秘密/金士





疾うに堕ちていた。 きっかけは本当に些細な場面。 あの傲慢な王が、傲慢さはそのままに何人かの子供の相手をしていた。 その瞳は凪いでいる。 子供達は間違いなく金色の王を慕っていた。 ただ、それだけ。 だが俺にとっては衝撃で、正直見たくなかったし、知りたくなかった。 認めたくなかった。 思えばアレでも属性は『善』なのだから、不思議ではないのかもしれないが。 受け入れてしまいそうになる自分に吐き気がして、俺は口を閉ざす。 たとえ感情が、読み取られてしまうのだとしても―――。 「気を散らすな、雑種。」 「ぁう……っ!」 乱暴に突き上げられ、内部を抉られる。 体が悲鳴をあげ、声も押し出された。 ぐちぐちと体を揺さぶられるたびに濡れた音が下肢から響く。 何度も声を堪える為に唇を噛み締めたせいで、唇は切れて口内には血の味。 俺を侵す男―ギルガメッシュは満足気に俺の血の滲む唇を舐める。 こうして向かい合わせに侵されることは、少なくない。 貌が見えるほうが愉しいそうだ。 この男の悪趣味は今に始まったことではないが。 俺はこれっぽっちも楽しくなどない。 快楽は得られるが、それは体だけだ。 いつだって屈辱感で満たされる。抗えない悔しさ。 抗えば行為が酷くなる。 思い知ってからは、体だけは受け入れるようになった。 それから何度、こんな風に侵されただろう。 『違うことでも考えてなければ、やってられるか』 目を眇めて睨みつければ、ギルガメッシュは笑う。 厭きさせぬ雑種だ、と囁き、胸の尖りを強く捻られた。 「い、つ……ぅ、っ」 痛い。だがその痛みの奥には確かに快楽もあって。 ギルガメッシュの手を掴み、引き剥がそうとするが力が入らない。 尖りを捻る指は一瞬離れ、今度は緩く撫でてくる。 ぞくぞくと体の芯が痺れる。 合わせるように腰をゆるゆると揺らされる。 いつも、ギルガメッシュが満足するまで、体は嬲られて。 だから―――。 「さあ、与えてやろう。」 その言葉。 なかに注がれるという、いつまでも慣れない行為。 その宣言に無意識に震えながらも、行為の終わりを意味する言葉でもあるので、 それは少しの安堵も俺にもたらす。 「…、あ、…――っ!! あ、…は、ぁ…」 奪われていく。 高みに達すると共に、自分の魔力がギルガメッシュへと流れていく。 奪われるだけではないことに気付いたのは、いつだったか。 ギルガメッシュが俺のなかに吐き出す精。 それは俺に与えられる、この男の魔力だ。 回を重ねるごとに俺の体はこの男の魔力に馴染んでいった。 だから奪われた俺の魔力を補う形でギルガメッシュの魔力が俺の体を満たす。 その感覚に、心が揺れる。 「…あ」 溜息のような声を漏らす。は、は、と内にこもった熱を吐き出す。 血のように赤い眼が俺を見下ろしてくる。 戯れのように指が目尻を擽り、唇がそこに触れた。 仮に俺がこの男を受け入れようと、多分今と何も変わらないのだろう。 俺がどれだけ自分を偽っていても、ギルガメッシュは偽らない。 俺と違い、全てが本物だ。 俺のことを『雑種』と呼びながら、この男にとっての愛情とやらを俺に注いでくる。 本当に、いい迷惑だ。 「…終わったんなら、早くどけよ。」 「雑種の指図は受けぬ。」 抜きもせず、俺の上に被さってくる。 首筋に痛み。 歯を立てられながら皮膚を吸われる。 まだ足りないのかと気が遠くなりながら、俺は目を閉ざした。 子供達に向けていた視線を思い出す。 別に、あんな風に見て欲しいなどと思っているわけじゃない。 子供達が慕う、ギルガメッシュの良いところを、俺自身が感じることができれば、 少しは楽になれるのに、と思う。 残念ながら、今現在、少しも良いところがわからないわけなのだが。 気付きたいのか、気付きたくないのか。 自分でもわからないまま、 今日もまた、俺は金色の王に、侵される。 前に書いたゼロネタ通常士郎の続きというか。 自分を偽りつつ、まだギルガメッシュを拒んでる士郎の話。