突然、だった。 抵抗する間もなく、両手首にガムテープをぐるぐるに巻かれた。 それはキツく、どんなに力を込めても剥がせない。 「っ、アー むぐっ…」 名を呼びかけた口を大きな手のひらが塞いでくる。 苦しい。 もう片方の手のひらが首筋に伸びてきて、圧迫するようにゆっくり押さえ付けてくる。 唯一自由な足で何度か相手を蹴りあげようとしたが、空振りに終わって。 全ての抵抗が刈り取られていく。 酸欠でぐらぐらしてきたころに、ようやく手のひらが離れた。 「っ か …は…っ、はぁっ、 ぁ」 必死に肺に空気を送り込む。 滲んでいた涙が一筋、頬を伝うのを感じた。 そんな俺に何を言うでもなく、俺の口元と首筋から離れた手のひらは、 俺の体をうつぶせにひっくり返してきた。 そうして背中を、腰を、下肢を撫でていく。 「っ、は…、なに、す…」 「…本気で解らんわけではないだろう。」 俺の問いに、ようやくアーチャーが声を返してきた。 だが、それが何だというのか。状況が変わったわけではない。 「はな、せっ」 必死に声を上げる俺をアーチャーは喉の奥で笑う。 そして俺のズボンを下着ごと剥ぎ取った。 ひやりとした空気を直に感じ、背筋にぞく、となにかが走る。 アーチャーは俺の体を片手で押さえ付けて、もう片方の手で尻を撫でてくる。 躊躇うことなく、指が後孔をなぞって―― 「っ、いや…だ…っ」 「嫌、だと?――ハ、ここでいつも私のものを旨そうにくわえ込んでいるだろう。 何を嫌がる?」 「ひ……っ!」 揶揄する言葉と共に、乾いた指が一本捻じ込まれた。 そこは、もともとそういう使い方をする器官じゃない。 いくら初めてではなくても、準備もなく受け入れられる筈も無くて。 「づ ぅ…」 裂かれる様な痛みに手を握り締めて、耐える。 「ふん、流石に無理か。」 ひとしきり指を無遠慮に動かした後、アーチャーはそう呟きながら、 突き入れていた指を俺のなかから引き抜いた。 は、と息を吐いたのも束の間。 すぐにまた、指があてがわれた。 今度は指だけでなく、何か無機物の冷たい感触。 「な、に…っ! …ぃつ」 後ろを振り向き確認する前に、指と共にそれも突きこまれる。 そして、なかに何かが入って き て 「ぁ…、 っ う」 軟膏、だろうか。それとも別の何か。 判別などつかない。 ただ、気持ち悪い。 ぐぢゅ、と音が聞こえて。 引き抜かれる。そしてまた、入り込んでくる。 今度は指、二本。 無遠慮に掻き回してくるその指は、なかを探り、そして前立腺を抉った。 「あ…っ、 ゃ め」 生理現象だ。 そこに触れられれば、どんなに嫌でも体は反応する。 触れられてもいない自分の中心が、浅ましく反応してくるのを自覚して、 俺は唇を噛み締めた。 アーチャーが俺の耳朶に唇を寄せて、歯をたててきて。 「っ ふ」 体が震える。 がちと歯が鳴った。 ぬる、と耳朶を濡れた舌が這う。 零れそうになる声を堪えるために、強く唇を噛む。歯を食いしばる。 「堕ちてしまえば、楽になれるものを…」 アーチャーが耳元で囁いてくる。 頭にきて睨めば、アーチャーは目を細めて愉しげに口端を上げた。 後孔を侵す指が引き抜かれ、そして、あてがわれる熱。 腰を掴まれ、尻を割られて。 それでも俺は最後の足掻きとばかりに体を捩って逃れようとしたが、勿論無駄に終わった。 腰を掴んでいたアーチャーの手が、俺の首を痛いほどに押さえ付けてくる。 「ぃ、やだ…くそっ、はなせ、ば かっ、あ…っ――あ!!」 俺の罵倒を流して、アーチャーは容赦などなく、その熱を俺のなかに、捻じ込んできた。 めり、と音が聞こえた気がする。 腰を揺らしながら、その灼熱の杭で俺の内部を侵していく。 先程なかに入れられたものの滑りが、 異物を押し出そうとする俺のなかの動きを無意味なものにして。 「あ、は…ぁ、あ…っか はっ はぁっ、あ、ゃ、ぁ…っ」 受け入れているわけではないと、せめて声で拒絶を示す。 が、それも掠れた吐息と殆ど変わらない。 ひゅ、と呼吸困難。 吐き出しすぎた。 