あと少しで終わる。 揺さぶられる体。俺はただ、その瞬間を待って。 ぴたりと、俺を追い詰める動きが止まった。 「…ぁ、ギル…ガメッ…シュ?」 俺の上に覆い被さる男の名を呼ぶ。 中途半端に放り出された体は、奥で熱が燻ったままで正直辛い。 ギルガメッシュは眉間に皺をよせて、何かを考えているようで。 きっとろくでもないことだと思うが。 「…雑種。我を讃えよ。」 ほら、ろくでもない。 「無理だ。」 掠れもせずにハッキリとそれは口にできた。 ギルガメッシュの眉間にさらに深く皺が刻まれる。 「何故だ。遠慮は要らぬぞ、雑種。」 「別に遠慮してるわけじゃない。褒める所が浮かばない。」 貶す所ならあるという言葉は呑み込んだ。 ギルガメッシュは心底不思議そうに、多少不機嫌さも滲ませながら俺を見る。 「…余程、この先は要らぬと見える。」 呟く声は低い。嫌な予感がする。 「我を讃えぬかぎり、このままぞ。」 固まった。 このまま、というのはつまり。 繋がったまま、動きもしないし、抜きもしない、と。 ざっと血の気が引く。 やる。ギルガメッシュは、やる。 このままなんて冗談じゃない。 今だって行き場の無い快楽が、体をぐるぐる巡っているっていうのに。 「な、んで、いきなりそういうこと、言い出すんだよ…!」 唸るように言えば。 「雑種の我に対する愛は、分かっておる。 我に言葉を捧げることを、許すと言っておるのだ。」 ギルガメッシュは迷い無く、そんな事を言ってきた。 ……俺、こいつのこと、好きだなんて、口にした覚えは全く無いんだけど。 うわ、こいつの中では、俺、そういうことになってるんだ。 頭がぐらぐらする。 とりあえず、さっきの言葉は聞かなかったことにする。 当面の問題は、ギルガメッシュを讃える、とかいうこと。 ……………………拙い。本気で浮かばない。 ギルガメッシュから痛い程の視線を感じて、 俺は明後日の方角を見ていた目をギルガメッシュに戻した。 視線が、合う。 ぞくんと体のなかを、何かが走る。 その赤い瞳が、以前は俺のことを道端の石でも見るような目で見ていたことを知っている。 それが、今は違う。 対等の相手として見られているわけでは無いだろうが、 少なくとも、その視線には、熱を感じて。 「っ、」 色々堪えきれずに、俺はギルガメッシュの視線から逃れるように顔を背けようとして、 ぐ、と顎を掴まれ固定された。 「な、に」 「それは我の言葉ぞ……士郎。」 ギルガメッシュに名を呼ばれて、かぁっと頬が熱くなる。 たかだか名前を呼ばれただけで、こんな風に反応してしまう自分が信じられない。 「…そうだな。我を讃えずとも良い。 おまえが今、感じている全てを、我に余さず伝えよ。」 ギルガメッシュは愉しげにそう口にした。 状況はさらに悪くなったような気がする。 今感じていること……って、言えるか、くそ。 「…っ、本当に、なんなんだよ……」 呟く。 後孔ではギルガメッシュの熱を咥えこんだまま。 俺はこんなに辛いのに、ギルガメッシュは平然としている。 俺を見て、愉しんでいる。 殴りたい。が、耐えた。 少なくとも今そんな真似をして、どんな目にあうか、分からないほど馬鹿じゃない。 結局、この状況から逃れる為には――。 「…まえ、は」 途中で一度、口を噤む。 「どうした。続けよ。」 ギルガメッシュは俺の唇を指でなぞる。 意を決して、ギルガメッシュを見据えて。 「前は、おまえの目が、嫌いだった。 でも今は、おまえに見られるの、嫌じゃ、ないって、少しは思うだけだ…。」 俺はそれだけ言って、目を逸らした。 ギルガメッシュは何も言わず、じっと俺を見ている。 そして、うむ、とひとつ頷き。 「満足、とまではいかぬがな。良い。褒美をやろう、士郎。」 言って、前触れ無く、俺のなかを強く、突き上げてきて。 前立腺を、抉られる。 「ぅ、あ……っ!!」 体を駆け抜けた快楽に、高い声が上がる。 ギルガメッシュは自身の唇を舐めて笑い、続けざまに俺を揺さぶってきた。 「あ、っあ、んっぁ…ァ」 揺さぶられるままに、あっという間に、堕とされて、いく。 やっと与えられた快楽に、俺は抗うことも無く。 「っあ………っ!!!」 ギルガメッシュに縋りついて、体を震わせて。 なかの快楽だけで、欲を吐き出した。 ギルガメッシュも俺の腰を掴んで、奥深くまで侵して、その最奥に熱を注いできた。 ひゅ、と体内に広がり染み渡る熱に、俺を侵すギルガメッシュの魔力に息を呑んだ。 「は……っ、ぁ、ふ…」 息を吐き出し、脱力する。 腕をシーツに投げ出して、ゆっくり呼吸していると。 ギルガメッシュが体を起こして、 「あ、く…ぁ、なに、す…っ、ギルガメッシュ!」 吐き出した後も硬度を保ったまま俺のなかにおさめていたそれで、再び突き上げてきて。 俺は必死に抗議するが、声は甘く掠れて説得力は無い。 「たった一度では、足りぬだろう?」 ギルガメッシュはいい貌でそう口にして笑う。 一度っていうのは、あくまでもギルガメッシュの回数だ。 俺の回数はそれ以上。もう勘弁してほしい。 だが、言った所で、こいつが止めるわけもなく。 「……っ、あ…も、知るか……っ」 やけになって吐き捨てて。 俺は投げ出していた腕をギルガメッシュに伸ばす。 ギルガメッシュは満足そうに目を細めて、体を倒してきて俺の唇を舐めた。 散々搾り取られて、ぐったりしながらも。 隣でグラスを揺らしてる王様に、俺は訊いてみた。 「何で、いきなり讃えろなんて、言い出したんだよ。」 声は掠れまくっていて情けない。 返答はあまり期待せず、答えが返ってこなければ、それはそれでいいという気持ちで、 俺はちらとギルガメッシュを見た。 ギルガメッシュも目線だけを俺に向けて、 「我とて、時には言葉を欲する。 我が許すと言っても、おまえはなかなか口にせんからな。」 そんな返答を寄越してきて。 あー、なんだ。 うん、もう、いいか。 深く考えると危険な気がするので、俺はそのまま目を閉じた。 言葉が欲しいなんて、らしくないなと思いながら、ゆっくり意識を手放していく。 俺の前髪を払うギルガメッシュの指先を感じて、擽ったかった。 士郎は、ギルガメッシュに好きだと全然口にしないので、 たまには言葉を寄越せと欲求不満な王様でした。 通常士郎で甘く、とのリクを貰っていたので一応甘めを目指しました。