狭い世界
頭からすっぽりと掛け布団を被って、その中で身体を重ねる。
世界が閉じる。
距離が近い。
空気がこもって、お互いの匂いしかしなくなる。
ぬるま湯の中にいるような。
アーチャーが俺の親指を口に含む。
爪と皮膚の間を滑る舌が辿る。
ちゅ、と吸い、次は親指と人差し指の間、指又。
上へ辿り、人差し指。親指と同じ様に舐り。
そうして順に、一本一本丁寧に、俺の指を咥内を使って愛撫してくる。
淡い快楽に少しずつ物足りなさを感じて、そんな自分自身を恥じる。
は、と小さく吐息する。
布団の中の暗がり。
俺はただ、アーチャーを見ていて、アーチャーは俺の視線を受けながら、
結局俺の両手の指、全てを舐めた。
アーチャーの唾液に塗れた手指。
無意識にそれを口元に持っていき、一本含む。
アーチャーの味が、する。
く、と小さく笑みを零したアーチャーは、今度は俺の腕を掴み、
内側の薄い皮膚の上に唇を押し付けた。
舌で舐めて、きつく吸い上げる。
ちり、とした甘い痛みにアーチャーの口元を見れば。
その部分には、薄闇でもわかるほど、紅い跡がくっきりとついていた。
頬に血がのぼる。
アーチャーは俺に構わず、幾つも跡をつけていく。
断続的に訪れる、滑る感覚と小さな痛みに、ぞくりと身体の芯が熱くなる。
自分の中心が熱をおびてくることに、居たたまれなくなる。
直接強い快楽を感じたわけでも無いのに、と。
そんな俺の様子に気付いたのか。
ふいにアーチャーが俺に腰を押し付けてきた。
触れ合う中心の熱。
自分だけではなく、アーチャー自身も十分、硬く、熱く。
「あ……。」
「私もこの有り様だ。…安心したか。」
「ぅ…ん…」
アーチャーの声は低く掠れて、甘い。
擦り付けるように腰を揺らされて。
直接中心に与えられた快楽に、思考が融けかける。
「ふ……っ、ぁ」
「実を言うとな、早くお前を侵したいのだが。」
俺の耳元で直接吹き込むみたいに囁く。
アーチャーの声にまで感じて、俺はふると身体を震わせる。
「っ…なら、さっさと……すれば、いいじゃない、か。」
焦らされているように感じて、やけになって言った俺にアーチャーは笑って。
「たまには、こういったものも、良いだろう。」
そう告げると、アーチャーは身体を下へ移動させる。
そして俺の足首を掴み、踝に唇をあててきた。
口を開き、舌で丹念に舐めてから歯をあてて軽く、甘く、噛んでくる。
そんな部分に与えられる刺激にも、何でと疑問に思うほど、俺は感じて。
「ぃ…ゃだ…っ、あー、ちゃぁ……っ」
堪らなくなって、掴まれていない方の足を振り上げれば、
簡単にその足もアーチャーに捕らわれて。
「何だ、こちらも、か。」
意地悪げな声と共にアーチャーは、手付かずだったもう一方の踝にも、
同じ様に口をつかって愛撫してくる。
「ふ……ぅ…っ、ん……ん」
俺は固く目を閉じて、自分の口に拳を押し付けた。
ぞくぞくと身体を這い回る淡い快楽。腰が揺れる。
はやくそこにも触れて欲しい。
そんな思いにすら羞恥を感じて。
左右の踝をどちらも均等に愛撫し終えたアーチャーは、俺の足を掴んだまま。
次は脹脛を舌で辿る。上に、上に。
膝裏の皮膚、太腿の裏。
両足共、順に、舐り、吸い上げ、紅い跡を散らしながら。
そして、足の付け根。際どい部分。
アーチャーにはもう丸分かりだろう。
俺の中心の熱は完全に高まり、震え、濡れてきている。
それでもアーチャーは、まだそこには触れず。
薄い皮膚の上をアーチャーの唇が何度も行き来する。
「っ、アーチャー…っ、」
ついに俺は、もう耐え切れずに切羽詰った声をあげた。
アーチャーは憎たらしいぐらいに落ち着いた声で、何だねなどと訊いてくる。