思い出したように吸う。呼吸する。 がつ、と肉がぶつかる衝撃。 自分の尻にあたるアーチャーの体の熱。 腹におさまったアーチャーの熱。 落ち着く間も無く、すぐにそれはずるりと引かれ、先程よりも強く、早く突き込まれる。 ぐちゅ、ぐちゅん と淫音。 何も聞きたくない。 自分の喉から勝手に零れる喘ぎも、アーチャーの息づかいも。 だが、両手首は戒められ、動かせない。 それどころか、痺れてきて感覚さえあやふやになっていく。 その分、下肢に与えられる快楽は強く。 強すぎて、神経が灼かれそうだ。 気を抜けば、叫び出してなりふり構わず許しを請いそうで。 そんな自分の弱さが赦せなくて、俺は揺さぶられながら、ぎりと唇を噛んだ。 程なくして鉄錆の味。唇が切れたんだろう。 その僅かな不快感が辛うじて正気を保つ。 「っ、ん ん…ぐ、ぅ、う んぅ っ」 アーチャーの動きは俺を追い詰めていく。 悔しいが、このままなかを擦られるだけで達かされるのかと、そんなことをぼんやり思う。 もうすぐ限界だ、というその時に、アーチャーの手が動いた。 腰を掴んでいた片方の手が、先端から腺液を零し、震えていた俺の中心の根元を、 きつく、握りこんで きた。 「ぃ、つ…あ、アーチャー っ」 達しかけていた俺の中心は根元を塞がれて、ひく、とアーチャーの手のひらの中で跳ねる。 痛みと快楽が混ざり合う。 思わず振り返り、相手の名を呼んだ俺に、アーチャーは嗜虐的な笑みを見せた。 「…本意では、無いのだろう?」 それだけを告げて、ぐり、と俺のなかの前立腺を熱で抉ってきた。 ひ、と喉から悲鳴じみた声があがる。 アーチャーは俺の根元を押さえたまま、なかを的確に抉ってくる。 堪らない。 俺を快楽に堕としながら、最後は与えてくれない。 吐き出せない熱は、体に溜まるばかりで。 知らず俺は泣いていた。 目はろくに機能しなくなったので、固く閉じた。 口は閉じようとしても無理で、突き上げられるたびに零れる声は甘くて。 いっそ死にたい。 突き上げる動きが小刻みになる。 なかの熱の体積が増した気が して。 「や、ぃ、やだ や…っ、あ、あ っ」 無意識に出た俺の拒絶の言葉に、アーチャーは笑って。 「そら、お前はコレが、好きだろう。」 言って、ぐ、と最奥まで熱を突き込んだ後、 俺の根元を強く握ったまま、アーチャーの腰が震えた。 くぐもった声が耳元で聞こえて。 「あ あ ぁっ ぅあ…――!!!」 なかに、欲を、注がれた。 断続的に、どくどくと叩きつけられる熱。 それは目眩がするほどの快楽。 だが自身は戒められたまま。 吐き出せない熱が体の中、暴れて。 ただ震えるしかなかった。 ひく、としゃくりあげる。 アーチャーの吐精が終わった後も、体の震えは止まらない。 なかを掻き混ぜるように何度か動いた後、 アーチャーの熱は俺のなかからずるりと抜けていった。 かち、と歯が鳴る。 は、は、と短く息を吐き出す。 アーチャーの手は、しばらく俺の根元を掴んだまま。 波が引くのを見計らっているようで。 そうしてやっと離れた時には、俺の中心はぎりぎりまで高まっていながら、 達するには少し遠いような状態だった。 「さて、選ばせてやろう。どうしてほしい…?」 そう声をかけてきたアーチャーの声は、優しい音に聞こえながらも残酷。 何を選んだところで、打ちのめされるのは、もう解りきっていて。 理由を考えることは止めた。 きっと理由らしい理由なんて、無いんだと。 縛られた手首。 手は痺れて感覚は遠い。 そこにアーチャーが触れてきた。その手は熱く。 単純に俺の手が冷たくなっていただけなのかもしれない。 体が火照る中、そこだけが冷たい。 冷えた指先。 心も一緒に、冷えてしまえば、良かったのに。 酷い弓を目指してみた。ぬるいね。 士郎→→→←弓、みたいな? むしろ弓から士郎への恋愛感情的なものはまだ薄い感じで。 初めは手癖で救いがあるような終わり方を書いてました。 それを書き直してみました。 酷い話、読むの好きだけど、自分ではあまり書けないなー。 難しい。