娯楽は多々あれど
「人間の三大欲求は知っていような、白野」
そう口にするのは、もはや運命共同体とも呼べる存在、俺のサーヴァント、ギルガメッシュ。
時に唐突とも思えるこの男の問いかけには随分慣れた。
慣れたのだが――――現在のこの状況は、ベッドに仰向けに寝そべる俺の上に
ギルガメッシュが馬乗りになっているこの状況は一体どういうことでしょうか。
どうしてこうなった……!?
急いで前後を振り返る。
ここは月の聖杯戦争終結後、消えゆく俺を拾ったギルガメッシュが訪れた人類の最先端とも言える世界。
お互いレベル1にはなったものの、ムーンセルによる様々な制約から解き放たれたギルガメッシュは
その身の黄金率を発揮し早々に拠点とも呼べる住処を確保した。
この時ほど英雄王が輝いて見えたことはない。
内装は俺が口を挟めるはずもなくギルガメッシュ好みに設えられた。
寝室には部屋を埋め尽くさんばかりのキングサイズのベッドが一つ。
リビングに大きめのソファーがあるので俺はそちらで眠るつもりだったのだが
どんな心境の変化か、ギルガメッシュは「寝所を共にすることを許す」だとかそんなことを言い出して
結果、俺とギルガメッシュは一つのベッドで共に眠ることになった。
たまにギルガメッシュの抱き枕になっていたりするが、おそらくペットだとか
そのようなものの扱いと同等なのだろうと気にしない事にしている。
ギルガメッシュが眠るときには全裸だったりするのにも、まあ慣れた。
慣れとは時に怖ろしいとも思うが慣れなければその苦痛はこれから先ずっと続くのだから仕方がない。
対応策として単純にギルガメッシュと相対する時は目を見て話すようにしている。
思えば月の裏側で全ての令呪を捧げた時から、俺はギルガメッシュの顔を、目を見据えて話していた。
どんなに畏れていた時でも、なけなしの勇気を振り絞って。
だから今も俺は、見下ろしてくるギルガメッシュの目を見据えていた。
服はお互い着ている。風呂を済ませて、さあ寝るかとベッドに乗り上げた瞬間、
ギルガメッシュに組み敷かれた―――と、いうことらしい。以上、現状把握終了。
……だからどうしてこうなった。
俺がただギルガメッシュを見上げて黙り込んでいるのをどうとったのか、
ギルガメッシュの機嫌は悪くなる事もなく、その指先が俺の頬をなぞる。
先の問いの答えを促しているのだと悟り、俺はゆっくり口を開いた。
「三大欲求……確か、『睡眠欲』と『食欲』、あとは―――」
最後の一つを口にするのはどこか気恥ずかしく、だがその答えをこそ目の前の男が
望んでいるのだと理解して、何故そんなことを望んでいるのかは分からないまま、
俺は小さく最後の一つを口にした。『性欲』と。
それにギルガメッシュは満悦に微笑む。その貌にわけもわからず背筋を嫌な汗が伝う。
ギルガメッシュの指先は俺の頬を撫でる。時折耳朶を擽り、首筋を辿る。
視線を外せないまま俺は、この怖ろしくも美しい男の口が開くのを待った。
まるで確認するように(何を)、吟味するように(どうして)
ギルガメッシュは何度か俺の頬を撫でた後、漸く口を開いた。
「サーヴァントは既に人間とは異なる存在だ。マスターから十分な魔力さえ供給されていれば
そういった三大欲求とは無縁である。月の聖杯戦争時、マスターである貴様の不完全さ故
睡眠は必要であったが、それだけだ。」
確かにギルガメッシュは時折眠ってはいたが、食事に関しては何かを口にする姿を見たことは無かったと思う。
「…だが、この地に降り立ってから、我はおまえと共に食を愉しみ、共に眠った。
そうして過ごしていれば生前の欲求がこの身を満たすのは、まぁ当然の結果よな。」
そこまで言ってギルガメッシュは再び俺の頬を撫でる。
気持ち、顔が先ほどより近付いていないでしょうか。
今の話の流れ、そしてこの状態。なんだか嫌な予感、が―――
「ええと、それが今の状態と何か関係があるのでしょうか?」
拙い。なんとか声を出したものの変な緊張で掠れている上に何故敬語に…!?