「も……っ、はや、く…」
「何が、欲しいと?」
「っ、…れ」
「聞こえないが。」
「い、れて、いいから……っ、はやく、全部、寄越せよ、馬鹿っ!」
そう一気に喚いた俺に、アーチャーが一瞬、驚愕しているのが分かった。
だが、アーチャーはすぐに溜息のようなものを零して。
「無茶を言う。まだ慣らしてもいないだろう、ここは。」
言いながら、アーチャーが俺の閉じたままの後孔を撫でてくるから、頭にきて。
「おまえ、だってっ、もう余裕なんか、無いくせに…っ」
俺はがばりと起き上がった。
被っていた布団をどけて、アーチャーに詰め寄り、
勢いのまま、俺はアーチャーの中心に顔を埋めた。
アーチャーの息を呑む音が耳に届く。
構わず口を大きく開いて、漲る熱を限界まで呑み込む。
自分の唾液を塗り込めるように顔を動かして舐る。
咥内に広がる苦みも気にならない。
「っ……、歯を、たてるなよ。」
僅かに乱れた呼吸のまま、アーチャーがそう言ってきて。
頬張ったそのまま、目線だけアーチャーに向けると。
アーチャーは自分の指を口に含み、唾液で十分に濡らして、
それを俺の後ろへと移動させた。
何をされるのか分かって、強張る俺にアーチャーは目を細め。
片側の手で俺の後孔の入口を広げ、滑る指を二本あてがい、
そのままずぶりと、突き入れてきた。
「っ!」
入口を広げられる痛みに、口に含んだ熱に歯をたてそうになったが、なんとか堪える。
気を紛らわせるように、再び俺はアーチャーの熱を舐りはじめた。
アーチャーの指も、初めから遠慮など無く、俺の内部を掻き混ぜる。
特に入口部分を丹念に解す。
深く深く指を呑み込ませて、そして、俺の中の前立腺を強く指で抉った。
「っ…ぅ、ん!」
くぐもった喘ぎをあげる。
今日はじめての強い快感に、身体が震える。
涙も零れた。
ずる、と俺の中から指を引き抜き。
アーチャーは俺の頭を手で掴んで強引に俺の咥内から熱を引き出した。
はぁっと熱い息を吐き、足りない酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す俺の身体を、
アーチャーは再び押し倒して、両足を掴み、開き、肩に担ぎ上げて、
後孔に灼熱を押し付けると。それを容赦なく、一息に、押し入れてきた。
ここまでの動作は一気だった。
侵された衝撃に声をあげる間も無く、
俺の後孔は待ち望んだアーチャーの熱を全て、受け入れた。
「っあ!あ…っ、は、はぁっ、ぁ―――」
呼吸する合間に声をあげる。
アーチャーも、は、は、と荒い息づかい。
そして、休む間も無く腰を揺らしてきた。
初めは緩く。徐々に激しく。
「あっ、あぁっ!は、…くぅ、っぅん…っ」
喘ぎながらアーチャーに腕を伸ばし、しがみつく。
アーチャーも俺を強く掻き抱く。
俺の中心がアーチャーの硬い腹にあたり、擦られて、強い快楽にくらくらする。
「は…っ、お前が、望んだものだ。これで、満足かね、士郎。」
アーチャーが俺の耳朶を口に含みながら囁く。
言葉が出なくて、俺はアーチャーの肩に顔を擦り付けて小さく頷いた。
アーチャーの肩を甘く噛む。
背中に爪をたてて、縋りつく。
アーチャーの腰の動きがまた、強くなって。
俺は必死にアーチャーに掴まって。
声が嗄れるまで、精が尽きかけるまで。
長い間、俺達は互いに、貪りあった。
絵チャにお邪魔した時に、色々出てきた萌えの数々を詰め込んだえろ。
楽しかったです。フルじゃないのにこの長さ……。
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