「っ、は…ぁ、…っ…ん……ぃ…っぅ……」 体を突き上げられて、自分のものでは無いような掠れた甘い声が零れる。 相手にそれが、どう聞こえているのかは、わからないが。 きっと、いいようにとられているのだろうと思うと、悔しい。 アーチャーが、俺を犯しはじめて、どれぐらいの時間が過ぎたのか。 そう。間違っても、俺はアーチャーの身勝手なこの行為を、受け入れていない。 何度も何度も、こちらの意思など関係なく、アーチャーは俺を貪った。 初めは堪えていた声。 段々、堪えきれなくなってきた時点で、無駄と知りつつ拒否や制止の言葉を口にした。 何度も、アーチャーの欲を、体の奥深くに注がれ、掻き回されて。 それを繰り返されるうちに口から出る言葉は、懇願のようなものになっていく。 負けたくないと思っていても、体が先に悲鳴をあげる。 無意識のうちに、嗄れた声で、嫌だと、止めてくれと、言っていた。 そんな俺の声に、アーチャーが苛立つのが、わかった。 そしてまた、最奥で吐き出される。 広がる熱にまで感じる程、過敏になった自分の内部に、羞恥がつのる。 アーチャーの熱は、俺のなかに吐き出しても、硬度を保っていて、 引き抜くことなく、また、揺さぶられて、固く目を閉じた。 唇が震える。全身に走る快楽。 融けそうになる体も、心も、認めたくなくて、小さく頭を振った。 アーチャーが待っている言葉を、俺は、知ってる。 知っていて、拒んでいる。 一言、欲しいと言えば、きっと楽になれる。 そうわかっていながら、俺は、それだけは言わないと決めていた。 こんな一方的な行為を、許すつもりは無いと。 自分が辛いだけなのに、俺はやっぱり馬鹿なんだろうか。 でも、対等でいたいと望むことは、愚かだろうか。 「……強情な、ものだな。」 呆れたようにアーチャーが呟いて、腰を強く打ち付けてきた。 ぐちゅん、という音が響くのと、 「ひ…っ!ぃ、ん…ァ…っ」 俺の喉から押し出されるように零れた音は、同時。 ぎゅ、と瞼を閉じると、目尻から涙が零れるのがわかった。 なかのアーチャーの熱が、どくんと脈打ち、体積が増す。 圧迫感に、ひゅ、と息を呑む。 ――と、突然、アーチャーは俺のなかから、その熱を引き抜いた。 何をと思う間も無く体をひっくり返されて、四つん這いにさせられる。 体に力は入らない。 アーチャーの手が、俺の腰を掴み、強引に引き上げる。 「…っ、ゃ……」 また、貫かれるのだと、嫌でもわかって、制止の声をあげたが。 アーチャーは当たり前のように無視して、ぐちゃ、と音を立てて、 また、熱が、挿入され、る。 「ァ…、――ちゃ……っ」 男を呼ぶ声は、縋るようだった。 アーチャーは応えない。 乱暴に、突き上げてくる。 どれだけ嫌だと思った所で。 俺のなかは、従順にアーチャーを受け入れ、悦ぶように締め付ける。 自分を裏切る自分の体が、憎い。 「…は、嫌だ、止めろとよく言えたものだ。」 アーチャーが体を倒してきて、俺の耳を舐めながら、嘲るように言って。 なかを擦られることで反応していた俺の中心の熱を掴んできた。 目を見開く。 アーチャーに掴まれたそこが、どくんと跳ねるのがわかって。 唇を噛み締めて、俺はシーツに顔を埋めた。 俺の熱を、アーチャーが絶妙な動きで高めていく。 何度も達しているせいで、そこはぐっしょり濡れていて。 先端を指先で強く抉られて、新たな雫が溢れてくる。 合わせるように腰を揺らされて、耐え切れずに俺は高く、喘いでしまって。 直後、ぎりと奥歯を噛み締めた。 「そら、もっと、啼いてみせろ。」 「っ」 わざと煽るような言葉にかっときて。 俺は目線だけをアーチャーに向けた。 力を込めて、睨みつける。 こんな奴に、屈してなるものかと。 アーチャーは、俺と視線を合わせて――――笑った。 その笑みは、酷く、嗜虐的で。 俺はアーチャーを余計に煽ってしまったことに気付いたが、 何もかも手遅れだということも理解してしまって。 もう、体は折れている。 与えられる快楽に、堕ちてしまっていて、 どこを触られても、感じるくらいで。 その後の行為に、交わす言葉は無かった。 俺はただ、意識を手放せる瞬間を、待った。 体位を何度も変えて、アーチャーは俺を、犯す。 ぐ、と痛いほどに腰を押し付けられて。 アーチャーの腰が、震えたのを感じて。 逃げようとした俺の腰を、アーチャーが鷲掴み、引き寄せられて。 ごぽ、と音を立てて、なかに熱を吐き出された。 「…………ァ―――」 意識が、閉じる直前に。 こんな真似をされて、許せなくても。 それでも俺は、アーチャーが、好きなんだな。 そんなことを、ふと思った。 馬鹿な自分を、笑いたかった。 士郎視点です。 なんか、えらい可哀相になったな……。 翌朝、目覚めたら綺麗に体は清められていて、 アーチャーは常と変わらず士郎に接してきて。 それもわざとじゃなく、素で。 根にももたせてくれないんだよ、きっと。 これで自分だけが沈んでいたら、女々しいじゃないか、 とか思ってしまうから、士郎は。 ……士郎、負けるな。