「解らぬか?」
実に良い貌です、英雄王。
これは拙い。どうやったら今の状態から逃れられるのか、必死に考えるが打開策が浮かばない。
俺は男ですと主張しても意味が無いことがなんとなく解る。
多分ギルガメッシュの生きた時代は、そういうタブーもあまりなさそうだし何よりギルガメッシュだ。
俺が男なのは今さら言うまでもなく知っていてこの状態なのだから、寧ろ気に入った相手なら
女でも男でも関係ないのだろう。少なくとも俺はこの男に気に入られている。それは疑いようが無い。
それは嬉しい。気に入られているということは、認められているということだ。
だからそこはいい、のだが。
「……ギルガメッシュ。おまえなら女の人に不自由なんてしないだろ、この世界でも。
なのに、なんでわざわざ俺なんだ?」
結局口にできたのはそんなことで。
するとギルガメッシュの秀麗な眉が寄せられる。溜息を一つ落として男が口を開く。
「言わねば解らぬとは、相変わらず愚鈍な男だ。
性欲を満たすだけならば、まぁ探せば我の目に留まる女もいるやもしれぬ。
だが、コレはおまえでなければ意味が無い。
言ったであろう?おまえに愉悦がなんであるか、我が手ずから教えてやると。
原初の悦だ。実体でない以上どうかと思っていたが、どうやらこの世界、
そういった娯楽にも対応しているようだ。まぁ痛覚がある以上快楽も然り、ということか。」
そこまで言ってギルガメッシュは動いた。
「―――っ!!」
上がりそうになった声を咄嗟に堪える。
ギルガメッシュの右膝が、俺の足の間、その中心を擦りあげてきたのだ。
衣服ごしとはいえその刺激に、身体にぞくりと何かが走る。
く、と喉奥で嘲笑う声。貌が近付いて、間近に迫る血色の瞳。
それは確かに欲を滲ませた、捕食者の目だ。
「ギルガ、メッシュ……っ」
男の名を呼ぶことしか出来ない俺に、ぞっとするような、だがどこまでも優しい貌で、
囁くように王が決定を告げる。
「初めてであろう、多くは期待せぬ。
ただ、その身を我に捧げよ。おまえの瞳と声は我が愛でるに値する。
存分に啼き、我を愉しませよ……岸波白野。」
距離がゼロになる。
俺の唇にギルガメッシュの薄い唇が重ねられる。
自分を射抜くその視線に耐え切れず目を閉じれば、感触は更にリアルになる。
熱い舌が唇を、歯列を割り開き、口内を蹂躙する。
溢れる唾液はどちらのものか。角度を変え、舌を、唇を吸われて時折歯を立てられて。
息が出来ない。くるしい。
「っ、ん……ンっ、ふ、ぁ……ッ」
女のような声が零れる。それが自分の声なのだと自覚して頬が熱くなる。
ギルガメッシュの手は俺の身体をなぞるように動く。
髪、頬、首筋、肩、腰、腹、胸、下肢。
衣服ごしだというのに男の手は焼けるように熱い。
息苦しさに男の胸を両手で押せば、漸く薄く唇が離れて、肺に空気を必死に送り込む。
滲む涙。目を開ければ至近距離に、欲に染まった男の貌。
零れ落ちた涙を拭うようにギルガメッシュの唇は俺の頬、目尻を辿って、ふいに両手で顔を固定される。
「―――っ!」
息を呑む。ギルガメッシュが、俺の眼を、舐めた。
反射で閉じようとする瞼を、
「閉じるな」
たったその一言、有無を言わさぬ一言で、俺は閉じようとする衝動を無理矢理抑えた。
ギルガメッシュが舐めるたび、涙が溢れる。時折瞬いて涙を落とし、また舐められる。
「…っ、あ……」
「……良い眼だ」
両目とも何度か繰り返されて、満足したのかギルガメッシュの唇はやっと眼から離れて
