一人遊び
「なんだ、この残骸は。」
ギルガメッシュが部屋に足を踏み入れると、そこには言葉通り
何かの残骸が山のように折り重なり、その中心にいたのは士郎。
「む…確かにそのとおりだけどさ。」
そういいながら、何も無い空間から、何の前触れも無く士郎は
まわりに転がる残骸と同じものをつくりだし、手に握る。
まるで泥をこねて何かをつくり遊ぶ子供のように。
「…うまく、いかない。」
ひとつ溜息をついて士郎はそれを周りの山に積む。
「投影魔術…贋作者の素質があったか。」
ギルガメッシュがぽつりと呟く。
「…?ふぇい、かー?」
士郎の復唱には意をとめず、ギルガメッシュは問う。
「雑種、いつからこれを?」
「少し前から。せっかく魔術師ってのになったんだからさ。
何かできないかと思って。基本的なことは綺礼に聞いた。
これ、とうえい魔術っていうんだな。
モノの仕組みっていうか、そういうのはわかるから、
なら一から創れないかなって思ってやってみたんだけど……むずかしい。」
士郎はそう言って小さくうなる。
「成る程。で、何を創る気だ。どうやら剣、のようにみえるが」
重ねてギルガメッシュが問うと。
「夢に剣がでてくるんだ。すごく、きれいだったから
創ってみたいと思った。細かいところまで思い出せるのに…」
言った士郎は、その剣を思い出したのか、少し笑みを浮かべる。
「ふん…」
ギルガメッシュは無造作に残骸の中の一つを手に取り眺めた。
よくよくみれば、思い当たる剣の特徴。眉をよせ、
「身の程を知るのだな。雑種には過ぎた代物だ。」
そう吐き捨てると手にしたものを手放した。
「む。やってみなきゃ、わからないだろ。」
士郎はそんなギルガメッシュに噛み付き。
「絶対創って、見せてやる。ほんとに、きれいなんだからな。」
そう言ってくる。
「…贋作などに興味はないが。」
ギルガメッシュはそこで一度言葉を切り。
残骸の中にいる士郎を眺め。
「どう化けるか、暇つぶし程度には愉しめるかもしれんな。」
そう言って小さく笑った。
士郎はそれをみて、心の中でもう一度、決意を強めた。
絶対に創りあげて、認めさせてやる、と。
今はとりあえず…
「これ、いい加減片付けないとな。綺礼にも嫌味、言われる。」
と呟き、近くにある失敗作を手に取り、適当に魔力を流す。
そうすると、あっけなくそれは形を保てなくなり霧散する。
黙々とそれを繰り返す中、ギルガメッシュは何をするでもなく
士郎を眺めていた。よっぽど暇なんだなぁなどと思いながら
士郎は最後のひとつを手に取り、片付けおえた。
ふと、ひりひりとした痛みに手のひらをみやると、失敗作とはいえ、
いくつかは普通に斬れるものもあったらしい。気にせず刃の部分を
掴んだりもしていたので、幾筋か手のひらに切り傷があった。
そんなに深くはないので、舐めとけばいいかと手を口にやろうとして、
ギルガメッシュと目があった。士郎は黙ってギルガメッシュに手のひらをむけた。
今日はもう魔力をとられてはいたけれど、このまま流すのももったいない。
血を採られるなんてことにも慣れるものだなーなどと士郎は呑気に考えて、
ギルガメッシュの行動を待った。
ギルガメッシュは少し目を眇めると。
「来い」
それだけを士郎に告げる。おとなしくギルガメッシュに近付いた士郎の腕をとり、
手のひらに舌を這わす。傷口を抉るように蠢く赤い舌を、血を映す赤い瞳を、士郎はただみていた。
切嗣によってセイバーの鞘はうめこまれているので、
夢の中にでてくる剣は、エクスカリバーで。
なんとなく、投影魔術で一人遊びをする士郎、というのが
浮かんだので。
なんだかんだいいながら仲の良いイメージができつつあります。
義父:綺礼 義兄:ギル って感じで。
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