負けず嫌い
何が、この男をそうさせたのか。
途中までは、いつも通りに体を重ねていた筈だ。
『おまえは動くな』と、えらく必死な表情で告げてきた衛宮士郎は、
今、私の熱を後孔でくわえ込んでいる。
上体を起こした私の上に跨り、たいして解しも濡らしもせず、強引に繋げてきた。
切れてはいないようだが、潤滑は足りず、まだ熱と痛みしかない。
それは士郎も同じだろう。
眉を寄せ、涙を浮かべたその貌にあるのは苦痛の色だけだ。
そんな貌にすら煽られる自分も、どうかとは思うが。
士郎が私を涙に濡れた目で見て。
「…っ、アーチャー、辛そう、だ。」
そう言って少し笑みを浮かべる。
辛いのはおまえだろう、と言いかけて、やめた。
口を開いた途端に、無様にも情けない呻きが零れそうだからだ。
じりじりとした熱だけを感じる。
きつく、士郎の内部で締め上げられ、意図せず眉間に力がこもる。
士郎が、体を揺らしはじめた。
恐る恐る、次第にその動きは早く。
「づ……っく、ぁ、っァ、く…ぅっ、んっ」
「…ぐ…っ、っ」
どちらからも零れる声は苦痛のそれで。
だが、僅かながらもお互いに、小さな快楽を拾いつつもあった。
士郎の中心の熱が体の動きに合わせて揺れる。
先端から滲み出た腺液が下へ、結合部まで伝い、少しずつ潤滑を良くしていく。
私の腹に手を置き、私を融けた目で見据えながら腰を揺らす。
動きは拙い。
だが、そうして私を見る、その眼差しが、私の熱を煽った。
引き倒して、その体を思うまま蹂躙したいと。
だが、ほんの僅か身じろいだ私に、士郎が動くなと掠れた声で強く制してくる。
従う義理は無い筈だが。何故か私は動けなかった。
その必死な有り様が、健気に映ったのかもしれない。
どうか、している。
ぐちぐちと結合部から粘音。
互いの荒い息づかい。
きつく締めつけるだけだった士郎の内部は、少しずつ弛み、
絶妙な力加減で絡みつき、蠢くようになってくる。
私のモノか、士郎のモノか。
なかは濡れて、動きが滑らかになってくる。
漸く、快楽が痛みを凌駕する。
士郎の表情も、悦いものへと変わり。
おそらくは私の貌も変わったのだろう。
私から目をはなさなかった士郎が、嬉しげに笑みを浮かべる。
そして腰を動かす。
浮かし、ぎりぎりまで引き抜き、そのあと勢いよく腰を落とし、おさめる。
何度も何度も繰り返す。
ただ、怖いのか無意識か、最も自身が感じるだろう前立腺を、
直接抉らぬように体を動かしている。
「それ、では……いつまでも、終わらんぞ…」
体は動かさず、私はそう士郎に声をかけた。
意図は理解したのだろう。
士郎は頬を染め、う、と息を呑む。
「…おまえ自身も、悦くならねば、意味が無いだろう…」
言って、少しだけ突き上げた。
「あ―――!!」
あたったのか、高い声をあげた士郎はすぐに私を睨みつけ、
「っ、だから…っ、動く、な…!俺が、さいご、まで……っ」
切れ切れに喘いで、覚悟を決めるように一度目を閉じ。
そのまま、再び腰を動かしはじめた。
今度はその箇所に、私の熱を導く。
「っあ、あぁっ!ア、んっ、っう…あ、ぁ…っ――!」
「っ、ふ……っ、く」
間違いようのない確かな愉悦の声を士郎があげる。
それに引き摺られるように私の熱も高められ、奥歯を噛み締め声を堪える。
「んっ、っく、ぅ、ぁっ、あー、ちゃ…っ、おれ、っ、も、ぅ…っ」
「っ、ああ、……動くぞ。」
最後は共に達したいのか。
私の言葉に士郎は必死に頷く。
士郎の体の動きに合わせて数度、下から腰を突き上げた。
士郎を促し、自らも、果てる為に。
「っ、あ、あ、あぁ――――っ!!!」
「く……ぅっ」
そして訪れた絶頂。
士郎は後ろだけで達した。
勢いよく中心の熱から白濁を撒き散らす。
それは私と士郎自身の腹や胸に飛び散る。
私は士郎の最奥に全て吐き出した。
ひく、と何度か士郎の体が、注ぎ込まれる熱に震え。
はぁ、とお互い熱い息を吐き出した。
「……気が済んだか。」
息を整えながらの私の問いかけに、士郎は。
…こんな表現はどうかと思いもするが。
――花が綻ぶように、幸せそうに、笑った。
虚を衝かれ、思わず凝視した私に。
「いつも、おまえばっかり、好き勝手するからさ。
俺も、そうしたかったんだ。
おまえの慌てた貌とか、ちょっと、可愛かった。」
士郎はそんなことを、言ってきた。
ああ、そうだった。
衛宮士郎は負けず嫌いだったなと、今更、再認識する。
「…まったく、おまえは……」
言葉が出ないとはこういうことかと思いながらも。
自分の声に含まれる甘さに気付き、苦笑を漏らして。
いまだ繋がったまま、引き抜こうともしない士郎の腰を、左手でそっと撫でた。
擽ったそうに体を揺らした士郎は、右手で私の頭を、撫でてきた。
そうして。
「…バーカ。」
笑いながら、そんなことを口にした。
「…馬鹿はどちらだ。たわけ。」
そう返した私の声も、笑い混じりで。
ごく自然に、お互いに顔を寄せ合い、唇を重ね合う。
それは酷く、甘かった。
某絵チャでのお題。
弓いじりと士泣かせ。
…萌え滾りました。お世話になりました(こんなところで)
文字では伝 わ ら な い !!!
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