再び戦慄く俺の唇を甘く吸った。なんとなくそれにほっとして、今度は抵抗もなくその唇を受け入れる。
落ち着いてくると、確かにその行為は気持ちが良かった。
こんなに深いものではなかったが、月の聖杯戦争で何度か唇を重ねられた記憶があるような無いような。
相手は女性であったので少なくともファーストキスというものは無難に
済ませていたのだな、と現実逃避しながらも俺はこの状況に慣れ始めていた。
ある意味、男として大変危険な状況であることは理解しているのだが、こんな状況でも俺は適応してしまうらしい。
男女の経験なんて、無い。なにせ自意識が芽生えた瞬間に生きるか死ぬかの聖杯戦争に巻き込まれたのだから。
たとえ仮にオリジナルにそういった経験があったのだとしても、今を生きる自分には関係のない話だ。
ああ、童貞失う前に処女喪失とか。俺は泣いていいと思う。
「随分と余裕があるようだな、雑種」
心ここにあらずだったことを見抜いたらしいギルガメッシュが、
唇を離して不機嫌に嗜虐を滲ませた貌で問うてくる。
「仕方、ないだろう…色々男として複雑――っ!どこ、触って…っァ…っ」
「ふん。相変わらず悩むのだけは一人前だが。――身体から堕とすのが手っ取り早いようだ」
不満を滲ませた俺にギルガメッシュはそんなことを言い捨てて、俺の肌に直に手を這わせてきた。
平らな胸を撫で、先ほどからの口付けによって慎ましくも主張しはじめていた胸の尖りを
やや乱暴に摘んでくる。擦り、押し潰し、爪で引っ掻く。
面白いほど俺の身体はその刺激に跳ねた。
じんじんする。痛痒いような、なんともいえない感覚に唇を噛めば、それを許さぬとばかりに
ギルガメッシュの指が強引に口内に潜り込んでくる。その指を噛むのはなけなしの理性が
押し止めた結果、情けない、甘い喘ぎが自分の口から零れる。
それに気を良くしたようにギルガメッシュが指で弄っていた胸の尖りを今度は舌で、唇で嬲ってくる。
右と左、交互に与えられる、目を背けることができない快楽に、ただ啼くことしかできない。
下肢に熱が集まっているのが解る。ギルガメッシュの手が下肢へと這わされていって、
躊躇うことなく下着の中、直に触れられた。
「――ひ、ぅ……!!」
誤魔化せないほどに反応していた高ぶりを、慣れた手つきで煽られる。
邪魔だと言わんばかりに俺の口内を掻き混ぜていた指を引き抜き、
その手で俺の下肢を包む衣服を下着ごと奪い去る。
ギルガメッシュの身体が下へと沈む。
左足を男の肩へとかけられて、内腿に強く吸い付かれる。
「っ、あ、ァ……っ」
自分の口からは意味を成さない音しか零れない。
両足を開かされて、その間でギルガメッシュの貌が見える。
腺液に塗れ、硬く、熱く反り返る俺の中心にギルガメッシュの指が絡む。
裏筋を擽り、先端を強く抉る。駄目だ、と思った瞬間、根元を強く戒められた。
「―――っぃ、っ、は、ぁ…っな、んで」
達せなかったことが辛くて無意識に、縋るように男を見れば、
ギルガメッシュは満足そうに凶悪に微笑み、
「こちらの準備が済んだら、一度達かせてやろう」
そう言って、自分でも滅多に触れることのない奥の窄まり、本来は排泄の為につかわれる後孔を指の腹で撫ぜてきた。
男同士での行為、薄々とは解っていた。そこをつかうのだろうと。
それでも恐怖は拭えない。震える俺には構わずギルガメッシュは空間から一つの小瓶を取り出した。
