「ギルガメッシュがお前を呼んでいたのは其れの為か。」
綺礼が僅かに唇に笑みを浮かべて言う。
「…うるさい。」
憮然と呟く士郎。
「ふ、お前も充分、それには甘い。」
人のことは言えぬと言外に含ませて言う綺礼に、士郎は諦めて溜息をひとつ。
「…そうだな。」
静かに言って、士郎の足を枕にして眠るギルガメッシュを眺めた。

綺礼の言伝をうけて教会に戻った士郎は、ギルガメッシュが使う部屋へと向かった。
「遅い。」
部屋に入るなり、不機嫌を隠さずに告げるギルガメッシュ。
「悪かった。それで用件は?」
士郎はギルガメッシュの不機嫌をさらりと流して問いかける。
それにギルガメッシュは多少眉をひそめたが、まぁ良いとひとつ頷き。
「ここに座れ。」
自分が腰掛けているソファを指す。
3人は座れる大きさのソファの左側にギルガメッシュ。指したのは隣になる右側。
逆らわずに士郎はそれに従い隣に腰かける。
「で、どうす…?」
言いかけた士郎は思わず言葉を呑む。
左の太腿に重圧。そこにはギルガメッシュの頭が乗っていて…
これは所謂、膝枕、というやつかと士郎は頭の中で冷静に答えを出して。
「…用件はこれか?ギルガメッシュ。」
抑揚の無い声で呟くと。
「ふん、良くもないが悪くもない、か。光栄に思えよ雑種。」
納まりの良い場所を探すように数度、頭を動かし。そんな勝手なことをギルガメッシュが言う。
「…別に、これぐらいの用件なら、綺礼でもかまわなかったんじゃないのか?」
嘆息しつつ士郎が言うと、ギルガメッシュはあからさまに顔を歪め、
「…その様を、自身に置き換えてみるがいい。」
そう言ったので、士郎は考えようとして。
「俺が悪かった。」
返答に数秒もかからなかった。
それは、悪夢だ。
士郎の答えに満足したのか、ギルガメッシュは唇に笑みを浮かべ
「理解したならば、我が目覚めるまで、そのまま大人しくしていろ。」
そう告げて目を閉じた。
士郎は呆然とその様子を見て。
数分後、本当に寝入ったギルガメッシュの規則的な呼気を聞く羽目になった。
猛獣に懐かれると多分、こんな気持ちなんだろうな、とか。
サーヴァントが寝るなよ、などと詮無いことを思う。
ギルガメッシュは受肉しているとのことなので、眠りにも意味があるのかもしれないが。
とりあえず、いつギルガメッシュが目覚めるかもわからないので暇だった。
何か本でも持ってきていれば良かった、と思った時に、綺礼が訪れたのだった。

「まぁ、あんたが来てくれて助かった。何でもいいから暇つぶしに読める本、持ってきてくれ。
 教会に置いてある本なんて、しれてるだろうけど。」
士郎が綺礼にそう頼む。綺礼は返答を顔に浮かべた笑みですませて部屋をでていこうとし、
その背中に士郎はなんとなく呟く。
「ギルガメッシュには、嘘がないからな。
 とんでもない奴だけど、そういう所は 嫌いじゃないんだ。」
「…それが、お前の理由か。」
綺礼の問いかけには答えず。士郎は薄く笑みを浮かべて、
そっと、眠るギルガメッシュの髪に、指先を触れさせた。





<雨の中で>後日。
ギルを甘やかす言峰親子。
教会士郎の場合は、幼いころからギルとつきあってきてる
ので、とりあえず慣れたんだと。綺礼よりもわかりやすいから
慣れれば付き合いやすいかも、とか。

















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