夢を結ぶ 1



 

指を絡め 脚を絡め 舌を絡めあう

お互いの唾液を混ぜあって飲み込む。
足りないというように、何度も何度も。
吐息が混ざり合う。下肢を擦り付けあう。
もうそれだけでは 足りない。
「っぅ…あー…ちゃー」
自分でも信じられないくらいに甘い声で名を呼ぶ。
「…どうした。」
そう返すアーチャーの、声だけは平静だが目は欲に濡れているし
お互いに擦り合わせている下肢は融けそうなほどに熱い。
もう限界なのはお互い様。だから、俺から折れてやることにする。
アーチャーの広い背中に腕をまわし、身体をおこす。
同じように身体をおこしたアーチャーの首筋に甘噛み。
熱く脈打つアーチャーの中心に手を添えて、自分の窄まりにあてがう。
俺の行動を見ていたアーチャーは、俺の腰を掴んで支える。
ひとつ、息を吐いて。何度か擦り付けて。
意を決して、片手で自分の窄まりをひろげながら
俺はそこにアーチャーを導いた。
「っぐ…っふ ぅっ……う ん…っっ」
小さく声をあげながら、少しずつ身体を沈めていく。
侵食する熱に眩暈がする。たいして慣らしていなかったそこは、
入り口は流石にきつかったが、内に先端が入りきってしまえば
あとはずぶずぶと呑み込んでいく。今までさんざん弄られてきたこの身体は、
アーチャーを受け入れるための器のようだと思う。
「っはぁ…っ」
すべてをおさめ終えて息をつく。
アーチャーが擽るように俺の腰を撫でる。そんな些細なことでも感じた俺は、
小さく身体を捩ってアーチャーを見る。
まるで褒美だとでも言うように、アーチャーは俺に啄むような口付けを何度か繰り返す。
アーチャーが軽く腰を揺らして。それにあわせて俺も動く。
じわじわと湧き上がってくる快楽の波に、アーチャーの熱に、
俺は目を閉じて溺れた。


最近は必ずといってもいいほど、行為の後の浅い眠りの中でアーチャーの夢をみる。
厳密に言えばアーチャーの過去の記憶。
こんな繋がりが無くとも垣間見たことのあるアーチャーの記憶は、
こうして抱き合うようになってから、より鮮明になった。
以前にその記憶をみた時は、同情など無かったし、いずれ自身が辿る未来だと思い、
ただ、心が折れかけた。
でも、今は違う。今は、痛い。
そう感じるのは、アーチャーと自分は別の存在だと、はっきり意識したからだ。
自分自身には同情なんて出来ないが、別の存在、アーチャーのもう変えられない過去なのだと
そう思ったら。その生き方も、最期も。ただ、痛かった。
今日はよりにもよって、エミヤシロウだったアーチャーの、死に際の記憶。

絞首台に立つ姿
           (そんなものを俺にみせるな!)
足が浮いて
がくんと身体が 揺れる
    (怒りなのか哀しみなのかもう判別が出来ない)

  ただ、眼の奥が 熱い


覚醒する。
「気づいたか。」
アーチャーの声。顔がすぐ側にある。
なかにアーチャーは埋まったまま。ああ、のぼりつめた後、少しだけ意識をとばしていたようだ。
瞬きをひとつ、ふたつ。
無性にアーチャーを 確かめたくなって。
手のひらをアーチャーの顔に這わす。訝しげなアーチャーには構わず、
頬に触れ、唇に触れ、指で唇を割って自分の顔を近づけて口付け、舌を挿しいれて絡ませ、吸う。
どくん、と俺のなかのアーチャーが力を取り戻したので、意図的に締め付けてみる。 と。
「!っああっ」
アーチャーが突然、強く突き上げてきて。
「っ、煽ったのは 貴様、だっ」
「っは あっ ああっ…ア…」
その勢いのまま、乱暴に揺さぶられて。
俺はアーチャーにしがみつき、与えられる快楽に喘いだ。

「っん…」
ようやくアーチャーが俺のなかから出て行く。
ぐったりと身体を投げ出して、ぼんやりと天井をみる。
ぽつりと、かすれた声で呟いた。
「世界に喧嘩って、うれるのかな…」
その呟きをしっかり拾ったらしいアーチャーが、何を言っていると聞いてくる。
俺はアーチャーと目を合わせて。
「でも、ちゃんと確認せずに契約したエミヤシロウも、馬鹿だな。」
そう言ったら。
「…喧嘩を売る気ならば、買ってやるが?」
いい笑顔でアーチャーが言う。俺は小さく首をふり。
「だから、俺も、きっと馬鹿だ。俺も、エミヤシロウなんだからさ。」
そう言って目を閉じる。アーチャーが俺の髪を梳いて。
「いったい、なんだというのだ。」
溜息混じりに呟く。
「今更、隠すことでもないから言うけど。お前の記憶、最近頻繁にみるんだよ。
 さっきはお前の死に際だった。」
俺がそう伝えると。
「それは……災難だったな。」
そんな風にアーチャーは言う。そして、ふと思い出したかのように。
「私もここ最近、貴様の記憶をみていたな。
 不思議なものだ。人間であったころの記憶など磨耗してしまったというのに、
 懐かしさを感じるとは…」
そう口にする。俺は目を開けて、アーチャーを見る。
アーチャーの表情は柔らかい。ならば、その記憶というのは、きっと切嗣との過去だろうと思う。
アーチャーの記憶は辛いものばかりだから。俺の記憶で少しでも安らいでいるならいいなと思った。
あの大火事のことでさえ、切嗣に救われたという所は、辛いことではないのだから。
「…アーチャー……エミヤ」
俺はアーチャーに呼びかけ、抱きつき、真名を耳元で囁く。
「…衛宮士郎……士郎」
アーチャーも、俺の名を呼び、腕をまわす。

本当は言ってやりたいこと、沢山あったけれど。
今はもう、これだけでいい。
触れ合って、抱き合って、熱を伝えて。
伝わっているといいなと思う。
俺がどんなにお前を 想ってるか。





PC版フェイトのセイバールートやってると、こう、
セイバーの過去とアーチャーの過去がかぶってかぶって、
士郎も、アーチャーを自分の未来だと思わなければ、
セイバーを想ったように、アーチャーのことも想えるんじゃ
ないかなーと妄想したのがはじまりでした。



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