蓋を開け、中の液体を俺の腹に落とす。冷たさに身震いしたが程なくしてそれは直ぐに体温に馴染んでいく。
粘性の強い液体、余程俺の顔は不安に歪んでいたのだろう、ギルガメッシュが小さく笑う。
「安心せよ、ただの潤滑油だ。媚薬を使った方がおまえはある意味楽なのだろうが、
それでは我がつまらん。痛みの後に訪れる快楽に呑まれる姿を愉しみたいからな」
理不尽なその言い様に反感の意を込めてギルガメッシュを睨んでみるが、
男は鼻で笑うと俺の腹に落とした潤滑油をたっぷりと指に絡めた。
そうしてその指を先ほど触れた俺の後孔へ押し当て塗りつける。
ぬるり、と人肌に温められた液体。なんともいえない感触にひゅ、と息を呑む。
表面をぬるぬると蠢いていた指が何の前触れも無く、ずぶり、と挿入ってきた。
「―――!!」
声にならない。痛みは無いが強烈な不快感が全身を襲う。
多分根元まで埋められた指がゆっくりと引き抜かれていき、抜けるぎりぎりの所で再び押し込まれる。
何度かそれを繰り返される。正直気持ち悪い。特に抜かれる時の排泄感がなんともいえない。
ぎゅ、と瞼を閉じて必死にその感覚に耐える。自分の呼吸がうるさい。
呼吸よりも下肢から聞こえる滑った音が耐えられない。
「は、は……ぁ、っ…は、ぁ……っ!!」
圧迫感が増えた。
「痛みは無いようだな。判るか?二本目だ」
聞きたくもない事を男が告げてくる。ゆるく頭を振ると、ギルガメッシュは小さく笑って
放置されたままだった俺の高ぶりを掴んできた。今までの行為で萎えていなかったことに
我ながら驚いたが、それ以上の衝撃が襲い掛かった。
「っあ………っ!!」
熱い粘膜に高ぶりが包まれる感覚。思わず見開いた目に飛び込んできたのは、
俺の根元を手で戒めたまま、先端を銜えこんだギルガメッシュの姿。
目が合う。ギルガメッシュはその目を細めて更に口内深くへ俺を銜えこむ。
「ぃ、や……ア…っ」
根元近くまで銜えこんで、ゆっくりと舌で撫でながら顔を揺らして刺激を与えてくる。
時折甘噛みされて、じゅ、と音を立てて吸い上げられる。
根元を戒められていなければ、とっくに吐き出している。
そんな強すぎる快楽に涙が溢れ、声が零れる。
前への刺激に気を取られていると、後ろへの圧迫感がまた増した。
もうどちらからの音なのか判別がつかない。ぐちゃぐちゅと卑猥な音が自分の耳を侵す。
ぢゅう、ときつく俺自身を吸い上げて貌をあげたギルガメッシュが淫靡な視線を向けて問いかけてくる。
「さて、今何本銜え込んでいるか、判るか?」
「ぁ……え……?」
「見事当ててみせれば褒美をやろう。外れた場合は…仕置きだな」
ふう、と高ぶりに息を吹きかけられる。それに震えながらギルガメッシュの問いかけの答えを探す。
何本?銜え込んでいる?そうして考えていると身体の深くで蠢くソレに意識が向けられた。
ばらばらと内で指が動かされる。ぎちぎちと入口はもう無理だという程広げられていて、
ある場所を指が掠めると耐えられない疼きに襲われる。
指。3本は、挿入っている気がする。4本は無理じゃないかと思う。
でもこの圧迫感は3本では足りない気もする。どちらが正解なのか。
考えている間も俺の内を蠢く指は思考回路を麻痺させていく。
「っ、よ、ん、ほん……っ」
殆ど直感で俺は告げた。ギルガメッシュが笑う。
「当たりだ。では褒美をやらねば、な」
「う、ああぁあっ……ァ!!!」
