながら歪む、
その表情は、実に私好みだ。

「なかなか、覚えが早いようだな。」
全てを呑み込み、甘く締め付ける後孔。
広げられ赤く充血したその入り口の縁を指でなぞれば、
ひゅうと息を呑む音が下から聞こえる。
「っ…さわ、るな…っ、綺、礼…!」
私に犯されながらも強い視線で睨みつけてくる。
心だけは犯されないとでもいうように。
その葛藤こそが、私を酔わす。



名を、士郎という。
どういった気紛れか、ギルガメッシュが手元に置くと攫ってきた、
あの大火災でのただ1人の生存者。
気紛れという意味では、恐らく自分自身もそうであったのだろう。
この子供を自らの養子という形で迎え入れたのだから。
それからおよそ、5年以上はたったか。
もとより士郎はギルガメッシュの為の贄も同然であり、
ある程度身体が成熟すれば、魔力搾取の為に身体を犯されることは必然で。
今こうして、私がこの身体を犯しているのは、
言ってみれば食事の為の食材の下拵えのようなものだった。
英雄王が満足するように。
私自身も思いのほか、堪能している。
義理の父子関係にあり、同性であり、挙句の果てには聖職者。
全てが異常なことであると、理解しているだろう。
この士郎にとっては厳密に言えば、私とは他人同士であり、
ここへ来るまでは聖職者として生きてきたわけでもない。
だが、この数年の生活で否が応でも士郎は聖職者としての在り方を知り、
形だけとはいえ、私との父子関係も築いた結果。
今のこの行為を、諦め受け入れている風でありながらも、
実のところは全く割り切ることができずに、苦しみもがいている。
揺れる視線の奥に見え隠れする懊悩。
それは私の欲を煽る充分な要素だった。


ナカにおさめた熱を掻き混ぜるように奥深くで揺さぶる。
あ、と堪えきれない声が零れる。
強すぎる快楽は、時に痛みを凌駕する苦しみを与える。
前立腺を執拗に熱で抉れば、士郎は手が白くなる程にキツくシーツを握り締め、
頭を振って涙を流す。その様は実に甘美。
ぎりぎりまで高まった士郎の中心の熱には触れず、後孔だけを嬲る。
時折ふる、と震え先端から蜜を溢れさせる。
「あ…はっ、はぁっ、あ、ぁ…っん」
壊れたように甘い喘ぎと啜り泣くような声しか零さなくなる喉。
後孔を抉る動きに合わせて声が上がる。
それが掠れてくれば、頃合。
それ以上は長引かせることなく、一息に堕とす。
その、達する瞬間の表情。
恥辱に染まった貌が、私の熱を煽り、最奥に白濁を全て注ぎ込む。
勿論、これを士郎は最も嫌っている。

後孔から自身の熱を引き抜き身体を離してしまえば。
士郎は完全に切り替わる。
情事後を匂わせぬ様で起き上がり、
その拍子にナカから私の注いだ白濁が溢れる感覚に眉を寄せ。
「だから…なんで、ナカで出すんだよ、この似非神父。」
そう悪態をつき、睨みつけてくる。
「それにも早く、慣れることだな。」
そう告げてやると、士郎はぐ、と黙り込む。
この行為を、ある意味では正しく理解しているのだろう。
そう、コレは、英雄王に魔力を奉げる為の下準備なのだと。
「……身体、流してくる。」
士郎はそう呟くと、シーツを巻き付け頼りない足取りながらも、1人で部屋を出て行く。
その姿を私は黙って見送る。

隠すつもりも無かったせいか、士郎は私の歪な感性を承知しているようだ。
勤めで日本を離れることが多い為、それ程長い時間を共に過ごした訳でもないのだが。
やはり義理とはいえ、父子という関係性が他者よりも近づけさせるものか。

それを承知の上で、私を疎みながらも、受け入れる矛盾。

大火災でのただ1人の生存者という事実が生んだ歪みか。
なかなかに士郎は興味深い子供で。
この先、どう変化するものか見届けるのも悪くはないと。
それは英雄王が口にする戯れと酷似した感情で。
自然、口元が笑みの形に歪むのを感じながら、私も部屋を後にした。









義理の父子で同性で聖職者という三重苦のえろ。
すいません。つい、うっかり、手がすべりました。
全てはゼロ4巻の影響です。言峰綺礼。素晴らしすぎるその感性……!










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