その言葉の直後、ギルガメッシュは再び俺の中心を銜えて、根元を戒めていた指を弛め、
きつく吸い上げると同時にずるりと後孔を侵していた指を一気に引き抜いた。
前と後ろ、同時に与えられた強すぎる刺激に、俺は啼きながらギルガメッシュの口内に吐き出した。
ごくりと嚥下する音。ギルガメッシュの口内で果てたことに信じられない思いと羞恥が襲ってくる。
弛緩する身体、沈みそうになる意識。そんな俺を赦すはずもなく、ギルガメッシュが動く。
俺の両足を掴んで膝が胸に着く程に折り畳まれる。そうして浮いた腰。
晒された後孔、弄られ続けて赤く充血したそこに指とは比べ物にならない質量の熱い塊がぴたりと宛がわれる。
「あ……」
溜息のような声が零れた。ギルガメッシュのものが宛がわれている。
「さあ、存分に啼くがいい、白野」
「まっ、あ―――――っっ!!!!」
制止は言葉にならず、下肢を襲った衝撃に声にならない声をあげた。
めり、と音を立てたような気がする。容赦なく挿入りこんでくる灼熱。
一番太い部分をゆっくりと呑みこんだ後は、一気にずぶずぶと沈んでいく。
肌と肌が密着する。信じられない思いは、引き裂かれるような痛みとその奥にある疼きに塗り潰された。
「は―――っあ、あ…っ、あ、ま、だ、うごか、な……っで…っぁ…!」
ゆっくりと揺さぶられる。心も身体も追いつかず必死に懇願するが、それをこの男が受け入れる筈もなく。
「――ハ、切れてもおらぬようだし、おまえのココは美味そうに我を銜えこんでいる…っ、
痛みだけではなかろう?そら、この辺りだったか」
「ひっ…!や、そこ、はっ、だめ…だ…っ!」
「悦い、というのだ。覚えよ、白野」
「――ぁあっ、は、あ、っう、あっ」
容赦なく揺さぶられて、指で弄られた時に感じた箇所をギルガメッシュのもので擦られると堪らなかった。
少しずつ動きが早まっていく。シーツを握りしめていた自分の手は、知らず自分を侵す男の背中に伸ばされた。
縋りつけばギルガメッシュも身体を倒してくる。ギルガメッシュの硬い腹に、いつの間にか張り詰めていた
自分のものが擦れて、拙い、と思った時には身体が強張って、そのまま精を吐き出していた。
ぎゅう、と後孔が締まる。く、とギルガメッシュが息を詰めて、可笑しげに笑った。
「我の赦しなく先に達くとは…まぁ良い、赦そう。初めてにしては上出来だぞ、白野よ。
何度でも、好きなだけ達くがいい。我も好きにさせてもらうがな!」
そう宣言して、ギルガメッシュは今までは手加減していたと言わんばかりに激しく動き出す。
達したばかりの身体にその動きは辛いものでしかなかったが、また少しずつ身体は快楽に呑まれていく。
後はもう、繋ぎ止めていた理性を手放して、堕ちていくだけだった。
「…………しにたい」
「ほう、死ぬほど悦かったか」
俯せになって呻く俺を背中から抱きしめたまま、随分機嫌良さそうに耳元で囁く英雄王。
正直その声にすら過敏になった身体には堪えるので勘弁してほしい。
腫れぼったい後孔、そこは僅かに力を失ったギルガメッシュのものを未だ銜えこんでいる。
少し身じろぐだけであらぬ刺激になって戻れなくなるのは流石に学習したのでじっと耐える。
そしてまた、しにたいと呟いた。
少なくとも5回……くらいは内で出されたと思う。俺はその倍くらいは達かされた。
出すものが無くなった後に達かされたのが一番きつかった。
中に出されたものは、きっと生身であったなら大惨事になっただろうが、
データであるソレはどうも魔力等に変換されるようで、大部分は自分の体内に吸収されたようだ。
逆にこの行為でサーヴァントであるギルガメッシュにも自分の魔力が流れるようで、
要するにプラマイゼロ……なら良かったのだが、明らかに俺の方が消耗している。
とにかく疲れたし、喉はからから。精根尽き果てました。
「……喉、かわいた」
掠れた声で呟くと、水を飲むかとギルガメッシュが聞いてくる。
それにこくこくと頷くと、ギルガメッシュがゆっくり身体を起こした。
引き抜かれる感覚に、ん、と甘ったるく喉が鳴る。
俺の首筋に唇を押し当てたギルガメッシュは立ち上がり、離れていった。
俺もギルガメッシュもいつの間にか全裸だ。脱ぎ散らかされた服はベッドの下。
シーツは二人分の体液やら何やらで酷い有り様で。
なんだか可笑しくなって小さく笑えばギルガメッシュが戻ってくる。
肩を掴まれ仰向けに転がされて口付けられた。
ギルガメッシュの口内で温くなった水が流れ込んできて、俺は夢中で飲み干した。
「まだ足りぬか?」
「ん、もう少し…」
強請れば同じ様に再び与えられる。漸く乾いた喉が潤って、満足気な溜息を一つ零した。
「あれだけ啼けば喉も嗄れるか。で、どうだ、感想は」
「……ぜつりん」
「ハッ、そういうおまえもなかなかのモノだと思うが?」
身も蓋もないギルガメッシュの言葉に俺はただ恨みがましく唸る。
心なしかギルガメッシュの肌が艶々している気がする。
本当に疲れたしキツかったし恥ずかしかった。
だが、それだけでないこともしっかり自覚していて。
ギルガメッシュにはそのことも見抜かれているのだろう。
俺の答えをギルガメッシュは待っている。この行為の始まりの問答の時のように。
だから俺は力の入らない腕を必死に上げてギルガメッシュの首に回し、
引き寄せてその唇に自分の唇を軽く重ねてから言った。
「快楽って、怖いんだな」
それが今の俺の正直な気持ちだ。
ギルガメッシュは暫し考えるような沈黙の後、口端を歪めて言った。
「快楽を愉しむまでには至らなかったか。全く禁欲的なことだ。
まあ素質はあるようだからな、直ぐにおまえも愉しめるようになろう」
全く嬉しくないお言葉をくれました。
それはつまり今回かぎりの行為ではないということでしょうか。
それを実際に聞くのは怖ろしい気がしたので、俺は力なく笑うに止めた。
いい加減睡魔が押し寄せてきて、瞼が落ちる。
「眠るか?」
不思議なほど優しく響く声に頷きで答えれば、俺の上から隣に移動して寝そべった男に抱きこまれた。
いつもと同じ抱き枕状態。いつもと少し違ったのは自分の腕がその男の背中に回ったこと。
拒絶されないのをいいことに、俺はそのまま眠りについた。
『睡眠欲』『食欲』そして『性欲』。
共に経験していくことで、手の届かない高みの存在であったギルガメッシュが、
月の聖杯戦争で共にいた時よりも近くに感じられるようになって。
だからこんな無体を強いられても心の底では悪くないと感じている自分に苦笑する。
これからもこんな毎日が続いていくのだと、そのことに幸福を感じる自分は
思っている以上にこの王に惚れこんでいるらしい。
バレていようとまだ当分は、直接告げる気はないけれど。
久しぶりにがっつりえろ書いた。それでも削ったけど。
普通にゲーム本編の男主とギルガメッシュの関係が理想すぎて駄目だ。
なので、あえて書くとなるとこんなことに。
白野、ファイト!
小話・雑感部屋へ戻る